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上海

私にとって上海はとても遠い場所になってしまった。
日本に帰国して間もなくは、まだ「上海に住んでいた人」という実感が強くあったものの、今ではそんなの夢だったんじゃないか、と思うほどにリアルに感じられなくなってしまった。私の中の上海はもう今の上海ではない。

連日流れるニュースから「上海」がよく聞こえてくる。
胸のどこかにざわつきを感じるが、もう自分は外の人。
詳しい事情はわからないし、何もできることはない。

武漢で新型肺炎第一報が入った頃の動揺っぷりに比べると、随分と冷静になったものだと思う。自分を平静に保つ情報処理の仕方を、この異常事態が続く数年でいつの間にか体得したのかなと。

もう離れた場所のことをあれこれ毎日考えても仕方ない。
今自分にできることを。手を動かして精一杯やればいい。
そう切り替えて開業してからというもの、ツイートが極端に減ったように思う。

Twitterにかじりついていた時にあれだけ伝えたい、伝えたい、伝えなきゃと思っていたことが、何も浮かばなくなったのだ。
今では積極的に中国や上海について呟くことはほぼない。

かといって、どうでもいいかと言えばそうでもなく、何となく気になり、何となく、今日の上海はどうか、食糧は配給されているか、大丈夫なのか、と在上海の方の様子を見守ってしまう。役立つことも、気が休まる雑談も、特に何もできないのにね。いつもいいねだけしてごめんなさい。

早く上海に平穏が戻ってほしい。
ただ、心の中で静かに毎日願っています。

茉莉商店・寧々

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