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博論日記40/365:ロシア宗教音楽の第一人者の死/読んだもの

暗い話と思い出話から始めさせてください。私が留学している大学院でお世話になっていたマリーナ・ラフマーノヴァが亡くなった。

先日亡くなったタラスキンの世界的栄光と比較しても、彼女のロシア音楽史における功績は勝るとも劣らないと思う。中世から20世紀まで、様々な領域に造詣が深く、毎週行われる教員会議(*)では、本当に様々なジャンルの音楽史の論文について、コメントと批判を行っていた。私の論文についてはちょっぴり(お世辞もあるだろうが)褒めていただき、面映い思いをしたのを覚えている。
(*)教員会議と言っても、議題は教員や学生が書いた論文の下書きの批判やコメント。

特に私にとって重要だったのは、グラスノスチ以降彼女が注力した宗教音楽研究だ。10巻本の『ロシア音楽史』では19世紀末〜20世紀初頭の宗教音楽の「新思潮 Новое направление」を執筆されており、非常に勉強させていただいた。1998年から刊行されている11巻本の『資料・史料に見るロシア宗教音楽』の主幹編集も務めていた。

今年の6月1日、彼女の誕生日パーティーが大学で行われた。
私は同級生と二人で美しいショールを買いに行った。バラの花と一緒にラフマーノヴァ先生に渡したら、とても喜んでくれた。杖はついているけれどとてもお元気で、エレベーターのない大学院の階段をしっかりとした足取りで登っていく後ろ姿は忘れられない。

とりとめのないような話だけれど、思い出をここに記しておきます。ラフマーノヴァ先生、本当にありがとうございました。

誕生日パーティーでなんとなく撮った、思い出の写真を載せておきます。あんまり人の目に触れるのも何なので、追記部分に……。

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