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占いおばば

たまたま立ち寄ったカフェでとある占いおばばと出会いました。


買い物でうろうろしていて歩き疲れたので少し休憩しようと立ち寄ったカフェ。暑い暑いと思ってアイスカフェオレを注文。買ったばかりの本でも読もうかなとしていたところでビラを持った老婆に声を掛けられる。
あ、怪しい感じの人かな?とつい警戒態勢に入っていたところ、話を聞くと毎週水曜日に占いをしているので良かったら…とのこと。なんだ占いおばばか…と内心ほっとしながらビラを見てみる。それに気付いたおばばがこっちが私で、そっちは違う人ねって教えてくれた。あ、なるほど。ビラには2人の占い師が紹介されている。もう1人の占い師は今まさに相談を受け2人組の女性にアドバイス中だ。それに引き替えおばばは真っ赤なテーブルクロスが敷かれたテーブルに1人でぽつんと座っていた。対照的な2人を見ると何だか気まずい。占いは割と、いやかなり好きな方なので20分2,000円なら占って貰ってもいいかなぁなんて考える。

カランカランと新しいお客さんがカフェに入って来る。20代後半くらいの物静かな雰囲気の女性だった。すると、奥から先程の占いおばばがその女性へ声を掛ける。おばばへ心の中でエールを送っていたが、物静かそうな女性は物乞いを追い払うかの様にキッパリとお断りされていた。その様子を目の当たりにし少し迷ったがこれも何かのご縁かもなんて思い占い好きも相まって私は軽い気持ちでおばばへ声を掛け占いをして貰うこととなった。

カウンター席の端っこを確保していたがおばばの席へ案内された為名残惜しくも席の移動を余儀なくされた。移動先に荷物置きが無く、長い電球が突き出たエコバッグを椅子の背もたれに引っ掛ける。小さなカフェである為、背後で占いをしているもう1人の占い師との距離が近く、椅子をぎぎっと前に引かざるを得なかった。前も後ろも気を遣うなぁと思いつつ真っ赤な占い感漂うテーブルでおばばと向き合う。おばばの瞳がキラキラと嬉しそうだったのでまぁ良しとしよう。よく見るとおばばは高級ブランドの洋服を身に纏い、耳・首・指と煌めくアクセサリーをばっちり身に付けている。おや、おばば儲かってるのかな?なんて一瞬考えてしまった。

おばばの占いは生年月日で占うらしく、まず自分の生年月日を紙に書くよう促された。すると、「あなたはねぇ〜…」から始まるかと思いきや「私はねぇ〜…」から始まった。元々小1時間でカフェを出る予定だった私だが、既に長引く予感が…。自己紹介が終わりようやくタイマーを鞄から取り出すがタイマーの電池がないとのこと。ごそごそと鞄を漁るおばば。ちょっと待て、現在の時刻は16時過ぎ。もしかして本日初めてのお客さんだったのでは…と少し不安になり始めたところで鑑定が始まった。

私から生年月日の紙を受け取り、ふんふんとおばばは何やら占いの本をパラパラと捲りながらノートに走り書きしていく。おぉ、何て言われるんだろうなんて年甲斐も無く少しドキドキしながら待つ私。何度か占いをして貰ったことはあるがこの何か言われる直前の間が好きだったりする。

「何か聞きたいことある?」と聞かれたので「あの、婚期を…」と少し声を落として伝える。何となくだがこういう時、カフェにいる全員に話の内容を聞かれてそうだなと思ってしまう。聞き耳を立てられていると感じるなんて自分でもかなり自意識過剰だと思うのだが…。一般的な三十路よりも若干老けてみられがちだと自覚している為、婚期を聞く姿はやはり痛々しいだろう。それを知ってか知らずか「あなた30歳なの?まだ若いじゃない!」とおばばの無垢な言葉が胸を刺す。

ピピピピッと20分のタイマー音が鳴り響く。
予想はしていたがほぼお喋り好きなおばばの話で占いは終了。

婚期の答えは「結婚が全てじゃないよ」だった。その後はおばばのどうやって占い師になったかという話やもうすぐおばばに弟子が出来る話、コロナの話など。ちなみにおばばは占いの学校に通って占い師になったらしい。世の中にそんな学校があるだなんて。占い師も立派な職業なんだなぁと思わず考えさせられる。私はなんとか2,000円分の価値を得たかった為、手相占いも習ったというおばばに手を差し出してみると「あら!結婚線あるじゃない!」と言ってくれた。とりあえず良かった…。

タイマーは止まったが時が止まっている訳ではないのでそうこうしているうちに更に5分…。10分…。あれ…20分?という感じで時は流れる。私は時計の針が気になるがおばばの話は2周目へ…。

おばばは最近コロナのワクチンを接種したんだとか…。実はこれ2回目。
「えー!ワクチン良かったですね!」なんて言ってる私…。これも2回目。

何度か同じ会話を繰り返した後「じゃあ、そろそろ…」と切り出し、お支払いを済ませて席を立つ。延長料金を取られなかったことに安堵しつつ、水滴でビショビショになったグラスを抱え、違う席へ移動したものの何だか落ち着かない。味のしないカフェオレを勢いよくストローで飲み干し、そそくさとカフェオレ代を支払いその日は帰宅した。

何とも言えない愛すべき占いおばばでした。占いを思うとお金勿体無かったかなと少し思いましたが、家族でも友人でもない何の繋がりもない誰かに個人的な話を聞いて貰うこともたまには良いかもしれません。
むしろ、最近は親しいからこそ話せないこともあったりして…。
でも、水曜日にもう一度あのカフェに立ち寄ることは無いかもな…。

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