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知覚過敏との闘い

歯医者に行くことをサボっていたら、めちゃくちゃ歯がしみはじめた。

いよいよこれはヤバいと思って、近所に新しくできた歯医者に行った。

そこに現れたのは、『おかえりモネ』の菅波先生の「雰囲気をそのままにして、まるで徹夜でフルマラソン走らせたあとみたいにものすごくクタクタにさせた」みたいな風貌の先生だった。

わたしの歯を詳しくみていたその先生から、ため息のようなものが聞こえて、身構えた。

ひとつひとつ歯を見てもらった結果、ほとんどの歯が知覚過敏だった。

「よくこれでごはん食べられてましたね」

先生は苦笑いした。歯科衛生士さんも苦笑いした。

わたしの口は、歯肉炎と歯周病のワンダーランドだったというわけだ。

歯茎もダダ下がっていた。
「ハグキプラス」って書かかれた歯磨き粉つかってきたはずなのにこれじゃまるでハグキマイナスだ。

「これじゃ歯の掃除する機械使えないですね、しみちゃいますね」と先生はやさしく語りかける。

というわけでまずは、歯と歯茎の間にしみ止めを塗り、隙間を埋めていく治療をおこなうことになった。

そもそもなぜこのようなことになったのか。
歯磨きをサボっていたわけではなかった。

その原因は、わたしが己の歯磨きを過信していたことに尽きる。

わたしはかつて、歯がキレイと歯医者さんに褒められてばかりだった。

虫歯になったこともなりかけたこともない。

そのおかげで病気したときも、抗がん剤の副作用で口内が荒れることを最小限に抑えられた。

わたしは口がキレイ、ずっとそう思っていた。

そして、大学進学祝いみたいなことで親から電動歯ブラシをもらった。

退屈な歯磨きが楽しくなって、何分も磨いたこともあった。

ところが、いつしか電動歯ブラシを使っているということに満足してしまい、磨き方がどんどんおざなりになっていった。

なにしろ、スマホみながら歯ブラシをあてるだけ。
手や指を必要最小限動かすだけで磨けてしまうのだから楽だこと楽だこと。

その結果招いたのが、これである。
ハグキマイナスである。

「電動歯ブラシ使うのやめて、やわらかい歯ブラシにしてください。高いの買わなくてもキレイに磨けますから」

先生に半ば呆れられるようにして諭された。
その日から、ゆっくりと丁寧に磨くことにした。

念入りな治療も相まって、1ヶ月後にはかなりしみなくなった。
けど、気がつかなかっただけでしみていたところも新たに見つかり、予想以上に長い闘いとなった。

そして、本格的に掃除をする日がやってきた。

自分としてはだいぶ歯の磨き方が改善できたつもりでいた。
だいぶキレイになりましたねー、と言われる腹づもりでいて、「そうですか?あはは」という準備までしていた。

しかし。
いざ思いっきり掃除されると、血とか歯垢が出るわ出るわ。

先の尖った器具が触れるだけで出血する歯茎の不様な姿を鏡越しにみせつけられた。

タオルで目を覆われているとき、先生と歯科衛生士さんが話していた。

「だいぶプラークすごいでしょ」

「そうですねー笑」

なんで、なんでなの…。
目を覆ったタオルが涙に濡れ……はしなかったけど、もう自暴自棄になりそうだった。

帰り際先生からいろいろ説明された。

「歯が汚れやすい体質なんだと思います、遺伝的要因は大きいですよ。どれだけ磨いても来るたび虫歯つくってくる方もいらっしゃいますし」

そっか遺伝か、ならしかたない。

いやしかたなくないわ笑
歯が汚れやすい遺伝って地味すぎるだろ…。

そして、先生に伝えた。
「これからはちゃんと定期的に、メンテナンスに通うようにします……」

もはや平身低頭である。

というわけで、あの知覚過敏を再発させることなく、これ以上歯茎を減らさないためにも、毎日真面目に歯を磨いてまいります…。
がんばります。

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