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上野駅の思い出

上野駅。
東京でいちばん思い入れのある駅かもしれない。

行き止まり式でヨーロッパを思わせる「低いホーム」と、年季が入りまくりの高架橋に支えられたいわゆる「高いホーム」(Yahoo!知恵袋にもよく投稿されるやつ)。


天井の低い通路、階を通過する謎のエスカレーター。どこからともなく現れる銀座線入口。
中央改札上の壁画(その名も『自由』)、石川啄木の歌碑。
ジャイアントパンダ像(パンダなのにゾウ)、歩行者デッキの謎の背の高いモニュメント…。

あれ、なんか山崎まさよしの「One more time, One more chance
」の歌詞みたいになってしまったな、なんか。

とにかく。
小学校の遠足は電車で上野動物園に行ったし、中学校の校外学習も電車で上野公園に行った。
高校のときも部活で集まるときはなぜか上野が多く、西郷さんはわれわれにとってのハチ公みたいな存在だった。

やれ取手行きじゃ帰れないだの、籠原行きは論外だの、印旛日本医大行きが当分ないだの言って、ホームでおのおのの電車を何度も見送った。

高校のとき交際相手と行った山下口近くのラーメン屋も、大学の授業でやらかした時に父親に連れて行かれた某有名つけ麺店も、仲間内で忘年会した串カツ屋も、全部懐かしい。

まぁ全部つぶれたんですけど…。ひどい。

中央玄関口、不忍口、入谷口、東上野口、山下口、浅草口、広小路口…。全部の出口になにかしらの思い出がある。

なかでも別格なのが公園口。柳美里さんの小説のタイトルにもなったところだ。

小学校の遠足以来、ただのガキだったじぶんが自力で行ける「いちばんとおいところ」だった。
博物館や美術館に行くときのワクワクも、あの出口に詰まっていた。もちろん、帰るときの名残惜しさも。

昨年、感染症が猛威を振るう直前に公園口は移転した。

思い出深かったもともとの公園口はなんと…

トイレになった。

まじか。

トイレか。

えぇ…。

新しい公園口もかっこいいけど、馴染むまでまだまだ時間かかりそうだ。

社会がリモート化している間に、貯めまくったエキュートの「うえきゅんポイント」も終わっていた。ポイント交換もし忘れた。ひどい。

それでもやっぱり上野駅が好きだ。
ゼルダの伝説のダンジョン並みに入り組んだ駅構内をうろつくだけでも楽しい。

昭和の活気と希望、そして暗部の記憶をいまに伝える遺跡のようなたたずまいが漂う。

「上野は特別」と東北出身の方がよく口にする。
その特別さと思い出の数々は、あの駅の線路に、車止めに、サビサビの鉄骨に、駅の隅々までたしかにしみこんでいる。

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