見出し画像

魚好きのための街

東京、小平。
新青梅街道沿いに、ふたつのユニークなお店がある。

熱帯魚店と魚屋だ。

どちらも魚を売っているのだけど、他では見られないようなマイナーな魚も扱っているので、極端な話、生きてるか死んでるかくらいの違いしかない。

魚屋のほうは何年も前にテレビで観てから、熱帯魚店はNHKの「ドキュメント72時間」を夏に観てから、妙に気になっていた。

けれど、自宅からは微妙に遠いので、そうたやすく行けるところではなかった。

そこで先日、意を決してどちらも同時に行くことにした。観賞魚を眺めたあとに魚屋に行くとか、なんと鬼畜なことだと思ったけど、なぜか母がノリノリだったので同行してもらうことに。

自宅から車で2時間足らず。いわゆる「宣言」が明けていなかったためか、道路はそこまで混んでいなかった。


まず、生きているほうの魚を売っている店、すなわち熱帯魚店へ。

そこで目に入ったのは金魚すくい。
見かけただけで胸さわぎがした。

思えば、小さいときから金魚すくいが好きだった。

地元の祭りに出かけたときも、金魚すくいへ一直線。それ以外に興味はなかった。祭りの金魚は、いわゆる「餌金」と呼ばれる、劣悪な環境で育てられたものも多い。そのため、翌年の祭りの時期までには、ほとんど水槽はカラになっていた。

何年か前も、駅前広場の祭りで果敢に金魚すくいに挑んだ。『結婚できない男』の再放送で金魚すくいのくだりを観たばっかりだったので、気持ちが弾んでいた。小さい子たちを尻目に、大人げなくはしゃいだ。ひとりで。

多くの祭りとは違って、しっかりとしたお店の金魚なら丈夫だ。それにすぐに破けるなどして「ぼられる」心配もない。

いざ挑戦!
したものの、狙いを定める前に、魚たちが逃げていく…。

向かいにいた小学生の女の子のところへ集まっていって、女の子は次々とすくいあげていく。

その子を前に、わたくし、見事に完敗。
2回挑戦して2匹しか取れないというさんざんな結果だった。

けどやっぱり、金魚すくいは楽しい。
動物愛護的にどうなの?っていわれてしまいそうだけど、楽しいものは楽しい。

こんなの売ってんの?って思うくらい高額な魚や、色とりどりにレイアウトされた水槽を観れたし、なによりお客さんたちの「プロ」感がすごかった。
「魚のいる生活」を楽しんでおられるのだろうなと、しみじみ感じた。

さて、お次は死んでいる魚を売っているほう、すなわち魚屋へ。

すさまじい混雑だった。

店舗の何倍もの広さの駐車場に、他県ナンバーの車も含めてひしめき合っている。

大混雑の店内も、お値段は少し張るが、普通のスーパーよりははるかにお買い得なものばかり。

水槽越しに○○いいよね、と言っていた母が、今度は刺身を片手にレジにいる…。にんげんってこわいな。

ただ、ふだんお目にかかることのないような魚まで、通常よりお手頃価格で売られているのは、魚好きのわたしとしてもテーマパークにいるような気分だった。なんやかんや言いつつ、わたしもイクラを買うことにした。

観る方、飼う、そして食べる。そのどちらも好きなわたしにとって、あの熱帯魚店と魚屋はとっても楽しいところ。あのふたつのお店が日常的にある小平っていいな、うらやましいなぁと思う。

亡くなった祖父のかつての勤務先があったり、わたしにもずっと親しくしてくれる、姉の友だち夫婦が住んでいるのもあってか、たぶんバイアスかかっているだろうけど、なんか憧れる。

なにはなくとも、こうやってふと出かけられるって平和だなと思う、とある休日のお話。


訪れたお店はこちら。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?