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理想の1日の過ごし方

こんばんは。アポロンです。
ラジオに参加し始めて、はや2年。残り数回で、記念すべき100回目のところまできました。

メンバーも日を追うごとに増えまして、いまだ登場していない人員も含めれば、二桁と相成ります。
にーとさんが多くの記事を執筆してくれていますため、第1回目の投稿を飾らせて頂いた義理もあるということで、これまで収録したものの中からひとつをピックアップし、深堀していければと思っております。

さて、第88回目の収録に「理想の一日の過ごし方」というものがあります。
日頃から独りで行動する私の独壇場でありました。聞いていただけると嬉しいです。


ラジオで語っていることを、ここで記載するのも不精なものですから、「旅」と言うことでお話をしましょうか。

読者の方は「旅」に出られていますでしょうか。
「人生そのものが旅ではないか」そんな粋な回答は次の機会に、異郷の空を見上げ、慣れない布団で眠りについたのは、いつのことでしょうか。

「旅」がもたらす効用は、人それぞれにあるでしょう。
しかし、「解放感」を味わうということに関して言えば、誰もが納得いただけるものかと思います。

家庭、仕事、学校に趣味仲間のコミュニティなど、集団生活からそっと距離を置きたい感情が、人を旅に駆り立てるとは言い過ぎでしょうか。
「日常」というものは無論、「生活」によって成り立ちますよね。
本来であれば、生を活かす行為であるべきはずが、「日常」の枠に宛がわれてしまえば、途端に閉塞感をおぼえてしまう。
この「見えざる牢獄」は、なるほどお金をもたらすものではありましょう。日にして5日、8時間の労働による対価は、衣食住を担保してくれております。加えて家庭の形成、コミュニティへの参加は、精神面において充足感を与えるものです。

「衣食住」+「精神的充足感」という構図が、現代「生活」を「生活」たらしめる多大な要素であることは、言を俟たないものでしょう。
しかし恐いもので、後者の「精神的充足感」が底なしバケツであるということを、読者の方々は経験によって、痛いほど理解しているのではないでしょうか。

面白い話しを思い出しました。
シェイクスピアの翻訳で有名な、評論家であり劇作家の福田恒存(1912-1994)が、処世術に関する講演会で、こんなことを言っております。
『例えば出版記念会の案内状なんてのは、来るとうるせぇなと、欠席するくせに、来ないとなんだ俺んとこ来ねぇやつって。そう言う心理っていうものは、あらゆる面に働いているもんでして。この自分はゴマすりが嫌で出世したくないんだと、呑気に暮らしてたんだって言うんだったら、人のゴマすりに腹が立ったり文句を言ったりすることはないんです。ただ実際は自分も出世したい、それなのにあいつはゴマすりが上手くて、俺は下手でって言うんで文句言うんです。』

どうでしょう。このお話に似たような経験は、皆さんお有りでしょうか。
「精神的充足感」のジレンマと言いますか、充足感を得るには人から親切をもらうよりも、親切を与える側になりたいものです。
さて、親切を与えたところ、どうにも与えた人間の側はあっけらかんとしていて、予想していた反応とは随分と違う。
すると、篤志家の心で、なにも見返りを期待しないこころでもって親切を行ったにもかかわらず、その親切に見合う見返りを欲している自分と言うものが、親切を与えたあとになってみて存外、居たりするものです。

こういう事を考えてみると、「精神的充足感」というものが、言葉通りのものとして受け取られる日がやってくるのだろうかと、しみじみ思ったりもします。
そんな時に私は、「旅」の「解放感」を必要とするのです。

現代の贅沢といって、なにが思い浮かぶでしょう。
「富・名声・力」そんな台詞が矢庭に浮かびますが、これらは昔から尊ばれてきたものであり、今もなお人々を魅了してやみませんね。

時間ですか?あなたとは、友達になれそうです。
自由?代償が気にかかります。

私は、「誰からも知られていない」ということが聞かれて浮かびます。
デカルト(仏・1596-1650)の「方法叙説」(小泉義之訳)に、『私の求める精神の完全な休息』という言葉がありますが、私にとっては「誰からも知られていない」という空間並びに時間が、『私の求める精神の完全な休息』であり、一級品の贅沢だと思うわけです。

この贅沢を味わうお手軽な方法が、「旅」になります。『精神の完全な休息』は「解放感」によって満たされます。
見知らぬ土地、名も知れぬ山々、加えて旅先で出会う人々は、旅が終わってしまえば、もう会うこともないでしょう。

言い知れぬ寂寥感に襲われるようで、しかし旅が終わってみて家路につく頃、大きな「解放感」がじんわりと身を包みます。
そんな時、「あぁ、次はどこに行こうか」と考えてしまいます。

長々と語ってしまいましたが、どうぞ皆さん、良い「旅」を。

アポロン

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