バカみたいにまっすぐなあの子と私
「みさが振られるとかまじ意味分かんないんだけど!!あんなにずっと大好きだったのに!!」
バレンタインの次の日のお昼休み、その子は叫びながら泣き散らしていた。
正直引いた。
だって、真昼間の教室だよ?
高校2年の冬。
「来年から受験生か〜、やりたいこととかないし、まじ無理だわ〜」
しんしんと降り積もる雪を横目に、お弁当を口に運ぶ。
間近に迫ってくる「進路」とかいう何かに少しの恐怖を覚えながらも、
代わり映えのない昼下がりの時間を過ごしていた。
そんな折、何気なく
「あぁ〜そういえば昨日、ずっと好きだった人にチョコ渡しに行ったんだけど、振られちゃったんだよね〜」
と言ったら、事件は起こった。
「はぁぁぁ!?!?え、言ったの!?昨日!?マジで!?で、振られた!?!?マジあり得ない!!!みさきちあんなに好きだったのに!!こんなにいい子なのに!嫌い!そいつまじで無理、ほんとに嫌い!!最低!!いやだぁぁ!!!」
と、友人が泣き叫び始めた。
私の頭には、大量のはてなマークが浮かび、思考はフリーズ。
「なんで私がずっと好きだった人が、いきなり最低とか言われなきゃならないのさ!こっちこそまじで無理なんだけど!!ってか恥ずかしい!!みんな見てる!!やめてよ!!」
わけの分からないままに、とっさに反論。
「はいはいそこまで!!次体育だよ〜、行こう!」
もう一人の友人が止めに入ってくれて、その場は一旦収まった。
家に帰ってから、その日の出来事を振り返る。
私はその子に対して、日頃から「好きだけど嫌い」というなんともアンビバレントな気持ちを抱いていた。
・なんでも自分のやりたいようにやって、周りにどう思われようが気にしない。
・めんどくさいこと、やりたくないことは、やらない。
・そのくせ、周りの友だちはめちゃくちゃ大切にする。
部活のことも、家族のことも、彼氏のことも、一緒にやってる音楽のことも、ぜんぶこうだ。
裏表がなくていいんだけど、ちょっとワガママだよな、と思っていた。
でも、その日感じたのは、
中学校の頃、うまく人間関係が築けなかった私にとっては、はじめての「他人に大切に思われている」という感覚だった。
だって、私のために、泣いてくれるんだよ?そんな人、いる?
ワガママでまっすぐなあの子が言うんだから、本当の気持ちだったんだろうな。
あんなに私のこと、大切に思ってくれてたんだ。
私もあの子みたいに、まっすぐになりたい。
そして、「昨日はありがとう、私はあなたがとっても大切!」って伝えたい。
そう思った。
私は、あの子みたいになりたかった。
現実見て、目的もなくただ着実に勉強しているつもりだった私には、あり得ない生き方だった。
でも今、びっくりすることが起こっている。
「みさってめちゃくちゃナチュラルで、人間らしくて、いいなーって思う。」
「そんなふうに自分の気持ちに正直に生きてみたい!」
と言われることが多くなった。
きっと、自分がやりたい!って思っていることをやっている、めちゃくちゃかっこいい人たちに囲まれて過ごす中で、自分の内側を見るようになったからだと思う。
そんな大好きな人たちに囲まれながら、自分の気持ちにまっすぐに過ごす毎日は、とっても幸せだ。
すごく、生きてる!ってかんじがする。
今なら、どんよりとした青森の空気の下で、どう生きたいかなんて考えてなかった自分に、胸を張って会いに行ける気がする。
あなたは、少しは憧れてた自分になれたのかもしれないよ。
年末に、あの子と地元の居酒屋でくだらないことから真面目なことまで語り明かした。
彼女は今、先生をしている。公立小学校という閉鎖的な環境にファイティングポーズを取り続け、まっすぐに生きている。そんな彼女の姿に、子どもたちも感化されているみたいだ。
「なんか、なんで私があなたのこと好きなのか、今はすごくよく分かるよ。こんな、自分の気持ちにまっすぐな人いないもん。」
「あぁ〜、まぁ、たしかに、自分の気持ちでしか動いてないな。良くも悪くもw」
と言いながら、彼女はケラケラと笑っていた。
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