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大規模調査でわかった、これからのIT人材に求められる質

IT人材

「IT人材白書」とは、情報処理推進機構(IPA)が年に1度実施している「IT関連産業における人材動向の状況を把握すること」等を目的とした調査の結果を取りまとめた書籍です。

この調査はかなり大規模なものであり、IT関連企業や、業界団体所属のユーザー企業も含め、全国2,512社からの回答をまとめています。IT業界で働く人々は目を通しておくことで、現在のIT人材の需要と動向を知るための大きなヒントになるはず。

でも、もとの資料は少し読み解くために時間と労力をかける必要もあると思うので、ここではザックリ概要のみまとめていきたいと思います。詳細まで、見たい人は以下を確認して。

課題解決型と価値創造型

まず、このIT人材白書のなかでは、IT業務を以下の2パターンに分けてそれぞれに対してどんな人材の需要があるのかを整理してます。

① 課題解決型:コスト削減や業務効率化 など
② 価値創造型:新規事業の構築 など

①課題解決型とは、IT活用により、コスト削減や業務効率化を目指す事をさしていて、例えば、売り上げ管理や、人事システムなどが挙げられる。簡単に言うと、紙とペン、電卓でやっていた業務を「IT使って、効率化しよう。」というもののことを指してます。

対して、②価値創造型とは、ITなくしては生まれないような新規の事業を立ち上げることです。例としては、SaaSやPaaSなどのようなサービスや、uberやairbnbなどのプラットフォームビジネス、SNSやソーシャルゲームなんかも、ITがあってこそのビジネスですね。

それでは、これらを大きな軸として、以降でIT人材の動向をまとめていきましょう。

IT人材需要の傾向

まずは、人材の現状を見てみよう。さて、現状、課題解決型と価値創造型、IT人材はどちらの業務に関わっている人が多いでしょうか?

答えは以下。

■ IT人材の人数調査
    課題解決型 > 価値創造型

はい、現状は課題解決型の業務に関わっている人数のほうが多いですね。確かに大企業のIT人材の殆どは課題解決型の業務をこなしていると思うし、ITベンダーとしてもまだまだ課題解決型の案件が多いと思います。

これは、IT業界で仕事をしてきた私としての肌感とも合います。
※IPAの調査先にはゲーム業界や巨大ベンチャーが少ない傾向なので、偏りはあると思います。

次は、人材増加の割合について見てみましょう。

これは想像付きやすいですかね。
答えは以下。

■IT人材の増加率
   課題解決型 < 価値創造型

価値創造型の業務に、関わる人材増加が多いという回答でした。特に、ユーザー企業は傾向が顕著で、価値創造型の人材が増加していると回答した人数の割合は44.5%にも達しているという結果でした。(課題解決型が増加していると答えた人数は11%)

ユーザー企業の約半分は価値創造型の人材が実際に増えていると言っているんですね。

人材の質

価値創造型の人材が増えているということが調査の結果からも明確になったので、次はその人材の質はどうかということです。

結論から言うと、ユーザー企業は、価値創造型業務に関わるIT人材の質に全然満足していないとの結果でした。

■IT人材の質「大幅に不足」と回答した割合
   課題解決型:21.1%
   価値創造型:44.5%

価値創造型のIT人材の質に対しては、44.5%もの割合で、「質が大幅に不足している」と答えたんですね。

では、具体的に大幅に不足している質とはなんだろう。どこに、不足を感じているのだろうか。これはつまり、IT業界に身を置く人が今後延ばすべき能力でとも言える。TOP5を以下に示してみる。

■価値創造型人材に不足していると感じる力
   1.自発的に動く力
   2.問題を発見する力
   3.ITの高い技術力
   4.IT業務全般の知識、実務能力
   5.全体を見渡す力

うん。わかる。こういう人材欲しいよね。
※この能力あれば、大抵の会社でスーパースターだと思うけれど。。

この回答では、「1.自発的に動く力」と「2.問題を発見する力」が特徴的だなぁと感じました。ちなみに、課題解決型の人材に不足している力は「IT業務全般の知識、実務能力」という回答が圧倒的だったので、求められている能力が違うのだなとこの結果からも見て取れますね。

たしかに、新しい価値を作る仕事では、上司の指示なんて役に立たないとおもうし、アイデアのある社員が自発的に動いて、問題を発見して前にすすめて行くしかないんだろうな。そもそも、「”新たな”価値」を創る仕事なんだから、上司が成功した方法がそのまま使えることのほうが少ないんだから。

質と風土

じゃあ、どうしたら、不足している質を上げていくことが出来るの?という、問題のヒントになるのが、以下回答の分析だろう。

企業風土と、人材の質の関係を分析するため、以下の観点で企業文化、風土について点数を回答してもらい、集計結果を人材の質と合わせて見ている。

すると、IT企業、ユーザー企業関わらず、企業文化の点数が高いほど、先の人材に対する質の不足感が少ない結果となっていた。

これは、素直な結果だと思います。企業がいい雰囲気なら、人材も良い。という結果だから当然っぽいですよね。この結果を見ると、企業文化や風土を良い方向に変えていくことで、人材の質も会社全体として上がっていくことになるということが言えそうですね。

では、どうすれば企業文化を良い方向に変えていくことが出来るか。

人材の質を高めるために、IT企業、ユーザー企業はどのような施策をとっているか。IT企業とユーザー企業それぞれで、「効果あり」と答えた割合が大きい施策を3つづつ抜き出してみました。

■IT企業の施策(効果ありと回答した割合)
 1.実力に応じた待遇(69.9%)
 2.適切な職種転換(66.7%)
 3.勤務場所や時間の自由度の拡大(65.4%)
■ユーザー企業の施策(効果ありと回答した割合)
 1.社内交流(71.1%)
 2.自己啓発支援(70%)
 3.兼業や副業の許可(66.7%)

効果ありの施策に違いが出ていることは、結構興味深いですね。

IT企業はかなりドライな施策が効くようですね。なぜかまではわからないですが、仕事の仕方として、プロジェクトメンバー以外はお客さん相手であるから、会社への帰属意識が少し薄いのかもしれないなぁと思います。基本的には技術さえあれば、どこで働いてもいいわけですしね。

対して、ユーザー企業は社内交流がトップにくるなど、会社内での人間関係が重要視されているように見えます。コミュニケーションを活発にさせることで、より新しいアイデアが生まれやすい環境作りが出来るようになったということでしょうか。

また、これらの施策を多く実施している企業ほど、風土は良くなる傾向にあり、積極的な施策の実施は企業風土構築に役立っていると結論付けられていました。それはつまり、積極的な企業風土向上の施策が、人材の質の向上にも寄与していると言えるということですね。

さらには、企業風土というのは大切で、このアンケートの加点が高い企業ほど、個人の生産性が高い傾向にあることもわかっているのです。

IT企業はもう、給料上げるしかないですね。ユーザーは社内交流会が一番効果ありあそうなので、是非積極的にやってみてはいかがでしょうか。

まとめ

企業は、価値創造型の業務に力を入れていて、その中で、IT人材に求められる質にも変化が生まれ、その変化に多くの人材がついてこれてないように見られている。

従来の課題解決型に求められている、「IT業務全般の知識」等に比べ、自ら考え、「自発的に動く力」や「問題を発見する力」などが求められることをIT人材はキチンと認識する必要があります

実務者はこれらを意識的に鍛えないと、段々と時代に取り残されて、ワクワクするような新しい仕事が出来なくなっていってしまいます。

また、人材としての質を高めておくと、企業風土が良い会社になるし、生産性も高まるので、大変よい循環になりそうですね。

明日は、なにか一つ自発的に動いてみよう。

身近にある課題 に取り組んでみよう。

何事も小さな一歩から。

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