コンサルタントはイノベーションを起こせない
Newspicksの以下記事を読んで、コンサルタント業界に身を置く者として、今後どのように仕事に向き合っていけばよいかを考えさせられました。
僕は、SIerからコンサルタント会社に転職してまだ、1年半のひよっこコンサルタントです。それでも、この記事の内容は共感出来ることが多く、悔しくも真理だと感じました。
顧客の求めるコンサルタントとは
コンサルタント業界は今、とても景気がよく、市場は伸び続けており、コンサルティングファームの社員数も右肩上がりな状況です。しかし、このコンサル人口の増加が業界のあり方を変えているとも言えます。
コンサルタントは高い分析力や、情報整理能力で、企業や市場を整理し、経営のとして、信頼を受け経営者のパートナーとしての役割を果たしてきた歴史があります。
しかし、現在このような企業の参謀的な案件は減少傾向にあります。その代わりに、ITシステムの導入や、企業買収後の業務整理等の自社社員では賄いきれない、一時的な人材需要に対して、大量のコンサル人材を派遣することが多いそうです。これは、現場の状況からも納得感があります。
このような案件は、ファームに大きな売上をもたらす一方、コンサルタントの質を下げる要因となっていると、記事は指摘しています。大量の人材を導入せざるを得ない為、質を下げてでも多くの社員を集める必要があるのです。
僕自身もそうですが、昨日まで単価100万前後で働いていたSI会社の中途社員が、いきなり倍近いコンサルフィーになるのだから、ギャップが生まれるのは必然なんでしょう。
そして、このような、大量の人材を必要とする案件のため、新米コンサルタントにも、仕事を回せるような仕組みづくりが必要でした。それが、今までのスターコンサルタントが作り上げてきたフレームワークであり、分析手法のナレッジです。これに当てはめることで、ある程度の成果物のレベルは担保されてきました。
しかし、もう、それらの手法だけで、対処できる時代は去ったのです。
今後、顧客が求めるものは、真のイノベーションを起こすアイデアであり、このアイデアは現在のフレームワーク頼りのコンサルタントの在り方では、起こすことは出来ないでしょう。
真のイノベーション
「真のイノベーションとは、非連続的なものである。」
例えば、airbnbやuberなどの新興企業は既存のビジネスの延長上にはない。デジタルネイティブな企業であると言えます。
戦略があり、ビジネスがあり、手段としてのデジタルがあるようなピラミッド構造は崩れてしまい、デジタルから戦略やビジネスが生まれる世の中になっているのです。
それらは既存のビジネスとは連続性がありません。これが今企業が求める真のイノベーションであり、コンサルタントの拠り所である、フレームワークでは語ることが出来ないのです。
じゃあ、どうするか。これまでの考え方とは、異なるものを入れなければなりません。
アート×ビジネス
この課題を解決しようと、世界中のコンサルティングファームは躍起になっています。既存のフレームワーク以外の思考法や、付加価値を生み出す為に、急速にクリエイティブ企業とのコラボレーションを進めています。しかし、日本では成功と言える例は少ないといいます。
なぜか。
それは、「コンサルはアートを勘違いしているからだ」記事の中で指摘しています。「アートとは、非論理的なものであり、右脳的な思考なものだと勘違いしている人が多いが、それでは新たな価値を生み出す、クリエイティブな思考には届かず、ただの思い付きとしてあつかわれる。」とこれは、記事の内容を少し要約していますが、大きくは外れていないと思います。
本来、アートとは超論理的なものであるといいます。「論理を重ねに重ねた後に、論理を超えて生まれるアイデアの事であって、論理で積み上げた先にある、答えのない問に応えるために適切にアートを使えなければ、イノベーションは起こせない」と語られています。
ここまでは、記事の大きな流れを要約してきました。ここから下は、私が今後どのように考えて、「では、どうするか?」ということについて、書いて見ようと思います。
守破離
この記事を見ていて感じたのが、「守破離」という言葉でした。元々は師匠と弟子の関係性を表したものだそうですが、これはクリエイティブな思考を得るためにも応用が出来る考えだろうと思います。
守る
まずは、「型を守る」。元々は、師匠のやり方や、業界の基礎をきちんと守り、使いこなせるようにすることを指す言葉です。
これを、コンサルに重ねてみると、コンサルティングがビジネスエリートだった時に、積み重ねた知識を、深いレベルで理解し、使いこなせるようにする事であると思います。つまりは、既存のフレームワークであり、業界標準の業務への深い理解のこととなるでしょう。これ無しには先には進めないのです。
デザイン思考や、アート×ビジネスを論じる人々の中にこのような確固たる型があるのでしょうか。
型があるから型破り。
型が無ければ、それは形無し。
形無しからは、決してイノベーションは起こらないでしょう。
破る
型を守り、使いこなせるようになったら、それに満足せず、既存のやり方を疑い、より良くするにはどうしたらよいかを考える段階に入ります。
これはよく、批判的思考と言われることに近いと思います。業界の中で、常識と呼ばれる基礎に対して批判的に考えるようにします。ただし、この時に、決して目的を見失わないようにしなければなりません。批判することだけが目的となってしまったら、全く価値のない仕事になってしまいます。
それは常に、「クライアントの為になるか。」更には、「社会全体の為になるか。」という大きな視点での目的を見ないといけません。
そして、ここまで考えられたら、次にやることは「小さく試す」ことに尽きると思います。
完璧ではなくとも、行動し、小さく試しながら修正していくことを繰り返すしかないのでしょう。何が成功するかは誰にもわからないのです。
離れる
これらの小さな型破りの積み重ねが、新たな型となり、端から見た時にイノベーションとなるのでしょう。
GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)と呼ばれる世界的にクリエイティブな企業も、よく見ると小さなサービスを出しては改善し、時には新陳代謝を促し、変化しながら世界にイノベーションをもたらしていることがわかります。
非連続的であると感じる物事は、小さなチャレンジと改善の積み重ねであることを忘れてはならないのです。「奇抜であれば良い」という勘違いから出た、思い付きのアイデアとは全くの別物なのです。
まとめ
僕が結論としてたどりついたのは、イノベーションを起こす為の「飛び道具」は無いということでした。
基礎を身につけ、自ら考えて小さなチャレンジを積み重ねる。これが唯一絶対の指針であり、今一度強く心に刻み込まなければならないのです。
このことをコンサルが心から認識し、小さなチャレンジと失敗、改善を文化として認めること、これがこれからのイノベーションを起こす為に必要なことなのです。
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