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初心に帰る銭湯 大井町「すえひろ湯」(サウナレポ)

最近、平日はほぼ毎日同じものを3食食べている。
朝はフルグラ、昼はカップヌードルPROか完全メシ、夜はジャンピラフ("沼"みたいなもん)。以前は凝った自炊などもしていたのだが、太らないようにカロリーをコントロールする必要があってこうした生活を始めてから、ダイエット目標を達成してもずぶずぶとそんな生活を続けている。
なにせ楽だし、太らないのだ。旨くはないが、食えなくもないし。
まず作る手間が低い。フルグラは牛乳をかければ食えるし、カップヌードルは職場で温める必要がない。ジャンピラフは、すべての材料を冷凍庫に小分けにしているから、全部炊飯器に入れるだけでいい。
材料にかかる手間も少ない。フルグラとカップヌードルは全部アマゾンでまとめ買いしておけるし、ジャンピラフのほうは毎月業務スーパーに一度いけばひと月分はまかなえる。
これで毎週ちょっと運動すれば、週末好きに食べてもまあ太らない。(婚活中だから太るわけにいかないのだ)

週末や休日は、わりと好きな物を食べてよいことにしているが、実際のところ、そこまでレパートリーや食べたいものがバラエティに富んでいるわけではない。
カレー・ラーメン・寿司・ピザ・揚げ物・肉……平日の粗食の影響でちょっとジャンクなものが食べたくなるが、そのぐらいだ。思ったよりも幅がない。

食に関する感受性が鈍っているのだと思う。あるいは、「何を食べようかな」というときの脳の性能が落ちているか。一時期はグルメを自称したものだが、もう最近はそうでもない。

だから最近は、あえて知らないものを食べるようにしている。
「何を食べようかな」で考えると、その検索範囲は知っているものに限られ、結果幅がなくなる。だから、外食の機会があるときに、何か知らない食べ物を見かけたら、そっちを選ぶようにしている。
最近だと、タニシの入ったガチ中華の麺料理とか、謎の単語しか書いていないスリランカカレーとかを食べた。

サウナも同じだ。

ついつい、知っているところにばかり行ってしまう。食と違って、サウナは立地や予約の有無とかもあるので、どうしても行きつけに行ってしまいがちだ。
知っているところにいけば、どんなサウナでどんな水風呂か、混み具合はどの程度か、などもわかるし、まあ外さない。
でも、それではいけないのかも、と少し思った。サウナに対する感受性が、食と同じように鈍ってはいけない。
新鮮な刺激がほしい。

ということで、今回はけっこう遠出して、行ったことのないサウナに行ってきた。
大井町「すえひろ湯」だ。

「すえひろ湯」は大井町駅から少し歩いたところにある。古めのマンションとか公園とかがある中に突然現れるのが、いかにも町の銭湯といった感じだ。

たたずまいは真新しく見える。この銭湯は少し前にリノベしたのだ。
最近っぽいデザインの中に入り、電子決済で入浴料を払う。
サウナセットにタオルは入っていないので注意。シャンプーとかは備え付けがある。
(袋に「ミミガー」と書いてあった。隣のやつには「マグロ」。なんで?)

脱衣所は明るく清潔だが、ところどころに昔の銭湯らしい面影が残っていて、良い。
ここの時代を越境している感じが独特の味だ。

浴室にいくと、洗い場が八角形を描くように配置された壁に沿って作られている、ちょっと面白い構造だった。
風呂は通常・バイブラ・座湯・寝湯・電気と、狭い中にぎゅっとコンパクトにまとまっている。
お湯が茶色かったので、すわ黒湯温泉か、と思ったが、お茶の入浴剤が入っているのだった。(香ばしくてよかった)しばらくつかってからサウナへ。

サウナは、リニューアルされただけあって「おっ」となる外見だ。
ウナギの寝床のような細長いサウナ室で、うっすら木の香りがする。
テレビはない。12分計もない。ボナサウナらしくストーブも見当たらない。アブストラクトなサウナ室。

上段に座ってみると、かなり熱く湿度が高いし、熱に指向性がない。全体が蒸しあげられる、錦糸町「ニューウィング」のボナサウナを思い出す感覚だ。木の座席の間から熱気がくるので、さながらせいろに入ったシュウマイのようだ。かなり熱いので、短時間で切り上げて水風呂へ。

水風呂は、広く浅くで、足がしっかり延ばせるサイズ。水温も冷たすぎずぬるすぎず、ちょうどいい。少しだけ水の流れがあるが、羽衣をはがしてくるほどではない。
水質は普通。サウナで鋭敏になった感覚だと、少しカルキ臭いか。

休憩スペースは、以前は洗い場だったであろう場所に椅子を並べて作られている。けっこう席数が多い。
壁に頭を預けられるように配置してあるのは好印象。どこからか少し風の流れもあり、気持ちのいい外気浴だった。

総じて、サウナはリニューアル銭湯らしく良かったが、町の銭湯といった感じで、「改良湯」や「松本湯」ほどでは……とまで考えたところで、ふと気が付いた。

回りには、同じくハットをかぶったいかにもなサウナーもいるが、地元民っぽいおじいさんなども多い。
サウナーではない人たちにとって、銭湯は複数いって比べるものでもないのではないか。
だから、町の銭湯は、別に他の銭湯に比べて、特段すごくよくある必要はないのだ。
町の銭湯にわざわざ遠くからいって、変な帽子をかぶってあれこれ比べている我々サウナーのほうが、スタンスとしてずれているのかもしれない。
町の銭湯はその町にとってのオンリーワンでいい。もちろんきれいだったり便利だったりするほうがいいのは確かだが、あっちにはあれがあって、こっちにはあれがない、などと比較するのはお門違いなのだ。

そう考えると、なんというか「すえひろ湯」は、初心を思い起こさせてくれる銭湯だった。
サウナや銭湯にはまりたての頃には、適当に近くの銭湯にいってみたものだ。今では小ぎれいだったり凝ったサウナ施設ばかりいって、サウナを食べ過ぎて舌がバカになっていたのかもしれない。

水風呂とサウナを満喫したあと、番台でクラフトビールが売っていたので、飲んでみた。
かなり苦くて、サウナのあとの体にしみる。

「すえひろ湯」は、リノベーションで外観や内装がきれいになっている、町の銭湯だ。
サウナはアブストラクトで熱く、かなり良い。
入ったあとのクラフトビールもうまい。

それでいいのだ。

サウナに行きたいです!