100億円メタバース「The Sandbox」サービスインしてなかった【仮想空間の"土地"に価値はある?】
「メタバース(?)の土地の取引100億円超え」話題の「The Sandbox」は 4000万ダウンロードの人気「NFTゲーム」!? 実際にサービスを試してみたところ、驚愕の事実が判明しました…!!!(ついでに「Decentraland」も試してみた)
100億円超えの「メタバースの土地」わずか1週間で取引
2021年12月3日、「メタバースの土地の週間取引高が100億円を超えた」ということで世界的に大きな話題になりました。
これを受けて、各種メディアの方から「メタバース原住民のねむさん、メタバースの土地が高騰して億万長者ですね!」という問い合わせを複数頂いています。
え!? 私億万長者になっちゃったんですか!?
やったー!!!
たしかにデータ見ると、トップの「The Sandbox」(ザ・サンドボックス)というサービスだけでも8700万ドル=100億円(今日の為替1ドル115円で計算)を超えていますね。マジ…!?
ねむ、「The Sandbox」に潜入
というわけで、さっそく「The Sandbox」に潜入してみました。公式サイトでアカウントを作って、ログインしたらアバターが作れたのでこんな感じにしてみました。
「The Sandbox」まだサービスインしてなかった!
さっそくそのアバターでThe Sandboxの仮想世界に入ろうとすると… あれ、入れない!!? なんと! まだ期間限定α版の段階で、そもそもまだサービスインしてないことが判明しました。どゆコト!?(11/20~12/20までの期間限定でα版を一時的に公開してはいたようですので、のちほど紹介します)
「オープンメタバースへようこそ!」とメタバースアピールがすごい…
「ようこそ」って言われても肝心の仮想世界に入れないんだけど…
(一応言っておきますが、NFTによる土地売買システムと、コンテンツに互換性をもたせて複数のメタバースをつなぐ「オープンメタバース」とは全く別の概念です。いまのところThe Sandboxは他サービスとのコンテンツ互換性はないようにみえるので、オープンメタバースとは言えないと思います)
しかし、すでにほとんどの土地が買われて、空き地は少なくなっています。どういうことなの…!!?
まだ住民もいない、存在しない仮想空間の土地が高額で買い占められている状況、なかなか凄まじいですね…
メディア『4000万ダウンロードされた人気ゲーム「The Sandbox」で98億円の土地が売買』!?
ネットメディアも「4000万ダウンロードされた人気ゲームで98億円の土地が売買」って報じてるので、てっきりサービス始まってるのかと思ってしまいましたが、どうやらこれはメタバースのことではなく、このサービスの運営が買収した同名のスマホアプリのことのようです。(そんなのアリ!?)
ITmediaビジネスオンライン『この土地はブロックチェーンを使ったメタバース「The Sandbox」内にあり、「LAND」と呼ばれる。全世界で4000万ダウンロードされている人気ゲームであり、直近では1週間で約98億円もの土地が売買された』(注:事実と異なります)
※コインチェック、メタバースの土地「LAND」を販売 総額5億円超 - ITmedia ビジネスオンライン
金融&IT業界の情報サイト GoodWay『全世界4,000万DLを達成した『The Sandbox』内で利用可能なNFT』(注:事実と異なります)
メディアのこうした取り上げ方では、あたかも「The Sandbox」が運営中の大人気サービスのように見えてしまいますね…
サイトにいけばすぐ分かることので、最低限調べてから取り上げてほしいところです。こうした誤情報に惑わされないように注意しましょう。
「The Sandbox」スマホアプリはまさかの2Dアクション!
さて、いちおう4000万ダウンロードされたという、そのスマホアプリも見てみましたが、思いっきりシングルプレイの2Dアクションゲームアプリなんですけど…
当然NFTとも関係ないしメタバース的な要素があるわけでもありませんでした。
「メタバース」とは…!!?
どうやら真相は、むかし大ヒットした同名のスマホゲームアプリ「The Sandbox」のブランドを買収して広告宣伝に使っている、という事のようです。もういろいろすごい。
※ Animoca Brands acquires Sandbox game developer Pixowl for $4.875 million | VentureBeat
「The Sandbox」で検索すると…「月間ユーザー100万人を誇る大人気ゲーム」!?
また、メディアだけではなく、「The Sandbox」でGoogle検索するとこんな感じのアフィ記事が大量にヒットします。
ふぁふぁぶろ『ユーザーはゲーム内で販売される土地を購入し、キャラクターやアイテムを作成・取引することができます。これまでに4,000万件ダウンロード、月間ユーザー100万人以上を誇る大人気ゲームです。そしてゲーム内で使える仮想通貨がSANDです』(注:事実と異なります)
※仮想通貨SAND/The Sandboxとは?概要や特徴、将来性を徹底解説 - ふぁふぁぶろ
『月間ユーザー100万人』!?
『大人気ゲーム』!?
…ユーザーひとりもいないですけど!?
こういうので「NFT」「メタバース」の検索結果汚さないでほしいですね。こうした誤情報に惑わされないように注意しましょう。
「The Sandbox」α版はVR未対応ボイチャ対応なしのPC向けソシャゲ
α版のプレイ動画などをみた感じ、PCでアバター操るタイプの三人称視点のソ―シャルゲームのようです。当然VR対応もないし、コミュニケーションはテキストとエモートだけで、音声チャットもなし。
これを「メタバース」と呼べるかは個人的には甚だ疑問です。 ※メタバースとは
そもそも、サービスインまでは住民もいない訳だし…
メタバースには「土地の値段」という概念が必ずしもあるわけではない
いちおう説明しておくと、そもそもVRChatなど、実際に私のように人が住んでいるソーシャルVRなどのメタバースでは「メタバースの土地の値段」という概念はなく、アクセスする空間(インスタンス)を無料で思うがまま無限に生成したり、誰のとこにも瞬間移動できることが仮想空間ならではの利点です。
物理現実と違い、メタバースには「土地の値段」という概念が必ずしもあるわけではないです。
個人的にはメタバースの「土地」なるものが将来的に価値を持つかは甚だ疑問です(メタバースの便利なところを潰してるので、単純に流行らなそう)
また、みなさん勘違いしていますが、Metaが開発中のソーシャルVR「Horizon Worlds」にも当然ながらNFT機能も「土地の値段」という概念も存在しません。
メタバースでは「土地(?)」よりも、「ワールドの広告表示権」の方が有望では!?
ただしソーシャルVRでも人気ワールドに人が集まるのは間違いないので、バーチャルマーケットの事例ように、メタバースでは「土地の値段」(?)というよりは「ワールドの広告表示権」が今後大きな価値を持つ巨大産業に発展すると予想してます。
要は「Web広告の3D版」ですね~
逆にいえば、例えば現在の2Dのインターネット上で「Webサイト上の『土地』のNFTを100億円で買いたいかどうか」考えてみてください。
そうすると、今後メタバースの「土地」が価値を持つかどうかも、なんとなくイメージできるかと思います。単に2Dから3Dになっただけなので。価値を持つように作れなくはないですが、少なくとも「不動産」にはなりえないです。
「The Sandbox」共同創設者「俺が(Metaからメタバースを)守護らねばならぬ」
さらに、先日12/15に、この「The Sandbox」の共同創設者セバスチャン・ボルジェ氏が「巨大テック企業(Meta)からメタバースを守りたい」と表明して世界的ニュースになってる訳なんですけど…
買収によってサービスが使われているように見せるテクニックとか、「Meta」「メタバース」に全力で乗っかっていくスタイルとか、メディアの利用の仕方とか、こうした仕掛けで巨額ビジネスを作り出していくのは、なんかもういろいろとすごいですね…
(まあ、なんというか、VR業界もこれくらい商魂たくましくてもいいのかもとか思ったりもしました)
※なお、この記事では「サンドボックス」となっていますが、「ザ・サンドボックス」の間違いです。「サンドボックス」=「Sandox VR」はNFTと関係ない台湾の真面目なVR体験スタートアップなので、混同しないように注意しましょう。
おまけ:「Decentraland」は運営していた
ちなみに、取引高2位の「Decentraland(ディセントラランド)」も試してみたところ、こちらは運営されていました。よかった…(!?)
こちらはPCブラウザでアバターを操作するタイプのソーシャルゲームで、音声チャットあり。VRは対応なしでした。
まあ、私の考える定義ではこちらもをメタバースと呼ぶのは難しそうです。 ※メタバースとは
※まじめな警告
Metaによるメタバースのブームを引き合いに出して、利用実態のない仮想空間の土地を「これからはメタバースの時代! 早く買わないと高騰して買えなくなってしまう」という論調で売っているケースも見受けられます。全てがそうだとは決して言わないですが、売買を行う場合は、きちんと利用実態や将来性があるか見極めた上で行いましょう。
※メディアの方へ
ブロックチェーンの世界はどうしてもお金絡むため、「ICOバブル」然り「アルトコインバブル」然り「草コインバブル」然り、新技術に便乗して実態のないものの価格を釣り上げる輩が後をたちません。メディアの方が面白半分で取り上げたり誤った情報を拡散してその後押しをすることも散見されますので、十分報道の際の表現には注意頂けますと幸いです。
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