もっと食うための現代大食技術論番外編第8回

 料理が不味いのも、好きなお店が閉店してしまうのも悲しいことですが、そういった話は仕方ないと割り切りやすいもの。本当に悲しいことはもっと別のところにあります。

 色々なお店を巡るグルメブロガーが料理の味以上に悲しい思いをする代表例が、「店員の接客の悪さ」ですが、そのことで不快になったことは一度もありません。幼い頃に不味い料理を食べ慣れて大概の外食が美味しいと感じるように、見知っている相手から面と向かって悪態をつかれ慣れてきた私にとっては、お店の接客は何でも神対応に感じてしまう…と言ってしまえば大袈裟でしょうか(笑) 

 確かに個人経営のデカ盛り店には接客に難があるとされる店も少なくないのですが、「胃袋の許容量を考えず、怖いもの見たさでデカ盛りを頼んだ挙げ句残してしまう客」に原因があることが少なくありません。私も分を弁えないオーダーを通して撃沈してしまったことも多々あるので、食事を残す客に対してケチをつける資格はありませんが、客が店を選ぶ権利があるように、店にも客を選ぶ権利があることを、グルメブロガーとして重々承知しなければならないとつくづく思わされます。

 では、私がデカ盛り巡りを続けてきて悲しかったことは何か。一言で言えば、「愛好家同士のいざこざ」。デカ盛りブロガーがデカ盛り愛好家なのはもちろん、デカ盛りを作るお店も言ってしまえばデカ盛り愛好家。これまで何度となくデカ盛りオフに参加してきましたが、このオフ会の最大の魅力は、お客だけでなくお店も参加者になるということ。オフ会を通じて得られる一体感こそ、わざわざ遠征をしてまでお店を巡る理由になるのです。

  https://twitter.com/natsumeguspicy/status/1258974905766305797

 しかし、SNSや動画サイトが発達し、大食い、デカ盛り関連のコンテンツが大食い勢以外にも人気が出るようになった昨今となっては、「いざこざ」を見受けることも増えました。SNSの影響で一躍大人気になったお店と、「全国デカ盛りの旅」で何度となくお世話になったブロガーN氏との行き違いからくるトラブルがありました。昔一度行ったきりのお店が大人気になってると聞いて、再訪を考えていた矢先に起こった事件。面と向かって悪態をつかれることに慣れた私も、仲間だと思っている相手が傷つけられるのを見るのは辛いものです。

 以前もデカ盛りで人気のお店が、私がお世話になったデカ盛りブロガーH氏に暴言を吐いたことがありました。その方は私にとっても、上のブロガーの方にとっても師匠のような存在。その事件を受けてH氏はブロガーを引退。N氏は「その店にだけは絶対に行かない」と決め、既に何度も訪問済みだった私も、「全国デカ盛りの旅」で紹介するのを取りやめにすることにしました。

 大食いは限られた人にしか出来ない以上、大食いブロガーは常に少数派。料理の不味い店や接客の悪い店はいずれ淘汰されますが、料理の味もよく、話題性があり、表向きは接客の良い店にとっては、少数派を敵に回したところで何ら困らないのでしょう。むしろ、炎上商法の一環として、かえって支持を増やすことにつながるかもしれません。客が店を選ぶ権利があるように店も客を選ぶ権利がある。自分が「招かれざる客」なのは重々承知しているつもりですが、何ともやるせないものです。

 そして、「本当に一番悲しい」のは、こんな悲しい出来事にすら慣れきってしまって、大してショックを受けていない自分。愛好家同士のいざこざが毎日絶えない業界。一部の反感を買ってかえって支持を増やす存在が少なくない業界。どこのことかは、敢えて言うまでもありませんね。

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