あなたを推したいと思った日

覚悟を決めた瞬間から感情が溢れて止まらなくて、泣いたり笑ったり悩んだり、忙しい。
今までどこに隠れてたんだってくらいの情熱が胸を満たして、収まらない気持ちは涙としてこぼれて、でも不思議と心地よい。

ある俳優さんのことを好きになった。


好きになった動機は顔がめちゃくちゃタイプだったからなのだけど、彼について知れば知るほど、ずっと活動や表現を見ていたいと思うようになった。

顔だけじゃなくて彼の言葉や性格や考え方がとても好きで、彼がSNSを投稿したり雑誌に載ったり何か活動をしたりする度にはしゃいでいたら、友達に「こんなに浮かれているあなたは見たことない」と言われる始末だった。自分でもびっくりするくらい彼の活動や言葉が毎日の励みになっていて、彼を知ってからものすごく健康に過ごすことができている。

先日、彼のカレンダーイベントに行ってきた。カレンダーを購入したらサインをしてもらえて、少しだけ彼とお話できる時間がある。正直、こういった直接お話できるイベントはとても緊張するし、話すのが得意ではないのでものすごく不安だった。

彼は、とても、とても、優しかった。
今まで苦手ながらも芸人さんやバンドマンと直接お話することはあって、みんな客商売だし不快になる対応をする方なんて一人もいなかったけど、その誰よりも雰囲気が良くて話しやすかったと思う。私はガチガチに緊張してて死にそうだったけど。

私はただお礼が言いたかった。

まったく誇張ではなく、大好きな彼の顔やSNSでの言葉が毎日の励みで原動力で癒しで元気を貰ってる、ありがとうって言えればそれで十分だった。

なのに。

2回目が終わって、ブースから立ち去ったあと、話したいことがどんどん沸きだして止まらなかった。
彼を知ったラジオのこと、見に行った舞台のこと、そこであった嬉しかったこと、今度やる舞台のこと、雑誌のこと、サイン会のために買った服のこと、カレンダーのこと、それから、それから…。

建物から出て駅から歩く道すがら、嬉しくて寂しくて胸がいっぱいで泣きそうだった。サイン会のために服を新調したと言った彼に感化されて着てきたお気に入りの真っ赤な古着のワンピースは、冬に差し掛かったオフィス街では浮いていて、それがまた寂しさを加速させた。
大阪に向かう新幹線の中でも、最寄り駅から自宅まで歩く夜道でも気が緩むと涙が止まらなかった。帰りたくなくて道にしゃがみこみそうになるのを堪えながらゆっくり歩を進めていた。

夢うつつのなかで、彼がその夜更新したInstagramはやっぱり優しくて思いやりに溢れていてそこにいた誰をも肯定する言葉で、また泣いた。

翌日、彼の主演舞台が発表された。

Twitterに吐き出しても繰り返し考えても止まらない。

私に何が出来るだろう。

私にしか出来ない方法で私にしか伝えられない言葉で彼を応援したいと強く願った。

彼を推そう、と覚悟を決めた。

飽きっぽくてめんどくさがりで好奇心旺盛で毎年色んなジャンルに首を突っ込んでいるような中途半端な私だけど。
せっかくの主演舞台だって全通しますって胸を張って言えるようなガッツもないような私だけど(これは本当に現実的に考えて厳しいので)。
終わりのことばかり考えてしまって一歩を踏み出せない私だけど。

でも、私にしか出来ないこともきっとある。

行かないつもりだった次の舞台のチケットを取った。
止まらない想いを届けたくて手紙を書いてポストに投函した。

届け、届け、と願って。

あなたを推したいと思った日のこと。

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