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宇宙論(30)

 僕が不思議な体験をした時の話。

 宇宙を見た。身体の全細胞が活性化され収縮され絶え間なく躍動しているのを感じた。脳が精密な機械であることを確認した。感性は心のあり方であると言われた。

 死んだ。宇宙の真空の中で窒息死した。喘いだ。もがいた。走馬灯を見た。「どの瞬間の自分に戻りますか?」と聞かれた。答えることができなかった。どこにも戻りたくなかった。泣きじゃくった。このまま闇の中へ消えるのかと慟哭した。ふと、2人の姪っ子の顔が目の前に浮かびあがった。ここに戻りたいと思った。会いたいと思った。抱きしめたいと思った。すると酸素は戻り、次第に呼吸は落ち着き、僕は生き返った。けれど身体はガタガタと震え、手を噛んで皮膚と血管の感触を確かめないと生きた心地がしなかった。でもガイドがいてくれた。細野晴臣さんが小舟を漕ぎながら、「大丈夫だよ」と囁いていた。

 僕は死んで生き返った。そんなことを繰り返している。何度も、何度も。それが僕の生き方で、僕の本能がかっこいいと感じている作法。もうどうにもならない性。カルマ。

 僕は死んで生き返る。繰り返す。何度でも、何度でも。無限に。永遠に。

 アップデート。

(2024.5.8)

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