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静かな病

 女は泣いていた。夜の静けさがそれを聞いた。迷い込んだ夜光虫は無神経だった。部屋は冷めたまま青白い月灯りに照らされた。

 男は黙っていた。長い夜が早く終わればいいと思った。静けさは不健康な他人だった。彼は何も聞かなかった。

 彼女らは病んではいなかった。静かな病は夜を浸していた。遠くでは街が華やいだ。彼女らには知る由もない。

 私たちはそれを見ていた。

(2021.3.2)

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