ゲーム
「これでゲームは終わり。君は君のしたいようにすればいい」
君がそう言ったのは真夏の夜のことで、僕らの汗ばんだシャツは柔らかに吹いた風に揺れていた。
僕は永遠について考えた。君と僕の永遠。でもそれはついぞやってこなかった。叶うことのない夢。
街灯に虫が群がる。コツンコツンと音がする。それ以外の一切は静寂だった。
「心配はしないで。きっと何もかもはうまくいくから」
東京の夜空には今日も無垢な月が昇る。僕は都市開発が覆い隠したその光の下で君の隣にいる。それだけでよかった。
「じゃあね。さよなら。楽しかったよ」
これで僕らのゲームは終わった。僕は彼女を引き止めるべきだろうか? それはわからない。とにかく、僕らは自由になった。
「また会おうね。その時はお互いにいろいろなことを忘れていようね」
そう言い残して彼女は去った。僕は彼女を引き止めるべきだっただろうか? それはわからない。ただ、わかることがあるとすれば、彼女こそが僕のミューズであったということだけだ。
ゲームは終わった。僕はどこへ行けばいい?
(2024.5.30)
[BGM:The Strokes - Chances]
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