ずいちゃん
ずいちゃんと出会ったのは精神病棟のオープンフロアでのことだっだ。僕が閉鎖病棟を出てすぐのことだ。彼女は車椅子を看護師さんに支えられながら、フロアの隅の窓から遠くに見える富士山を眺めていた。僕は声をかけた。それが僕らの出会いだった。
それからしばらくの間、僕らは昼夜を共にした。朝、目覚めて、フロアで話し始める。宝物みたいな言葉を発見したりする。一緒に絵を描いたりもする。彼女の描く絵や塗り絵はとても素敵で、そして彼女はミスチルが大好きだった。一緒にミスチルの曲を聴いたりした。そうしてお昼を迎えて、夕方を迎えて、夜を迎えて、おやすみなさいと言って眠る。そしてまた朝がくる。
ずいちゃんが転院してしまってからの病棟での暮らしはとても寂しかった。心と空間に大きな空白が空いていた。それくらい、僕らは濃密な時間を楽しんでいたのだ。
精神病棟で僕は恋をした。それからの2年以上の月日は、その気持ちが錯覚ではなかったということを証明してくれている。
果たして僕らは付き合うことになった。ミスチルの楽曲、『安らげる場所』が思い浮かんだ。
"この恋の行き先に何があるかは知らない
ただ静かに手を取っては 永遠にと願う
いつも君と二人で"
いつも君と二人で。
(2024.6.16)
[BGM:Mr.Children - 安らげる場所]
※写真は2022年3月7日、精神病棟に入院中のメモ。
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