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お水の獣道2



初出勤から地蔵をかました私はとりあえずしばらく続けてみる事にした。


スナックと言ってもなんか一升瓶片手にゲラゲラする感じじゃなくて
店内BGMがラッパの音楽が流れてる感じの…
なんていうか、探偵はバーにいるに出てきそうなバーみたいなやつ。でもスナック。



私は地蔵ながらもこの時はまだ前向きな地蔵だった。



とりあえず、まずはお客さんの名前をしらみつぶしに覚えた。
忘れない様に真っ黒な小さいノートにお客さんの名前と性格やらを書き足してったけど日に日になんだかデスノート みたいになってったので黄色いノートに変えた。


で!


最初の頃はお姉さんの2人お客さん1人の3人で会話してたんだけど、
週末は忙しくて私とお客さんの一対一になる場面があった。


「こ、これはマズイ。何か話さなきゃ…どうしよう…どうしよう…」って水割りをわざとゆっくり作りながら考えた。
話のネタを考えたけどマジで出てこない。
絞りに絞り出して出した質問を私は言い放った…













「最後に泣いたのはいつですか?」







当時の私よ…

バカなの?

当時は話し出すだけで精一杯だったので何にも思わなかったけど今思えば何聞いちゃってんのこのバカ!!!
このバッ!!!バッ!!!

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こんな私のバッ!な質問にお客さん(50代)は


「しばらく無いな…21歳の頃に泣いたくらいかな…?」
と優しく返してくれたのにも関わらず










「そうなんですねー」








そう、お察しの通りこの一言のみです。
お前が問いかけたのにも関わらず、話を広げずに畳んでタンスにしまっちゃったよ!

まるで笑っていいとも!のテレフォンショッキング冒頭のタモさんへの「そうですね!」みたいなテンションで「そうなんですねー!」言っちゃったんだよ。


そこへ丁度ママが入ってきてくれてそこから私は再び地蔵に。
水割り作ってふざけた質問して「そうなんですねー!」と言った地蔵とは私の事です。
その日はその出来事以外は全く記憶がありません。


「私、向いてないな…もう辞めたい」

出勤3回目で挫折。でもこの時はお金が欲しいからただそれだけの理由で続けていた。


働き始めて半年くらい経って少しずつ地蔵が話せるようにはなってきた頃に
超大御所的な昔から常連のお爺ちゃんの金さん(仮名)と仲良くなってからはすごい楽しくなった!
それと半年も続けているとお客さんも私のことを覚えてくれてどんどん仲良くなってきた!


しかしこの後、私の生活に悲劇が起こりとても人に接客なんてできる状態じゃなくなって昼と夜の仕事は休みがちになり最終的にDr.コトー先生みたいな先生からドクターストップされて1ヶ月半くらいずっと家でミイラになってました(笑)地蔵、ミイラに転職。



つづく
(BGM銀の龍の背にのって)










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