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『おひとりさまの終活「死後事務委任」』國安耕太著について

 昨年から今年にかけておひとりさまの親族が何人か亡くなった。生涯独身もいれば、離婚後子供との交流がない人もいた。兄弟が生きていれば、死後の手続きをしてもらえるが、一人っ子や頼れる親族がいない場合、もしくは誰かに頼りたくない場合はどうなるか調べた。

 現在の法律では、死後の手続きは親族がやる前提になっている。身寄りのない人が自宅で亡くなると、警察→市区町村の生活福祉課が死亡記載申出書を作成→戸籍課に届ける。葬儀や埋葬は市区町村長が行う。その後の公共料金を止めたり各種契約の解約を役所はやってくれない

 そこで死後事務委任契約を結んでおけば、親族に頼らなくともすむ。問題は誰と契約するか。友人知人でも契約できるが、法律のプロ(弁護士・司法書士・行政書士)に依頼する方がよい。一般的には、見守り契約を組み合わせる。なぜなら、委任者が亡くなったことを受任者に知らせる人がいないから。定期的に連絡をとり、委任者に異変がないか確認する必要がある。

 しかし、死後事務委任のみを引き受ける専門家は少なく、遺言と合わせて契約することが多い。費用は、遺産から支払うか、一定の金額を預託する。

 とまとめてみたものの、何をどこまで契約するするかにより費用は変わってくるし、サービスを提供してくれる事業者も少ない。

 私が調べたところ、三井住友信託銀行の「おひとりさま信託」というサービスが実際的と思った。死後事務の履行は依頼できる一般社団法人を紹介し、葬式埋葬、各種解約手続きをサポート。金銭信託を契約し、死後事務履行後の残余財産は、指定した帰属権利者に支払う。エンディングノートの保管や安否確認もできる。金銭信託は最低300万円から預入可能。こんなに払えない人には、生命保険を利用するサービスがある。

 私自身、今すぐこの契約を結ぶほどの緊急性はない。しかし役所は何をしてくれるのか知っておきたかった。今すぐできることは、使わない銀行口座やカード、サービスを整理しておくこと。そうすれば、万が一のことが起きた時手続きがひとつでも少なければ、あなたの大切な人の手間が減る。

 未来予想をすると、今後葬式の規模が縮小し、参列者が減り葬儀事業者の収入が減る。そこで葬式とセットで死後事務委任契約がサービス化されるのではないか。法律を変えたり、役所の仕事を増やすのは簡単ではないから、民間企業でビジネスモデルを作れば、契約しやすくなり、価格競争が起きると思う。介護事業は、あっという間に拡大したが、死後の問題は、空家も含めてなかなか厄介だ。