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待ち時間は忍耐の訓練

母が、かかりつけ医から「突然死するかもしれないから、心臓の検査をした方がいい」と言われ、心臓専門病院の紹介状をもらって帰宅した。

「断れなかった」と無念そうな母。「あれじゃない。ヨボヨボで病院行けなさそうな人には検査すすめられないから、そこそこ行けそうな人を選んでるんじゃない」と言ったら「そう、人を見て言ってる」と母。

それにしても80の年寄に突然死って?それは寿命と違うか?町医者の行動を不審に思いつつも、仕方ない付き添うかと重い腰を上げた。

10時半の予約なので、10時前に病院に入った。初めての病院の入り口で検温担当の人に、紹介状を渡そうとした母。後ろから「ここじゃないよ」と教えた。6番窓口って言われてたのに、間違える。

中に入っても、ここはどこ状態でキョロキョロ。年寄は視野が狭く空間認識能力が劣るのか、6番窓口が見つけられない。「奥だよ、奥」と猫背を押して前に進める。

受付を済ませ、案内された診察室前で待つ。2番診察室だが、10時半を過ぎても呼ばれる気配はない。隣の1番担当の先生は回転が早く、どんどん患者が出入りしている。

丁寧なのか要領が悪いのか、2番は開かずの扉のようだった。11時半になりやっと次が母の番号になった。行き交う人々を観察しながら、人は生きているのではなく生かされていると実感した。

老いも若きも、やせた人も太った人も診察室へ入っていった。世の中こんなに病人多いのか。天井が高くて照明が暗いのに、斜め前のおじさんは、眼鏡をおでこにひっかけてゴルゴ13を読んでいた。

私は、暇つぶしの本を持って行ったが読む気がせず、人間ウォッチングを続けた。柔道か相撲をしていた体格の人、素足にサンダルの若い女性、共白髪の老夫婦。

動悸も息切れもないのに、どんな検査をさせられるのかと思っていたら、別病院で大腸癌の再発がないか19日にCTをとるので、その画像を持って25日に再診すると言われたようだ。

母が説明できたから、重複して検査しなくても済みそうでよかった。結局会計が終わったのが12時過ぎで、10分の診察のために2時間待った私。

待つのって退屈。だが、もしかしたら深刻な病気が見つかるかもしれない状況だったら、そんな気持ちではいられない。週に何度も通院に付き添わなければならなくなったら、待ち時間をどう過ごそう。でも大変な努力をして付添をしなければならない人達の心情にも思いを馳せた。

今日は、母の年相応なオロオロと、口は達者なことが分かった。付添は忍耐力の訓練と思い、運転手と話し相手を引き受けよう。