銀行員版桃太郎『MOF太郎』
ある地方都市に、裁定請求書提出済みの元地銀高齢者世帯がありました。
最終職歴関連会社出向の銀行OBのおじいさんは、自尊心を維持するために元部下の支店へ暇つぶしに、社内結婚で勝ち馬を読み間違えたおばあさんはコメリのパートに行きました。
すると、おばあさんの目の前に信金のカブから大きな桃が落ちました。
「これを拾ったら、当事者になってしまう」
おばあさんは躊躇いましたが、監視カメラに映る画角だったため仕方なく拾い上げました。
家に帰って裁断機で割ってみると、まだ目が濁っていないリクスー新入社員が深々と一礼して出てきました。
「地域貢献!地方創生!中小企業支援!」
いきなり呪詛を唱え始める濁りのないアホだったので溶解処分にしようかと思いましたが、「MOF太郎」と名付けOJTすることにしました。
研修期間中、おじいさんはMOF太郎に財務諸表の読み方と投信をハメ込める高齢者の見分け方、見込みA案件の期跨ぎ、案件握り込みや素預りの危険性、そして取りやすい銀行業務検定を教えました。
おばあさんは、社内不倫は絶対にバレるけど本人たちにはバレていると悟らせない一致団結した姿勢が暗黙のうちに構築される陰湿な一体感があること、将来性のある若手男子は秒でアラサー女子行員に狩られることを教えました。
英才教育のおかげか、MOF太郎は立派な社畜となりました。
「KPI!KPI!必達!必達!」と日々繰り返すようになりプロパーを避け保証付きばかり推進するようになりました。
そんなとき、MOF太郎の村に鬼(金◯庁)がやってきました。何日後にくると予告してからきました。村(本部)は大騒ぎです。
MOF太郎は、当局(鬼)退治にでかけることを役員から指示されました。意思確認はありませんでした。
MOF太郎が自己査定資料を見直していると、本部に尻尾ばかり降っている犬支店長が近づいてきました。
「この債務者さあ、俺は出したくなかったんだけど部長の指示があってさ、ほら稟議には書いてないけどわかるよね?ヒアリングは立ち会うけどさ……」
と当事者意識皆無な発言をし仲間になりたそうな目でこちらを見ましたが、ほぼほぼこいつは逃げられないと判断していたので
「大丈夫ですよ。この先は今回の一丁目一番地ではないので軽くスルーさせますから」
と返答し、追い返しました。
今度は無能で有名な猿支店長が近づいてきました。
「この先がランクダウンしたら引き当てやばいんだよね。金利外しできないから実抜計画求められたらどうしよう?」
MOF太郎はため息混じりに答えました
「そこは抽出基準に引っかかっていないから大丈夫ですよ。融資部長通達もう一度読んでいただいてもいいですか?」
猿支店長は重印の長期不付合が発覚しフルボッコで降格寸前であり半分壊れている破綻懸念先なので仲間にはできません。
最後は審査部のキジ課長が近寄ってきました。
「この再エネ融資なんだけどさ、俺ぜんぜんわかんなくて答弁できないから一緒に立ち会ってもらっていいかな?MOFくん一番よくわかってるよね?」
と、ここぞとばかりに普段振りかざしているセクショナリズムを無視して横断的協力を依頼してきました。
「前例に基づいて与信判断したわけですからそんなに突っ込まれないですよ。いまさらの話ですから。『今後モニタリング強化します』で逃げられます。モニタリングシート作っておいてください」
キジ課長は営業店でセクハラをし内部通報を経て懲罰委員会にかけられ本部収容となりましたが、審査部に配属されたことにより自分の価値は認められていると勘違いしている悲しい人であるため、やはり仲間にするには債務者区分が低すぎます。
犬・猿・キジ、それぞれをバルクでオフバラし、MOF太郎は担保・保証のない丸裸で村が用意した鬼が待つ特別室へ入室しました。
鬼(主任検査官)は
「今はですね、心裡的安全性の担保を重視していますから、リラックスしていきましょう」
と論理破綻しているとしか思料できないこと言ってきましたが、聞かれることがガバナンスについてで役員直撃案件であるため心理的にぜんぜん安全ではありません。
別の鬼からは
「営業推進方針等や実際にやっておられる代表的な施策について教えてください」
と聞かれましたが「戦術=ノルマ」である現状や、補助金や助成金といった本来は武器でしかないものを戦術と認識して現場に得意げに下ろしたりする中小企業診断士を誇りにしている痛い営業推進課長がガンであることを正直ベースでNDAなく情報漏洩してまいました。
鬼(当局)たちは最後に講評を行い、帰っていきました。
MOF太郎は数々の財宝(指摘事項)を丸投げして異動していきましたとさ。
めでたしめでたし
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