隊長変死の椅子 / 毎週ショートショートnote

探検隊はやっとのことで洞窟の奥へと辿り着いた。
「あそこに伝説の椅子が！」
カメラと照明が先に入り椅子を照らす。
「誰がどうやってここまで椅子を運び入れたのだろうか？」
隊長役は椅子に向かって歩き出した。
「何か歩きにくいぞ。泥の塊でも積もっているのかな。」
足元を照らすと一面黄色い塊が転がっている。隊長は足元を見ながら椅子に腰掛けた。
「あっ」
隊長は椅子の上でみるみる小さく黄色くなっていく。目を見開いたまま手のひら程度の大きさになると椅子の上をころりと転がり落ちた。
「…カメラ撮ってたか？」
「いえ、まさかすぐに『隊長変死の椅子』に座るとは思わなかったので間に合いませんでした。」
撮影隊はため息をついた。
「今回こそカメラに収めたかったのになぁ。仕方ない。また来るのも大変だし誰か代わりに隊長にしてしまおう。」
振り向くと探検隊はすでに逃げ出し、彼らに蹴られた無数のアヒル隊長がごろごろと転がっているのみだった。

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