石版印刷を紹介した絵本

『デザインのアトリエ 石版印刷』、前回は扉の注釈でわくわくして終わってしまった。今回はその続きで。

見返しには道具類が並ぶ。
前見返しは赤地。刷毛、万年筆、鉛筆など。
後ろ見返し青地。ローラー。

これらの道具類は後から加わったもので、石版印刷は約200年前に偶然、誕生した。生み出したのはドイツのアロイス・ゼネフェルダーという演劇を志す青年。1796年に石版印刷の実験に成功し、自分の戯曲を石版で印刷したという。

印刷博物館のHPによると、日本では石版印刷機はすでに幕末の頃には輸入されていたようだ。このような石でできた版を、朝ドラ『らんまん』のなかで、主人公の万太郎が使っていた。植物を自ら採集、描き、印刷をするために、印刷所で修行する。このときに石版印刷の製作過程も紹介されていたのが話題になった。

石版と水と油。さらに必要なものは?
角のようなハンドルがついているプレス機は、ウシと呼ばれ、ハンドルを回すとゾウ10頭分くらいの圧がかかるという。
表紙を改めてみると、アトリエの主が”牛”の角を回している。顔が赤いことや、背中をそらしているようすから、相当な力が必要なことがわかる。壁には黄、赤、青のローラーが並び、その一つに著者の名前が書いてある。

裏表紙。大きな机の上に、向きを変えて、重なる本がある。その上にゼネフェルダー氏の額が置いてある。
3色と、3色が重なり合ってできた緑で表現された本の山。この部分だけでも、インクの使い方のお手本のように素晴らしいのでぜひご注目を!


赤、青、黄3つのインクの組み合わせ、重なる様子、素材を変えてタッチが変わる様子、版の様子。
わかりやすい構図に加えて、日本語が邪魔にならないようにさりげなく改行されて、バランスよく並んでいる。

頁をめくって、に平たい塊が置いてある。
 LA
 LITHOGRAPHE

の文字が、逆に向いて並んでいる。

これを実際に刷ると、文字がこちらを向くということだろう。最初は見逃してしまったが、読み終わった後には、これが石版印刷用の石で、この絵本の主人公なのだとわかる。


ますます底本が見たくなった!!
版元さん、オリジナルと、日本語版を並べて、展覧会をしたらいかがでしょうか? 印刷の見本や、制作過程の写真も添えて。

デザインのアトリエ 石版印刷
ギャビー・バザン/著 みつじまちこ/訳
グラフィック社


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