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逃げろ、モグラ獣人

 それまでの仮面ライダーに比べて、仮面ライダーアマゾンは変身までに時間がかかる気がしている。私は『アマゾン君(人間の方)の怒りが、ある程度の量に達しないとアマゾンに変身できない』という仮説を立て、週1回の再放送でのんびり検証している(本当の調査なら、ストップウォッチ片手に調べるべきだが、あくまでも本人調べで)。
 そんなアマゾン君の怒りは、第20回『モグラ獣人 最後の活躍!!』では比較的早い時間にピークに達していた。

 モグラ獣人は鼻の先に花のような器官が付いている。赤いからだに白い花(鼻)はあまりにも目立つ。これは触覚なのかもしれない。
 ターコイズブルーの細長い目は離れていて、目じりが少し下がっている気がする。羽海野チカ先生の漫画に出てくる動物のような形だ。
 人間でいうと両肩の位置に、するどい爪のついた(でも、とても短い)両脚があり、ぜんぶで6本脚だ。
 つまり、あの哺乳類のモグラとはだいぶ違う姿をしている。多くの人は、怖さ以上に不思議な親近感→かわいいという気持ちを抱いてしまうのではないか。

 そして、よく喋る。殆どがボヤキだ。
 私はモグラ獣人の真似ができるようになっていた。『ふん、どうせ俺なんか。ちゅちゅーん』(動くときに、ゴン太くんのような音を出す)。すぐに逃げる。
 テレビから離れて、スマホ片手に放送が終わるのを静かに待っていた子どもの前で真似をしたら、ふんと笑われた。
 似ているか、似ていないかは別として、つい真似をしたくなるのだ。当時の子供たちもやっていたはずだ。
 モグラ獣人が何週かにわたって登場していたということは、人気があったはず。ゆるキャラが世の中に認知される前に、昭和のキッズはモグラ獣人のことを”こわ可愛い(少し怖いけど可愛い)”とすんなりと受け入れていたのだろう。

 いつもはすぐに土の中に隠れるのに、今回のモグラ獣人は逃げなかった。戦うのではなく、彼らしい最後を迎える。そして東京の皆さんを救う。
 でも、どこまでも逃げてほしかった。自分もずっとモグラ獣人の真似をして、いざというとき何かから逃げだしたりしたかった。

 それにしてもガランダー帝国のキノコ獣人の方が、モグラよりも格が上って……? キノコはもはや、獣でも人でもないじゃないか。


*simpleisbestさんの写真をお借りしました。ありがとうございました。

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