マガジンのカバー画像

オリジナル小話の詰め合わせ

301
数分で読めるオリジナル小話をまとめました。 SFジャンルの小話が多めですが、コメディや温いホラーなどの様々なジャンルの小話が混ざっております。 主に平日午後8時、9時頃に更新して… もっと読む
運営しているクリエイター

2021年9月の記事一覧

錯覚の森でお茶会を

繋がっている3本の四角柱が、接合部で直角に、それぞれ逆の方向に曲がっている。鳥居をひっく…

水月suigetu
2年前
42

無い壁からエンターティナー

子供の頃に覚えた、周囲の人を笑わせる快感。こらえ切れず、心から発せられる笑い声に、俺は魅…

水月suigetu
2年前
37

帰還念じるコールド・プリンター

押し慣れたボタンを押す。シャッ、シャッと紙が擦れる音と一緒に、印刷された紙が滑り出てくる…

水月suigetu
2年前
33

水瓶放送網ビバップ!

4体のAIの意識体が奏でる、トランペット、サックス、ピアノ、ドラムのジャズ。始まりと終わり…

水月suigetu
2年前
27

パジャマオーケストラで再公演

周囲を見渡す。誰もいない。今なら。明日は休みだし。こっそり。少しだけ。 グランドピアノの…

水月suigetu
2年前
31

虹色の風、人馬一体に

草原の真ん中で草を食む、栗毛の馬を必死にスケッチする。素早く。正確に。筋肉や骨格の隆起。…

水月suigetu
2年前
69

ボールライトニングの小宇宙

細いポールの先にある,、大小の金属製の球体。球体の鏡面に、私の顔が歪んで映り込む。 静電気発生装置だ。一般的な独り暮らしの老婦人の家には、めったに置かれないものだろう。この家には確かに、研究者が住んでいたのだ。 家主は、アカデミックな世界からの魅力的な誘いを何度も断り、独りで宇宙を研究していた人。平原に小さい家とラボを建て、数十年間、独りで宇宙の深淵を覗き込んでいた女性。 木目が綺麗な木製の壁には、四季折々の平原の写真が飾られている。宇宙だけでなく、写真や平原の植物にも

地下水路のミスター・ロックスミス

足元をちょろちょろと流れる水。その水の流れていく先は、暗闇。コンクリート製の巨大な洞窟の…

水月suigetu
2年前
44

スノーブラインド通りへの越境

無事に離陸し、マスクから供給される酸素を多めに吸い込み、吐いた。 眼下には、青い海と陸地…

水月suigetu
2年前
34

サフィレット・ディスクの寂光

4枚重ねたガラス製の円盤を、照明の光に透かす。 厚さ約5mm、直径約20cmほどの円盤。紫がかっ…

水月suigetu
2年前
25

幽玄のエネルギーは環状の時に燃え

確かな手ごたえを感じ、スコップを脇に放り投げた。 分厚い軍手をはめた両手で土を掘る。指先…

水月suigetu
2年前
21

晩秋の信号待ち赤トンボ

自転車を降りて、押しボタンを押す。右から左へ、左から右へ、次々と視界を横切る車。 ザァッ…

水月suigetu
2年前
30

エレクトロン零す白月の幻影

「おはようございます!せんせ!」 盛大に欠伸をしながら研究室のドアを開けた時、真後ろから…

水月suigetu
2年前
35

ピース、スパーク、リープ

もし突然、目が見えなくなったら。 子供の頃、気楽に想像したことが、突然、重苦しい現実になるとは。 漆黒の中で、担当医の淡々とした言葉に耳を澄ます。 遺伝的な原因。回復は見込めない。 不思議なほど冷静でいられる。検査の間、淡い希望を抱いているのも辛かった。医師のハキハキした声に止めを刺されて、暗い心の底で、少しほっとする。 今日も、指先で小さいピースの凸凹を探る作業に集中する。 右手でピースを探りながら、おそらく3割ほど完成しているジグソーパズルを左手で探る。右手の