マガジンのカバー画像

オリジナル小話の詰め合わせ

300
数分で読めるオリジナル小話をまとめました。 SFジャンルの小話が多めですが、コメディや温いホラーなどの様々なジャンルの小話が混ざっております。 主に平日午後8時、9時頃に更新して… もっと読む
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

目、舌、鼻、耳の麒麟巡り

聳孤―ショウコ―目 まずは、クリスタルの海に飛び込もう。水晶の丸いゲートを、光と一緒に通…

水月suigetu
2年前
15

螺旋の始まりとフラワークロック

三角形のガラス箱の中に、静かに花の苗を移す。仕上げに,、使い込んだブリキのじょうろでたっ…

水月suigetu
2年前
21

月と地球のペリドットパフェ

煌々と光る水の球。 暗闇に映える地球の青い光は、月の住民にとって神秘の象徴だ。特に、今日…

水月suigetu
2年前
50

夢見るキリンと三日月の十字架

僕の背に跨っている人間は、ずっと星の話をしている。 「200億光年、遠く離れた星の中にはね…

水月suigetu
2年前
20

二つのラスカのカデンツァ

穏やかに揺らぐ炎。簡易リクライニングチェアに座って、足先にある燃える薪を見つめる。 隣に…

水月suigetu
2年前
14

ゴルディアスのバスの到来

バスが来ない。 時刻表と腕時計を何度も確認するが、もう30分は遅れている。一台も車が通過し…

水月suigetu
2年前
9

夢幻の魔を除けるtoCodaの行方

鍵のかかった箱が目の前にある。ほのかな既視感。 シンプルな木製の箱。薄い琥珀色。60cm四方の正方形。蓋の境目はぴったりと閉じられており、鍵穴らしきものはない。1ヶ所だけ、境目に不思議な黒いマークが彫り込まれている。重さは1㎏ほど。揺らしても、何かが動く気配は無い。 祖父母の家の倉庫整理は中断。祖父と祖母に尋ねてみたが、まったく記憶に無いという。無性に気になる。祖父母から許可を貰い、箱を開けてみることにした。 何をしてもピクリともしない。解錠業者にも依頼したが、箱は頑と

レグルスと呼応する海辺

木の上から、砂浜を元気に走るライオンを見つめる。一頭しかいないようだ。しかし、ライオンは…

水月suigetu
2年前
14

エレクトロンフィッシュの憂鬱

あ、静電気が来たよ。    やったー。色々考えてたらお腹空いた。 僕は半分でいいや。 残…

水月suigetu
2年前
8

プリンキピアを読む竜の背骨

琴型人口衛星は、赤道から数万キロ離れた軌道にいた。私が生まれる前から。しかし、数日後には…

水月suigetu
2年前
6

しっぽの福音

ほかほかと湯気を立てる丼。一口、麺をすすった。 鼻に抜ける香ばしい醤油とまろやかな昆布出…

水月suigetu
2年前
15

飲み込むヒューマンレコードの明滅

赤い「破棄」の字が大きく書かれた段ボール箱をじっと見る。今日はこの中にぎっしりと詰まった…

水月suigetu
2年前
10

西の脳の庭

名も知らない花の苗を植え、枯葉を除去し、樹木の健康を確認して回る。広大な庭園の中での作業…

水月suigetu
2年前
9

真珠の連なりをたぐって―シュステーマ・ソーラーレ計画の後先―

ガラガラガラ、ゴロゴロゴロゴロ、バリバリバリ、ドーン。 分厚い雲から鳴り響く雷の音に、広げたばかりの傘に大粒の雹が当たる音が重なる。とうの昔に生身の身体を脱ぎ去った僕には、不必要な傘だ。常に降っている雷と雹は、僕を通り抜けていく。僕は、この木星そのものだから。 しかし、今日は懐かしい来客がある。身体を持っていた頃の僕をよく知っている友人たち。数人の仲間が持つ超能力を活用して、太陽系の星を創るなんて計画に、大真面目で取り組んだ気のいい仲間たち。 リーダーから「今度行くよー