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オリジナル小話の詰め合わせ

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数分で読めるオリジナル小話をまとめました。 SFジャンルの小話が多めですが、コメディや温いホラーなどの様々なジャンルの小話が混ざっております。 主に平日午後8時、9時頃に更新して… もっと読む
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2021年6月の記事一覧

プラネットタートルスフィア

強風にさらわれまいと、近くにあった鉄の瓦礫にしがみつく。砂が舞い上がり、暗闇がやってきた…

水月suigetu
3年前
8

キャプテン・スカーレットな彼女

そわそわしている彼女の前に皿を置く。ほかほかと湯気を立てる穴だらけの物体に、彼女は露骨に…

水月suigetu
3年前
11

フーコーの振り子に乗って

振り子が揺れている。白く発光する球体が目の前を左右に横切り続けていた。周囲は暗い。首を動…

水月suigetu
3年前
4

デッドフレイを泳ぐ錦鯉

口笛を吹きながら泳いでいたら、湖の底にしっかり根を張る木にぶつかりそうになった。身体を捻…

水月suigetu
3年前
9

漁師テレポーテーション

丸太をくりぬいたお手製の小舟に、意気揚々と乗り込む。オールを漕ぎながら仰ぐ青い空を、渡り…

水月suigetu
3年前
9

電子恐竜の涙は海へ

光る粒子だった頃の僕は、時間を進んだり戻ったりしながら旅を続けてきた。時間の向きを切り替…

水月suigetu
3年前
8

汽笛を鳴らして銀河の向こう側へ

予定より早すぎる時間に、目が覚めてしまった。まだ寝ていたかったのに、もう意識が冴えてしまっている。諦めて寝台を下り、廊下に出た。 窓を覆う水色のカーテンを開ければ、空に存在感を放つ星。明けの青星。地球だろう。音を出さないように慎重に、少しだけ窓を開ける。 ガタンガタン…… 列車の走る音は、意外と静かだ。 早朝の涼しい風が吹きこんでくる。くっきりと輪郭を持った地球。 小さい頃、望遠鏡で天の川銀河を見た。ぼんやり見えた銀河に魅了された。宇宙には星の集団である銀河が数えき

少女たちの大いなる作業

イヴリンが伯父から借りたという車は、ガタガタと揺れながら東にまっすぐ進んでいく。曇り空と…

水月suigetu
3年前
6

でいだらぼっちのラストノート

地響きが、頭の中に立ちこめていた霞を一気に取り去った。窓から外を見ると、大勢の人が懐中電…

水月suigetu
3年前
5

壺かぶりのバイノーラルビート指揮者

耳の奥にひんやりとした金属製の器具が触れる。苦手な感覚だ。器具が離れた後、まだましな状態…

水月suigetu
3年前
8

オールマイティー自販機

喉の渇きに耐えられなくなってきた。胸の前のベルトを外し、リュックサックを降ろす。水筒を引…

水月suigetu
3年前
6

ニルヴァーナ・エレベーター

海底で見つけた大型潜水艦の中には、しっかりと空気が残っていた。乗組員たちの骨や貴重な資料…

水月suigetu
3年前
5

星夢の邪正一如

「なんてことだ……」 「もうどうにもならないさ。船の仲間も帰るべき星も失っても、僕たちは…

水月suigetu
3年前
2

超える色彩

聞き慣れたクラシック曲が、私の緊張を煽る。今日が最後のカウンセリングだからだろうか。 呼ばれて診察ルームに入ると、見慣れぬものが目に飛び込んできた。紫色の可憐な花と、青緑色の羽根を誇らしげに広げる鳥の絵画。2つの絵画だけが飾られた大きなクリーム色の壁に、カウンセラーは寄りかかっていた。 「どうも」 「どうも」 「先生、絵画鑑賞なんてご趣味が」 「鑑賞目的じゃなくてね。あ、いや、鑑賞目的か。網膜細胞を使った遊びのために」 「はぁ」 「こんなことはどうでもいいや。カ