マガジンのカバー画像

オリジナル小話の詰め合わせ

301
数分で読めるオリジナル小話をまとめました。 SFジャンルの小話が多めですが、コメディや温いホラーなどの様々なジャンルの小話が混ざっております。 主に平日午後8時、9時頃に更新して… もっと読む
運営しているクリエイター

2021年5月の記事一覧

電池がどっかいっちゃった

あの日、大きな荷物が届いた。政府から毎月配給される例の電池。しっかり差出人を確認してから…

水月suigetu
3年前
9

さようならば、42億年後に

「みーつけた」 寝起きでぼんやりしていた時、懐かしい顔が急に目の前に現れた。目が冴えて…

水月suigetu
3年前
4

拡散、拡散、拡散、接合

彼女の手はとても、とても冷たかった。驚いて、手を引っ込める。振り払うようなしぐさになって…

水月suigetu
3年前
3

あなたのコップ

靄が立ち込める空間で目が覚めた。座ってもたれていた壁はガラスだ。立ち上がり周囲をよく見る…

水月suigetu
3年前
5

ディープ・レイヤーにかえる

体を捻らせながら、壮大に浮上していくマッコウクジラとすれ違う。淡い光で浮かび上がるそのシ…

水月suigetu
3年前
3

考える星に

大きなドームの中心部分から、月光が差し込んでいる。 「今日は機嫌が良いみたいです。雲一つ…

水月suigetu
3年前
6

ロングフォー・イカロス

足元に散らばった線香に、君の最期の姿を思い出す。 君は快晴の日に飛んでしまった。透明な重い翼を背負いながら。イカロスみたいに。 線香を一本一本、拾い上げる。 君はずっと憤っていた。神でなく、人が神も人も見捨ててるんだと。優しさが惨たらしく消費されていると。君の怒りは、無尽蔵の優しさに見えた。だから、君は群がられて、命ごと食い尽くされてしまったのだろう。 君と私はめったに会わないけれど、親友だった。少なくとも、私はそう思っている。 君といると、何でか、遠足に浮足立つ子

アルノ・ヴェルデの言葉

モニター一面のターコイズブルーに、深い息を吐く。厄介なエラー表示。そろそろ新しい機材が必…

水月suigetu
3年前
2

これから を創ります

皆さん、お知らせしておいた材料は持参されましたか?忘れた人は、今回は見学となります。材料…

水月suigetu
3年前
1

量子なグッピースフィア

さらさらとした砂のようなエサを水面にふりかける。カラフルな裾の長いドレスを揺らめかせなが…

水月suigetu
3年前
1

ネオングリーンのWで進め

ネオングリーンカラー一色の、翼を生やしたライオンのマーク。 遥か遠くの東の島に住む友達か…

水月suigetu
3年前
2

からびやうくうかん、にて

大の字で横たわった君は、教授のように淡々と話し続ける。 森羅万象の最小単位は、「糸」らし…

水月suigetu
3年前
5

南天鉄塔

けたたましい振鈴の音は、目を開けると聞き慣れた素っ気ないアラーム音に変わった。重い腕を伸…

水月suigetu
3年前
7

ハルシネイションフライト

無事の着陸は絶望的。機長のアナウンスはつまり、そういうことだった。様々な高さの声が重なって響き渡る。残すものも道連れにするものも無い私は、無言で窓の外を見る。 齧られたように中央部分が損傷した機体の翼。遠くに渡り鳥の群れ。美しい等辺三角形を維持しながら軽やかに飛び続ける鳥達が、私の頭を埋め尽くす。 あの軽い羽根も、無色透明の風も、正しく集合すれば鳥の身体を浮かし得る。まったく不思議で。揚力や推力なんて知識をねじ込まれた今も、やっぱり摩訶不思議なままで。 人間は一向に浮