旅人として
自宅の近所に、面白い青年が住んでいる。
木工関係の職人なのだが、元々は九州の生まれとか。ゆらゆら漂い、時に自らの意志で道を選択しながら、全く縁も所縁もない土地に工房を構えている。
その行動は、概ねSNSで知るのだが、まあ身軽に、色々な所に出没しているわけで。
思いもよらない土地に知り人が居たり、その地域の美味しいお店に行っていたりと、その行動範囲の広さには驚かされるのである。彼の外出する記事を見て、「ここって何処?」と調べて、私の知識も広がるという寸法。
きっと彼は、旅人として生きてるんだろう。
定住するわけではなく、ふらりと車を転がして、行きたい場所に、見たい光景に会いに、出かけて行く。
その中に、ちょっと長い期間生活する、基盤めいた場所があるだけで、彼は自由で、軽くて、囚われない。そんな生き方を感じる。いつでも、どの場所でも、彼は旅人なのだ。
若い頃、そうでありたいと思っていた。
ちょっと小金が貯まったら、ふらりと出かけて。そこで仕事してもいい。しばらく暮らして、また心の赴くまま居場所を探しに行く。
そんな時間を過ごした事もあったが、結局は定住に落ち着き、やる事も増えて、旅になど出られない環境に身を置いている。それもまた、自分の選択だから、後悔はないけれど。
今、旅人であろうとする彼を、見ていたいと思う。
どんな旅をしてるのか、時々土産話を聞いてみたい。そしていつまでも彼が、旅人で居られたらいいと思う。少なくとも、彼が望む間は、好きなように旅が出来たらいい。
そして私ももう一度、行ったことのない場所に足を向ける楽しさを味わいたいと、願い続けている。
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