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父が異世界アニメを見た話

前提を言うと、私の父はとにかく現実主義者だ。
政治に強い興味を示し、なおかつバラエティが好き。
ドラマも見るがドラマの内容に興味を抱かず、ただ流しているだけという状態。
それでも、金が絡む半沢直樹といったドラマは好きな方だ。
そんな父は今日この頃まであまりアニメを見たことがない。
子どものころにテレビでやっていたアトムを見たりはしたし、クレヨンしんちゃんは好きらしい。
だが、ドラえもん、アンパンマン、ましてやディズニーなどほとんど知らない状態だ。
ポケモンも「カイオーガって言うのが見た目好きだよ」というが、元々は弟が好きなポケモンだったのでその流れで好きになったため、カイオーガのゲンシカイキも知らなければカイオーガが映画に出ていたことすらも知らない。
そんな父が、ある日私に連絡を入れてきた。
「ねこちゃん、異世界食堂って知ってる?」
私は当然おったまげた。

異世界食堂は私たちの世界にある洋食屋が週に1度異世界と繋がり、異世界の人々が私たちの食事を楽しむ異世界物アニメだ。
来客のそれぞれにお気に入りの食べ物があり、来客はその食べ物で名前を呼び合っていた。
種族は人間の他、リザードマンや吸血鬼、エルフなど様々な種族がおり、それぞれが料理に舌鼓を打つという平和な作品だ。
一応異世界側にはこれこれこうという種族差別的なところはあるが、飯どころではそんな差別すらない。
とにかく平和かつ美味しそうな作品だ。
私も弟に言われて異世界食堂を見た挙句、弟が「俺異世界食堂のエビフライが食べたい」と言われてわざわざエビを買って作りに行ったものである。
作り方は異世界食堂を見ながらだ、オムライスも作った。
私たち姉弟は当然ながらアニメが好きで、ジャンルは違えどアニメを共有、お勧めし合う仲だ。
そんな中、父親がアニメを、まさかお互いが見ている深夜アニメの名前を出してくるとは到底思えなかった。
弟が入れ知恵をしたのかと勘繰ったのだが、どうやらそうではないらしい。

名前は伏せるが、関わっている制作会社の1社がどうやら父の会社の隣らしい。
父の会社はビルの1室を借りており、そのアニメ会社も同様にビルの1室を借りていた。
私は父の会社の詳細を知らないが、どうやら父の会社内にはトイレがなく、共同トイレがあるらしくそこでアニメ会社の方と仲良くなったらしい。
父は私たちのアニメ好きを知っていた為、アニメを作るという仕事に興味はある物の、本人が見ないので一体どういう作り方をするのかもあまり理解はない。
でも興味はあるらしい。
持ち前のズカズカ踏み入るスタイルで会話をしたところ、アニメの色々を教えてもらったそうだ。
その際に、「異世界食堂」を知ったらしい。
教えてもらったからには本編を見なければ、と母と共に異世界食堂を見て、その世界観や描写に惚れ込んだ、ということになる。
異世界食堂の食事シーンは、異世界の謎の生き物を食べるわけではなく私たちの身近にある洋食を食べるので、アニメをあまり見ない父親にもとっつきやすかったのだろう。
何より料理の描写が余りにも美味しそうでたまらない。
私も深夜に見て腹をすかせたものだ。洋食の、日本食にはないこってりとしたような、脂と肉を使った料理には心躍る物がある。
「自分たちの食べている食べ物が見知らぬ誰かにとって美味しいって言ってもらえてるみたいで嬉しいね」
とのことだ。
異世界食堂の客にはそれぞれ理由の描写がある。
例えば、異世界食堂に繋がる扉を「宝」としてそれを求めたトレジャーハンター。
国から国への移動の際、空腹により倒れそうなところで立ち寄った。
またある時は国を追われ逃げるときの隠れ蓑に使用させてもらったり。
その多くは再び立ち寄り常連になる。
弟はエビフライの回が好きだが、父親はカレーライスとかつ丼の回が好きだと言っていた。
父親は娘と息子の好きなアニメを知って嬉しくなり、喜々揚々と話してくれたのだと思うと嬉しく思う。
とにかく一気見したらしい。12話全て休みを使って。
なんなら2週くらいしたらしい。
アニメ会社の人に「アニメ見ましたよ、面白かった」と伝えるととても喜んだという。
今このアニメ業界で見てくれた人の直接の声を聞くことはほとんどないと思うので、こういった年配の人でさえもアニメを楽しく見てくれるといった感想は励みになってくれるのだろうか。
なってくれたらいい。

月日は過ぎ、ある日。
「異世界食堂2期やるんですよ」という話が父の耳に入った。
その話、実は何処にも公表されてなかった。
アニメ会社のみが知り得ることが出来る話だ。
父と親しくしてくれていた方が直接父に教えてくれたのだ。
父は当然楽しみにしていたし、父の話を聞いた私たち姉弟も大好きな異世界食堂の2期が始まると知りとてつもなく喜んだ。
いつの間にか母親もファンになっていた。
当たり前だが、この話は門外不出の情報のため、情報解禁がされるまでは発信や誰かに言う事も禁止された。
当然誰にも言っていない。私は。弟は知らない。
しばらくして公式から正式な発表があった際、家族総出で喜んだ。
異世界食堂が見れる、というよりも父が知り合ったアニメ会社が活躍する。
その事実に喜んだのかもしれない。
もちろん、異世界食堂2期も家族全員で見させてもらった。
リアタイは深夜のため出来ないが録画をして弟と両親、私は遠方から見させてもらった。
相変わらず食事シーンが美しく描かれており、その前後の話も含めて「ほっこり」する物語が多い。
本当に面白いアニメだった。家族の中で共通のアニメ話題はクレヨンしんちゃんと異世界食堂になった。

会社のことは、会社に不条理があると困るので避けさせてもらうが、今後もこの会社の作品がもっともっと増えることを祈っている。
父の知り合いで居てくれてありがとう。私たちはアニメを見て円盤を買ったりして応援することしかできないけれど、御社の作品があって私達家族は楽しく過ごせている。

アニメは素晴らしいものだ。近年「これだからオタクは!」と言っている人たちはアニメすら観ずに酷評している人が多いのかと思うくらいだ。
一度偏見をなくし、自分の肌に合ったアニメを探してほしい。
それは別に今の美少女が出ているアニメでなくてもよい、ドラえもんやポケモンだっていい。
なんならアンパンマンでもいい、アンパンマンはああ見えてかなり深い。
とにかく、偏見を取っ払う事が大事だ。
「この絵、好きかも」だけでいい。何なら異世界食堂を見てほしい。
異世界食堂は良いアニメだ。お腹もすくしレパートリーも増える。

さて、腹が減ってきたので昼飯でも作ろう。
何を作ろうか。

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