希望を持った僕らは今、消えない虹なんだ。

単刀直入に言おう。
私はあまりアイドルが好きではなかった。

これは私の偏見も多分に含まれているが、アイドルは顔がカッコよくて(可愛くて)、ダンスも完璧で、夢に溢れた歌詞をキラキラした目で歌って、未来への希望を振りまいている。
ファンはライブにはとびきりのおしゃれをして、写真とメッセージを貼り付けたうちわを持って参戦して、キラキラした眼差しでアイドルを見つめる。

私はそんな輝かしい空間をどうも嫌厭してしまう。自分の部屋に好きなものを集めて引きこもっているような性分だし、ドロドロしていて、道を踏み外しているような歌の方が人間らしくて好きだ。それに希望なんて目に見えないものにすがるよりも、世の中そんなうまくいかないでしょって、現実を見せてくれた方がよほど共感が持てる。

しかし数年前、私は二次元のアイドルにハマってしまった。
そのコンテンツの名は「アイドリッシュセブン」。
宣伝CMのキャッチコピーは「アイドルのリアルが、ここにある。」だ。


このコンテンツは音ゲーム(スマホアプリ)からスタートした。プレイヤーは音ゲーをやり込みながらアイドルたちのレベルを上げていく。そしてレベルが上がるとストーリーが解禁され、IDOLiSH7というメインとなるグループのマネージャーとしての立場からそれを読み進めていく。
その人気は年々上がっていき、今やアニメも展開され、担当声優によるライブや、プロの楽団によるオーケストラ公演も行われている。
まぁアイドル育成ゲームといえば可愛いものだが、IDOLiSH7のグループメンバーはほとんどが何かしら複雑な家庭環境で育っており、ことあるごとにその過去に苦しめられる。
そしてそこに加わる新たな困難の数々。登場人物は皆悩みを抱えてそれでも活動を続けていく。もちろんシナリオライターさんが書いた作り物のストーリー。しかし私の中のアイドルキラキライメージは見事に崩れ去った。
読んできて苦しい内容も多いが、それでも人々を惹きつける要素となっているのが、彼らが悩み抜いた先には必ず「希望」があることだ。
困難を乗り越えたアイドルたちは成長し、絆を深め、また前を向いて歩いていく。
そんなアイドルたちに自分を重ねて勇気をもらう人も多いのではないだろうか。そしてそんな彼らに比例するようにアップデートされていく楽曲の数々。これは読み手が熱狂するのも無理はない。


そしてアイドリッシュセブンは今年アプリリリース7周年を迎えるわけだが、その一発目のイベントとして、1月22日、23日にIDOLiSH7単独ライブ「IDOLiSH7 LIVE BEYOND “Op.7”」が開催された。

このご時世にライブを開催するにあたっては、どうしても新型コロナウイルスの感染状況と向き合わなくてはいけない。
開催発表は第5波が落ち着いてきた頃だったが、年明け以降オミクロン株の急拡大により状況は一変する。
もともと配信、ライブビューイングが設定された公演ではあったが、最終的にチケット払い戻し対応を行なった上で有観客で開催されることとなった。
私は一日目ライブビューイング、二日目は現地で参加したが、開催するに当たっても、参加するに当たってもあのライブに関わるすべての人が悩んで結論を下して、それぞれの場所で見届ける形になったのだと後になって思う。

ここには2日目、現地に行った時に個人的に印象に残ったことを記しておく。私は所用で開演から15分ほど遅れて会場に入った。
アリーナ席だったのだが、会場となったさいたまスーパーアリーナではスタント席の入り口から入り、階段を1番下まで降りてスタッフにチケットを提示し、アリーナエリアにたどり着いた後に自分の席を探すという流れになっていた。

会場に着いたのはちょうど最初のMCの時間帯。建物の中に入った時、四葉環役のKENNさんの声が高らかに響いていた。
そして扉を開けて会場に入った瞬間、目に飛び込んできたのは七色のペンライトの灯りだった。
その光景は、かつてメットライフドームで見ていたもの。私はたくさんの灯りをくぐり抜けてアリーナ席へ向かう。そのペンライトは大好きなアイドルたちに向けられたもの。声は出せなくとも光が揺れるたび伝わる、高揚感、期待。会場が半野外から室内に変わり、人工的に照明を落としていることでその灯りはこれまでよりも綺麗に私の目に映った。
そしてライブがなかなかできない世の中で、開催できたことを証明する燈でもあった。
アリーナエリアに降り立つと、今度は上から降り注ぐたくさんの光が見えた。またここに帰ってこれた、という気持ちがぶわっと溢れて、席を探しながら泣きそうになった。

そして一番最後のMC。声優さんひとりひとりが、このライブに対しての想いを語ってくれた。
本当に開催できるのか、不安になって兄さん(和泉三月役の代永翼さん)に相談した、でもそれは杞憂だったと気づいたと、和泉一織役の増田俊樹さん。
ライブは不要不急じゃないと言ってくれた逢坂壮五役の阿部敦さん。
不確かなことを言うのは好きではない、でも虹が消えないと彼らが言うなら本当にそうなんだと、そしてまた会いましょうと言ってくれた六弥ナギ役の江口拓也さん。
全ての人の決断を肯定して、みんなそれぞれに拍手しよう、って言ってくれた七瀬陸役の小野賢章さん。
(※阿部さんは1日目のMCです)

この二日間のために準備をする中で、それぞれがどれだけ悩んで苦しんでいたんだろう。胸がぎゅっと痛んだ。
コロナ禍で新しいことをやるのにはどうしたって感染リスクがつきもので、批判されてしまうこともある。そんな状況だと自分の存在意義すら見失ってしまうこともある。
でもそんな苦しみを乗り越えて、7人はステージに立って、参加した私たちを肯定してくれた。
私の中で、これらの出来事はゲームのストーリーと重なった。無事開催できたこと、あの景色をみんなでまた見られたことが、これからもアイドリッシュセブンは続いていくんだという確信に変わった。

そしてこのライブのタイトルにある「LIVE BEYOND」には「超えて生きる」という意味があるそうだ。このコロナ禍を超えた時、きっとまたアイドルの名前を叫んで想いを伝えられる日が戻ってくるだろう。そのときは会えた喜びを声が枯れるくらい叫びたい。またみんなで集まって、あの景色を作りたい。それはきっとアイドリッシュセブン関わる全ての人が持つ、七色に輝いた消えない願いだ。
そしてあの日、その願いには希望と名がついた。希望はアイドルが振り撒くものではなく、アイドルとみんなで作るもの。あの日作って持ち帰ったものを、これからも落とさないようにぎゅっと抱きしめて生きたい。


P.S.
最後になりますが、開催に向けて奔走してくださった全てのスタッフの皆様、ステージに立ってくださった声優の皆様、本当にありがとうございました!これからもついていきます!


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