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neko's note #5|ビジネスモデルの分析について

 銘柄の分析において必要になる要素はいくつかありますが、欠かせないのはビジネスモデルの分析です。

 ビジネスモデルが把握できていないと正しい観点での財務分析ができませんし、市場や競合の分析をしても正しい示唆が出せませんので、このビジネスモデルの分析無しに企業分析な成り立たない訳です。

 本日はこのビジネスモデルの分析について普段考えていることを書いていこうと思います。ただ色々網羅的に書こうとすると抽象度が高くなり過ぎてしまうので、ハイテク企業を分析することをやや念頭に置いた記事としたいと思います。

※本記事は全て無料でお読み頂けますが、本記事に価値を感じてくださった場合は投げ銭頂けますと幸いです。

1.ビジネスモデルとは?

 さて、そもそも「ビジネスモデル」とは何でしょうか?要はどんな仕組みでビジネスを行っているか、という事なのですが、Googleで「ビジネスモデル」と入れて調べると掴みどころの無い説明が凄い沢山出てくると思います。具体例を挙げて説明するつもりはありませんが凄く分かりにくいですし、実際に新規事業の企画などを行ったことがある方などで無いとピンと来ないと思います。

 何故分かりにくいか。それはこのWeb上に溢れている「ビジネスモデル」という言葉は全て「ビジネスモデル」を作る人に向けた説明だからなんですね。
 私は「ビジネスモデル」はアートの世界だと思っています、数千・数万の要素を組み合わせて強靭なビジネスモデルを立案していく事になりますので、作り方としてはそんな簡単な説明で済むものではないんですね。

 ちなみに良いビジネスモデルをスラスラ作れる人は世の中にたまにいて、そういう方がビジネスモデルの考え方の説明をすると以下の絵と同じ事が往々にして起こります。

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 「お客さんの喜ぶことをすれば良いんだよ!」と説明されることも多いんですが、そんなのが簡単に考えられたら誰も苦労しないです。
 一つ有名なビジネスモデル作成のフレームワークとしてビジネスモデルキャンバスというものがありますので、興味のある方はWikipediaの説明も含めご覧になってみてください。

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 さて、そんな作る側の話はさておき、分析する側となるとかなり話はシンプルになってきます。私が分析の際に見ているのは大きくは次の4点に集約されます。

【分析の切り口】
①何を?(どの様な価値を?)
②どの様に作り?(あるいは運営し?)
③誰に対して?(どの様なニーズがある人に対して?)
④どの様に売っているか?

 また上記の点を一つずつ考察していくにあたって注意をしているのは次の4点です。

【着眼点】
A) 差別化要素や参入障壁は何か?
B) 事業にスケーラビリティはあるか?
C) 将来的に利益が出る収益構造か?
D) ビジネスの制約条件は?

2.ビジネスモデル分析の切り口

①何を?(どの様な価値を?)
 先ずは基礎になるのはここですね、そもそも何を提供している会社なのか、どの様な価値をお客さんに提供している会社なのかを把握する事が一番重要です。
 toBのビジネスだとここが比較的分かりやすい会社が多いのですが、toCのビジネスになってくると、感情的な部分に訴求する様なサービス・プロダクトも多いですし腹落ちするまで調べるのがやや面倒だったりするのですが、逃げずに調べましょう。日本で体験できるサービスやプロダクトであれば必ず一度は触ってみる事が重要です。

 一つ気を付けなければいけないのは「ユーザー」と「顧客」が違うケースがある事かなと思います。例えばFacebookやSnapchat、Pinterestなどは「ユーザー」は一般消費者ですが、お金を払う「顧客」は企業のマーケティング部門になります。
 「ユーザー」に対する価値と「顧客」に対する価値は往々にして違うこともありますので、その点も忘れずに考慮する事が必要です。

②どの様に作り?(あるいは運営し?)
 これは主にはコスト構造を把握するという意図の切り口です。SaaSであれば比較的話は単純ですが、製造業の場合は自社製造なのか、製造を外出ししているのかによってコスト構造も変わって来ます。
 また事業のスケーラビリティにおいても変わってくる部分がありますので、その観点でも見ていく必要があります。

③誰に対して?(どの様なニーズがある人に対して?)
 この問いは①の裏返しだったりもするのですが、そう単純に言い切れないケースもありますので、調べる会社のプロダクト・サービスを買う人の気持ちになって一度想像して見る事も大切です。
 また、地理的なカバレッジもちゃんと見ておきましょう。米国内だけなのか、世界全体なのか、英語圏だけなのか、などによって将来的なスケーラビリティも変わって来ます。

④どの様に売っているか?
これは売り方の話と課金方法の話があります。

 売り方について。SaaSであれば、営業マンが売りに行ってしっかりとインプリをサポートする事まで必要になるのか、セルフサーブ型で顧客側が勝手に購入していくのか、などです。
 営業がしっかり必要なプロダクトよりも、セルフサーブ型のプロダクトの方が成長率の上限が高くなりやすい傾向にあります。セルフサーブ型の典型的な例がZoomです。

 課金方法としては広告収入モデルだったり、サブスクリプションモデルだたったり、従量課金モデルだったり、色々な方法があります。
 またフリーミアム的に顧客に使わせるモデルだったり、Rokuの様にデバイスは利益ゼロで安く売ってユーザー増加を優先するモデルだったり、色々と特徴がありますので、それを把握しておく事は特に財務分析の際に重要になります。

3.ビジネスモデル分析の着眼点

A) 差別化要素や参入障壁は何か?
 ハイテク企業の場合は市場に数多くのプレイヤーが後発で新規参入してくることも多いですし、超大手企業が突然その分野に参入してくることも有ります。
 そのような事が起きたとしても、しっかりと自分のシマを守り、かつ競合を駆逐して勝者になれるだけの差別化要素や参入障壁があるのかは重要な視点です。
 ネットワーク効果がある、絶対に真似できない技術を持っている、絶対的なブランド力がある、などといった事がそれに該当します。

B) 事業にスケーラビリティはあるか?
 グロース銘柄であればスケーラビリティは非常に重要です。今後規模が大きくなっても成長率が維持できるのか?また加速できるビジネスモデルにそもそもなっているのかどうかは非常に重要です。

C) 将来的に利益が出る収益構造か?
 グロース銘柄は利益が出ていないことがほとんどだったりしますが、将来的に利益が出得る収益構造になっているのかをざっくり見ておくことも重要です。詳細は財務分析でも見ていくことにもなりますが、極端な話SaaSなのに粗利率10%とかだと将来的にもしっかりとした利益が出る可能性も低くなってしまいますよね。

D) ビジネスの制約条件は?
 その会社のビジネスの制約になりうる条件が無いかも見ておくことが必要です。結局は事業のスケーラビリティと同じことを見る事になるケースもあるのですが、この視点で見ると少し違ったものが見えてくることもあるので、私はこの視点も重視しています。

 例えばZoominfoの場合、個人情報を扱うビジネスですので、米国外への進出は結構大変だったりもします。
 あるいはPelotonなどの自社でプロダクトを製造する企業の場合は自社の生産能力が制約条件になったりもします。

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一旦以上ですが、このテーマは自分の頭の整理にも良いので、このnoteは都度追記・更新をしていくかもしれません。

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