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neko's note #7|対象市場の分析

 なんだか久しぶりにnoteの執筆をしています。11月中旬にワクチン承認の兆しが本格的に見え始めたことでグロース銘柄の潮目が変わり、色々と銘柄選定をしなおしたり、続けざまにAirbnb・Roblox・Doordash・Wish・Ozon・C3.aiなどなどの注目IPOがあったりと記事の執筆の時間が中々取れない1か月でした。

 今回は分析をしようとする銘柄が対象としている市場の分析、という観点で普段考えていることを書いてみたいと思います。

0.分析の観点

 市場の分析、というのは色々な視点があります。現時点の市場規模だけを見れば良いという話でもないので、普段個人的に気にしている観点をいくつか挙げさせていただきます。

1.市場規模
2.市場の成長性/ポテンシャル
3.マクロ環境
4.競合企業
※もちろん上記に限らず色々な視点があります

それぞれ簡単に説明させていただきます。

1.市場規模

 これについては調べる必要性というのを語る必要は無いですね、市場の調査/分析といった際に先ず思いつくのは市場規模という観点かと思います。
 どれくらいの規模感の市場に対して、どの程度の時価総額が付いているのか、そのバランス感を見ておくことは一番重要な視点です。

 ただ一方で注意が必要なのは「市場規模」とは一般的には現在の対象企業の売上の総和であって将来のポテンシャルを加味している数字では無いということです。Googleで検索すると多くの場合は調査会社のレポートが出てきます。詳細は基本有料ですが、概要であれば無料で公開しているケースが多いので一度調べてみましょう。Statistaというサイトもオススメです。

 一方でこれまでに無かったビジネスを展開している企業の場合、比較対象となる「市場規模」がそもそも存在していなかったりもします。その際に調べる必要が出てくるのはTAMという概念になります。TAMとはTotal Addressable Marketの略語で「タム」と読みます。

 TAMとは「自社の行っている事業がしっかりと市場の認知を得て、かつ自社がシェアを100%取り切った場合の年間売上高」の様な意味合いで定義されることが多いかと思います。最近のテック企業の場合は目論書にTAMを記載しているケースが多いように思います。Airbnbも目論見書の中でTAMを公開していたりします。

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 TAMを公開している場合はどの様なロジックで計算されているのかを目論見書や決算書などで詳細に説明している場合が多いのでそれも合わせて読み込むようにしましょう。TAMとはその企業が独自に試算した数字に過ぎないため、ロジックが納得いくものなのか自分でも考えてみることが大切です。

 またどの切り口で「市場規模」を見るのかも重要になってきます。例えば不動産取引のプラットフォーマーについて調べる際に不動産販売そのものの市場データだけで判断しても仕方無いですよね。とはいえ不動産プラットフォーマーの「市場規模」のデータはほぼ存在しないと思いますので、自分でテイクレートなどの数字を調べて持ってきて、自分でマーケットの試算をしたりすることも必要になってきたりします。

 いずれにせよ調査対象としている企業のビジネスモデルと市場規模の定義をしっかり見比べて正しくそれが対応した数字になっているのかを見る事は大切です。

2.市場の成長性/ポテンシャル

 グロース株に投資をする様な場合には現在の市場規模よりも、今後その市場がどの程度成長していくと見込まれているのか?の方が重要だったりします。これについても「市場規模」と合わせて調査会社のレポートで言及されているケースが多く「将来●年に渡ってはCAGR●●%で成長を続ける」といったレベルであれば調査会社のプレスリリースで無料で読めるケースが多いので調べてみる様にしましょう。

CAGR = Compound Average Growth Rate
年平均成長率のことで「ケイガー」と読んだりします。

 注意点としては過去の成長率よりも今後の成長率の予測の方が大切なので将来予測の方をしっかりと調べる様にしましょうといったことでしょうか。

 また成長率を見る際には、調査対象の企業が市場の成長率を超えて伸びているのかどうか、といった所も視点として大切だと思っています。
 市場全体よりも速く成長しているのであればその分競争優位性があるのかもしれない、といった仮説が立てられるのかなと思います。

3.マクロ環境

 市場規模や市場の成長性の数字も重要ですが、市場に影響を与えるマクロ環境についても調べる必要があります。これについては有名なフレームワークがあり、PEST分析・PESTLE分析・外部環境分析など色々な呼ばれ方があります。PESTやPESTLEは分析の観点の頭文字を取った言葉です。

【PEST/PESTLE】
P = Politics(政治)
E = Economics(経済)
S = Society(社会)
T = Technology(技術)
L = Legal(法律)
E = Environment(環境)

Politics(政治)
 各国の政治動向がその市場に対してどの様な影響を与えるのか?といった点での分析です。最近ではワクチンのワープスピード計画や、バイデン氏によるクリーンエナジーへの投資計画、米中関係の方針、米国でのテレヘルスの推奨、各国でのEV化推進、など色々な要素があります。
 「国策に売り無し」という格言があるように、特に国の政治動向は時に凄まじい影響を与えますので、必ずキャッチアップする必要があります。

Economics(経済)
 
これは経済状況についてですね。国全体として不況なのか好況なのか、長期金利はどうなっているのか、インフレなのかデフレなのか、人件費はどの様に推移しているのか、失業率はどうか、などといった観点がありとても重要です。

Society(社会)
 
社会、と書いていますが、私は文化的な背景がその市場にどの様な影響を与える可能性があるのか?という観点で見ることが多いです。
 コロナにより人々の行動パターンはどの様に変わるのか、各国では文化的・社会的背景からどの様なサービスが好まれるのか、などなど色々と見えてくることもあるかと思います。

Technology(技術)
 
テクノロジーが市場にどの様な影響を与えうるのか、ディスラプトを起こしうる技術はあるのか?というのも重要な視点ですね。
 テック株に投資する場合はむしろここが分析の中心になるかと思いますので「市場分析」の文脈で調べるというよりも、個別に分析テーマとして切り出して深堀りする必要があるかもしれません。

 Legal(法律)
 
法律、という観点で見る事も重要です。一部Politicsと被る面もありますが、例えばZoominfoの様な個人情報を扱い得るビジネスや、広告ビジネスなどでは法律による規制というのも重要になってきます。
 何か市場に影響を与えうる法律が存在しないか、新たにできる可能性が無いかは簡単に見る必要があります。

Environment(環境)
 環境についてはテック株を調べる際はあまり論点にはならないのですが、一応。フェアトレード的な観点だったり、CO2の排出規制だったり、などなど市場に影響を与える様な世論や法律などが無いか、です。
 クリーンテック系銘柄の場合は、場合によってはメインの論点となるかもしれません。

4.競合企業

 市場規模や成長性、マクロ環境に加えてもう一つ重要な視点としては競合企業の調査があります。競合企業を見る視点としては個人的には主に以下の様な視点があります。

・競合企業はどの程度の数いるか?(もちろん未上場企業含め)
・圧倒的に強い競合企業が存在するか?それとも皆横並びか?
・圧倒的に強い企業がいる場合、その企業の強みは何か?
・新規参入のハードルはどの程度の高さか?
・代替となるサービス/製品を提供する企業は存在するか?

 対象とする市場によって細かい論点は変わってくるのですが、大きくは上記の様な視点で競合企業を調べることが多いかなと思います。

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