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neko's note #3|対象企業の全体像の把握

 私が普段企業の分析をする際にまずはじめに行うのは、分析対象とする企業の「全体像の把握」といった作業になります。ある程度知っている企業の場合はそもそも飛ばすこともありますが。

 どの様な事業をやっているのかという所をざっくり把握するのは通常あまり時間も掛からないですし、誰でも最初にやることだと思いますが、それ以外の部分についてザックリと目線を持つ事はその後の作業のスピードアップにもつながりますし、重要な論点を落としてしまう可能性を減らしたりすることが出来ます。

1.Check Point

 対象企業の概要を掴むために私が普段意識して調べようとしている項目は大まかには次の項目です。

【Check Point】
①主要な事業内容と主な競合企業
②本拠地の国と海外で事業展開をしている国
③創業/設立年とその経緯
④創業者/経営陣のバックグランド
(創業者が複数の場合は創業メンバー間の関係性も)
⑤上場前の株主構成
(有名なVCやエンジェル投資家がいるか?)
⑥売上規模と成長率
⑦利益水準(粗利・営業利益・EBITDA・最終利益)
⑧アナリストのレーティング
⑨上場来または年初来の株価の推移
⑩時価総額とマルチプル

 当然対象となる企業によって調べる項目の濃淡は付けますし、追加で事前に調べる項目もあるのですが、だいたいは上記を一通り調べると経験則的には概観は把握できるかなというイメージです。

 意外と見落とされるのが、③~⑤あたりの項目です。この辺りを事前に調べている/いないで後段のプロセスで出せる示唆がかなり変わるケースもあったりします。

 例えば、Seaの例でいくと、最初の段階でTencentが創業当初にかなりの金額を出資していた事を知っているかいないかで、Seaの直近の行動パターンへの理解がかなり変わってきます。
 Seaは創業当初はTencentのゲームコンテンツ展開の出島的な立ち位置だったのですが、最近は独自ゲームコンテンツの展開やEC/金融サービスの推進によりTencentからの独り立ちを進めている、といった事を理解できているかいないかで見え方も変わってくると思います。

 またRokuの例でいくと、実は元々Netflixの一部門として事業展開する予定だったものの、NetflixのCEOの考えで、中立性を目指してRokuがカーブアウトされ独立したといった創業背景を知っていると、Rokuのアイデンティティの根幹はコンテンツベンダーからの中立性という事が分かったりします。
 コンテンツベンダーからの中立性があるということはAmazonなどと比較して、他社ベンダーとのアライアンスが進みやすい可能性が高いのではないかといった仮説を分析初期の段階で持てたりします。

 創業メンバーを調べておくと、という例でいうとOktaがあったりします。Oktaの場合は創業メンバーがSalesforceの元同僚で、SaaSビジネスの肝を理解できていた事や、SaaSが浸透した場合に権限管理が問題になる事をかなり早いタイミングで見通せていた事が成功の一つのポイントだったりした訳です。

 この様に企業の背景を理解できているといった事は、時にかなり重要になったりしますので、本格的な分析に入る前にこの辺りも一通りざっと調べておくことをお勧めします。

2.情報ソース

 この最初のプロセスを如何に素早く回せるかによって、分析作業全体のスピードもかなり変わってきますので、どの情報ソースを見ると上記のことが把握できるのかを知っておくことも重要です。

【情報ソース】
・企業HP/IRページ、アプリのダウンロード
・決算書/決算説明資料
・S-1/F-1/424B4(目論見書)
・Wikipedia
・Seeking alpha
・US版Yahoo! Finance
・ブロガーの方々の分析記事
など…

 他にも色々ネットサーフィンで探すこともあるのですが、私の場合は大抵上記を一通りざっと見まわして完結することが多いです。意外とWikipediaのも情報ソースとしては侮れなかったりします。情報の正確性には注意が必要ですが。

 順番としては先ずはブロガーの方々の分析記事やWikipediaを見てざっくりと概要や背景を把握、企業HP/IRページを見に行き実際にサービス/プロダクトの説明を見て、Seeking alphaやYahoo Financeで財務情報とレーティングを把握、最後に必要であれば決算書/目論見書を流し読みする、といった手順になります。これを一周すると上記の項目はほぼ抑えられます。
 よほど重要な情報が得られなければ追加で調べたりすることもありますが、ここまで見て得られない情報は無視することが多いです。

 日本からでもアプリなどがダウンロードできる様であれば実際にダウンロードして使ってみるのも重要です。

 ちなみに、この段階でEarnings Callを聞いたり/読んだりしても話が理解できず時間がかかりすぎる可能性の方が高いので、このタイミングではEarnings Callは見ないケースの方が多いです。

 上記以外で最近見る様になったのはStrainerの会社紹介ぺージや決算マンさんのnoteですね。この辺の情報ソースも凄く分かりやすいです。

3.注意点

①メモを取りながら進めること
 
慣れてくると、上記の調査を頭の中で情報整理しつつ進められる様になるのですが、最初のうちは1つ調べるとさっき調べたものが頭から抜けていくといった現象が起きると思います。(誰でもそうです)
 なので、最初に書いたチェックポイントをメモ帳やPCのテキストエディタ上に書き出し、チェックポイントごとに何が分かったのかをメモしながら進めることをお勧めします。

 一通りのポイントのチェックが終わったタイミングで書いたメモ全体を振り返り、その後の分析で何を重点的に見る必要があるのかのアタリを付けられるとベストかなと思います。

②深追いしすぎないこと
 もう一つ重要なこととしては、この段階で深追いしすぎないことです、軽く調べて分からなければ飛ばしていくといった割り切りも必要です。
 ケースバイケースではあるものの、私の場合は大抵30分~1時間以内を目安として、それで終わらなければ後段の本格的な分析の際の積み残しとして残しておくイメージになります。

 慣れないうちは2時間くらい掛けても良いのかもしれませんが、この段階では深く理解することは過剰に求めず、ざっくりと理解できるレベルで良いのかなと思います。

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だいたいこんな感じですかね。次はForm S-1の読み方について書いてみようかなと思ったりしています。

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