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戸山公園・箱根山

 前回、山神隧道というテーマでnoteを書いた。
 そんな感じで私と心霊スポットというテーマだと語り始めは山神隧道だったわけだが、では私が初めてそれと意識して赴いた心霊スポットはどこか、となると戸山公園の箱根山になるだろう。

 以前から松原タニシさんやありがとうぁみさんが心霊スポットに赴いているのを見ており興味は持っていた。
 いかにも怖そうに見えるこの場所はどうな場所なんだろう、行ってみたらどうな雰囲気なんだろう、何かが起こるのかな?
 そんなことを想像してちょっと行ってみたいな、とは思っていた。
 しかし心霊スポットビギナーにとって、山の中とか森の中、遠隔地にあるような心霊スポットはいかにもハードルが高い。

 どこか手頃なスポットはないか?
 そんなことを思っていた頃に、新宿に有名な心霊スポットがある、という話を見かけた。

 新宿なら私の住んでいるあたりから電車で一本である。
 さらに新宿なので森とか山とか、そういうワンミスでえらいことになるような状況でもないはずだ。

 そう考えた私は、戸山公園という場所に向かった。

 この公園、江戸時代に尾張徳川家の下屋敷・外山屋敷があった場所で、火事で消失した後に明治期に陸軍戸山学校が建設され、その後米軍の接収を経て公園化された場所である。
 外山屋敷が転じて戸山となり、現在の戸山公園という名に繋がっているわけである。

 そういう経緯がある場所なので、まあ色々と噂のある場所なわけである。
 古くは江戸後期に記された雑話集「耳嚢」にて、外山屋敷の怪談として噂が記されている。
 いわく、この屋敷の庭の奥に社があり、そこには邪神を封じ込めており、江戸幕府の役人が実際にそこで恐ろしいものを見たのだという。
 この話は実際に写真を封じ込めていた、というよりは時の尾張公が外聞の悪いものを閉じ込めていたものを、幕府の役人が口裏を合わせたものだというが、そういう話があることは確かなわけだ、
 さらに時が流れ前後になると、1987年に厚生省の戸山研究庁建設現場で大量の人骨が見つかり、一説ではそれは731部隊による人体実験の犠牲者のものであると噂されているのだという。
 特にかつて外山屋敷の築山だった「箱根山」で心霊現象の噂が多く語られている。

 そんな場所に、まだ夜も遅くなりきらない21時だとか22時くらいに訪れた。

 戸山公園というのは、東京都新宿区の戸山と大久保にまたがる公園である。
 きちんと整備された都市公園で、周辺にも住宅が多く立ち並ぶ場所で、いわゆる心霊スポットというような怖さや暗さは全くない。
 そんな中、とりあえず戸山公園で一番噂のある箱根山を目指したわけだ。

よくわからないままうろうろうして、やがて箱根山を発見し、石段を登る。

 登ってみて驚いた。
 人がいるのだ。
 いくら戸山公園が新宿にある公園で、ここが全然暗い雰囲気がない場所であるとはいえ、夜の公園にある丘である。
 夜にこんなところに人がいる?

 箱根山の頂上は平らになっており、ベンチなども置いてある。
 東西に一個ずつあるベンチの、その東側に髪の長い女性と思われる人物が座っていた。

 (こんな暗がりに女!?)
 と、驚いてしまった私は、頂上についたそのまま、反対側の石段から箱根山を降りていった。

 その時はツイキャスで配信もしていたので、視聴者に対して「なんか人いた、なんか人いた」と小声で呟きつつ状況を説明する。
 視聴者は当然興味津々で「もういっぺん行ってみろ」とか「ほんとに人だった?」とか好き勝手いうわけだが、ほんとに人だからこんなにびっくりしてるわけである。

 個人的に心霊スポットに行っていて一番怖いのは幽霊や獣ではなく、不意に人に出会った時である。
 元々こっちは人なんか来ないような場所に好き好んで行っているわけで、そんなところにわざわざいるやつなんてろくなもんじゃないだろう、という偏見があるわけだ。
 まあ、これについては自分にも当てはまるので自分のことは棚にあげて、ではある。

 箱根山について全然見れていないので、また行かざるを得なくはなるだろう。
 とはいえ少し時間を置いておきたい。

 そこで前にありがとうぁみさんが心霊写真を撮ったという公衆トイレを探すことにした。
 

 探してみると、箱根山のすぐそばにそれはあった。
 外からトイレの窓を映すと心霊写真が撮れた、という。
 自分でもここかな?と思うようなアングルで写真を撮ってみるが、まあそんなに簡単にそれっぽい写真は撮れないわけで。
 まあ、こんなもんかな?と思いつつトイレを後にした。

 箱根山にさっき登ってからそこそこ時間が経っている。
 (頂上にいた女性も、もういなくなってるんではないかな?)
 そんなことを思いながら再び箱根山の石段を登っていく。

 頂上に着く、さっき女性のいた東側のベンチを見る……いる。
 まださっきの女性がいた。
 ノースリーブの服を着ている髪の長い……女性?

 え?この人女性なのか?
 なんか肩幅が女性のそれではない。
 ノースリーブから伸びる腕もなんかガサガサしてるように見える。
 いや、これは人……なのか?

 「待ち合わせの人?」
 いきなりそう問いかけられた。

 (は?待ち合わせ?え?ていうか声低っ!)
 その瞬間なんとなく全てを察した。

 (この人、(生物学的には)男だ!)
 「え、いや、違います違います!」
 慌ててそう答え、箱根山を駆け降りた。

 おそらくあの人は、誰かと約束をしてあそこで待ち合わせをしていたのだ。
 だが、なかなかその相手が現れない。
 そこに髭面の男が2回もやってきたので、待ち合わせ相手かと声をかけたのだろう。
 つまり、そういうことをしている人というわけだ。

 もちろん私は待ち合わせなどしてないし、心霊スポットとして以外に箱根山に用はない。
 そそくさと戸山公園を後にし、家路へとついた。


 これが私の心霊スポット初体験である。
 そしてその後、3度戸山公園・箱根山に行っているが、そのたびにQueenの曲を大声で歌う酔っぱらいや、肝試しに大人数で来た若者たちなどと遭遇した、まともな心霊スポット探訪っぽい雰囲気にはならなかった。

 多分、今後また訪れてもそんな感じになるんじゃないかな、と思っている。

多分、それが私と戸山公園・箱根山の関係性なのだろう。

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