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ケア日記ー真夏のシドメ 7月31日

短期記憶が乱れがちな母との生活は5年あまりになります もともとしょっちゅう物を忘れたり、しまった場所がわからなかったりの母親でしたから、80歳をすぎて、物忘れに悩まされるのは仕方がありません

けれど、若い頃はとくべつ気にならなかった母の物忘れがだんだん苦痛になってきました ひとつひとつの物忘れをケアせねばと、なくし物を一緒に探し、忘れた話を繰り返し話して聞かせているうちに疲弊してしまいました  

お医者さんの診察券だって、保険証だって、なくしてもどうにかなる 着るものだって、ほかになにかある 忘れた話だって、何度も繰り返さなくても困りはしない

でもついがんばり疲れてしまった 

それは母がないないと言って探すから、どこだったかしらなんだったかしらいつだったかしらと聞き続けるからだと気づきました 二人暮らしですと会話に逃げ場がないのです

逃げきれないと付き合ううちに、参ってしまい ケアはいらないと強弁する母の言葉をむしろ受け入れるようになりました しばらく書いていたケア日記をやめたのはその頃でした

ケアフリーズです

久々にnoteのケア日記を思い出し、書いてみて、肩の荷がおりたように楽になりました 疲れちゃってケアフリーズ、脱ケアしましただなんてつまらない話でも書くことにはたしかに居場所再発見効果にカタルシス効果があります 

蝉が鳴くのを聞きながら、今年は変な声の鳥がいるのねと話しかけられても、あれは蝉ですと納得するまで説明しなくてもいい

母に向かって事細かに蝉の声の説明をしなくても、わたしはケアを放棄しているんだと罪悪感を感じなくていい ありがたいことです

庭のシドメが咲きました 北条の大軍と戦った畠山重忠が討死した二俣川合戦で大軍の馬に踏み荒され、片割れの実しかつけなくなったという言い伝えがあるシドメの花です 真夏に咲くのは季節外れじゃないかしら

なにを思ったか咲いてくれたシドメの花が愛しくなります

我が家の庭には元気なトカゲとカナヘビがいて、母との会話に疲れたわたしの遊び相手になってくれます 水やりをしようとすると飛び出してきて、逃げもしないのは買い物ぐらいしか外出しないわたしの遊び相手になってくれているのです 彼らとも、もう長い付き合いです

長く生きすぎたわとボヤく母の言葉を背中で聞きながら、聞こえないくらい小さくため息をつき、蝉の声に耳をすませています

出口はないと、でも逃げたりしないとあきらめて、暗くなったら花火でもして楽しい夏を送りたいと思っています

毎度つまらない話にお付き合いいただき、ありがとうございます♪






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