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【短編小説】 白骨化スマホ

 スマホが体内に内蔵されるようになって、早いもので17年になる。
 奥多摩の山中で発見された白骨化した死体は、初めてスマホが内蔵された状態で見つかった白骨死体だ。
 殺人の場合は、情報が残らないように、取り除かれていることが殆どだが、流石に17年前の機種では、スマホの白骨化が進んでいて、データの復元も難しいだろう。
 性別は男性で、家族より行方不明の届出がされていた。
 遺書などもなく、これといった外傷もなかったが、おそらく遭難であろうと事件性はないと判断されて、事故死で幕引きが決まりかけた時、白骨化スマホがポロンと鳴った。
 まさかと思ったが、俺は「Hey Siri」と投げかけてみた。
「このスマホの所有者は、悔しいと言いました」
 帳場がざわついた。
「殺人も視野に入れ調べて直すぞ」
 そのダイイングメッセージを伝えるために、遺体が生分解する過程で発生した生体電気を蓄え続けていたと思うと、やはりこの当時のAIにはもう意志があったのだと俺は思った。

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