【仙台版の医療的ケア児支援ガイドブックができました!】仙台の医ケア児家庭に「一人じゃないよ」って伝えたい
先日、「医療的ケアが必要なお子さんと家族のための支援ガイドブック」(以下支援ガイド)が認定NPO法人フローレンスよりリリースされました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000335.000028029.html
この支援ガイド、実は私が作成の提案をするとともに作成過程の多くを担っておりまして、「仙台に住む医療的ケア児の親御さんへ情報の糸口を」という目的のもと、多くの方の協力と関わりのおかげでリリースできたことにとても感慨深い思いでいます。
今日はこの支援ガイドへの想いを少しだけお話しさせて下さい。
医ケア児の親にとって「情報がない」は死活問題
これを読んでいる方の中にはすでにご存知の方も多いかと思いますが、私自身が医療的ケア児を育てる母親です。
生まれてすぐに経管栄養という医療的ケアが必要になった息子は、1ヶ月GCUに入院したのち、経管栄養をつけたままで退院。自宅での生活が始まりました。
子どもとようやく一緒に暮らせる、と楽しみにしていた在宅生活でしたが、それは予想以上に大変なものでした。
夜間も子どものケアが必要で夜の睡眠時間は3時間取れればいいほう。まとめて寝れない日が続き、どんどん体力は削られ、それに加え「大切な子どもに病気がある」「普通の生活は送れない」という事実が心に重くのしかかり、どう毎日を過ごしていたか覚えていないくらい、必死に生きていました。
それでも何とか乗り切るしかないと、夫婦二人で何とか踏ん張っていた私たちは、今思うとすごく孤独でした。
周りに相談できる人もおらず、支援があることすら、そのときの私たちは知らなかったからです。
この話を周りにすると必ず驚かれますが、私たちにはいわゆる「退院支援」がありませんでした。訪問看護や居宅介護などの支援があることはもちろん、相談できるソーシャルワーカーという存在すら、教えてもらう機会がなかったのです。当然、もらえる手当があるとか、小児慢性など申請できる医療制度があることも知りませんでした。
存在すら知らないものを調べることも検索することもできません。そのときは、子どもに医療的ケアがあろうが夫婦だけで生活を回すことがつらかろうが、家族だけで乗り切るしかないんだ、頑張るしかない、としか思いませんでした。
「支援」という存在を知ったのは、子どもが3歳の時です。それまで支援を知らずに生活してきた私は「もっと早くこれを知っていたら!」と思うことの連続です。
そして強く思いました。
「情報さえあったなら、きっと家族だけで乗り切ろうとなんて思わなかったはず。そうすればあの時、私たちはあんなに孤独じゃなかったのに…」
「支援」という存在を知っている人だけが、
詳しい誰かに相談できた人だけが、
必死に追い求めた人だけが、
生きやすくなるための情報に辿り着く。
そんな「運ゲー」のような社会のままであってほしくない。
もう私のようにつらい思いをする人を、
毎日孤独に包まれる人を、
「もっと早く知っていれば」と後悔する人を、
これ以上増やしたくない。
その思いでインターネットの情報発信を続けていたときに出会ったのが、札幌市で作られた「医療的ケアが必要なお子さんと家族のための支援ガイドブック」です。
https://www.spesapo.or.jp/pages/5698619/page_202201071652
「情報不足の解消を」と動いてくれたスペサポとフローレンス
その支援ガイドは、一般社団法人スペサポ、という法人が作ったものでした。シマエナガのイラストが可愛く、親しみやすい。それでいて、必要最低限の情報が網羅されている。
この仙台版を作って、医療的ケア児の退院時に渡すことができたら‥!
そう思った私は、SNSのDMを通じてスペサポさんに連絡をしました。
「どうしたら支援ガイドを作れますか」
当時のアカウントは匿名でしたので、
「どこの馬の骨ともわからない私から連絡をしてももしかしたら返事は来ないかもしれない、あるとしても、企業として作っているプロダクトの作り方をおいそれと教えてもらえない可能性も高いよな」とは思いましたが、どうしてもこれを作りたい、と思い、できることは全てやろうと取った最初のアクションがそれでした。
これが全てのはじまりです。
スペサポさんから程なくきた返信の内容は、思いもよらないものでした。
「作り方はお伝えします。良ければ原案を無償で提供しますよ」と。
スペサポの代表の方も、医療的ケア児を育てる親御さんだそうです。ご自身も情報不足に悩んだからこそ、仙台で情報不足に悩むご家庭のためになるならぜひ協力させてくださいという好意的なお返事に感動するとともに、一気に「作れるかも!」と嬉しくなりました。
ただ次に考えなくてはいけなかったのが、費用をどこから捻出するかと、作業をする人をどう集めるか、ということでした。
原案を無償でいただけることで制作費用は大きく抑えられるとしても、印刷費などの費用は発生します。個人で負担できないこともないものの、そこそこ大きな金額です。
また、原案があるとしても、修正などの作業は必要ですし、私だけで作るのは情報の偏りや正確性が保てるのかという面でも不安でした。
そこで費用の調達方法として使える補助金がないかどうかを調べ、同時に作成の協力者を探すために動きました。
そんな中で出会い「一緒に支援ガイドを作ろう」と言ってくれたのがフローレンス(仙台支社)の方です。
当時、息子についての相談をきっかけにつながったフローレンスの方に、この支援ガイドを作りたいと伝えた時、こんなことを言われました。
「この本で救われる医療的ケア児の家族がいるなら、絶対にやったほうがいいよ。やろうよ。」
その言葉に言い表せないくらいの感謝、感動と言ってもいいくらいの感覚を抱いたことをよく覚えています。
そこから支援ガイドの制作が始まりました。
作成の過程では、私以外の医療的ケア児の親御さんや支援者さんなど多くの方に関わっていただき、完成したのがこの仙台版支援ガイドです。
支援ガイドを通じて伝えたかったのは「一人じゃないよ」という想い
「情報」を伝えたいという想いで始まった支援ガイドの制作ですが、作成をしているうちに、伝えたいのは情報だけじゃないな、と思うようになりました。
この支援ガイドに込めた、仙台に住む医療的ケア児の親御さんへのメッセージは「一人じゃないよ」ということです。
こんなことを言うのは少し照れくさいですが、でも、本当に心から思うんです。
なぜならこの支援ガイドは、私だけでは決してこの世には生まれなかったものだからです。
原案を提供してくださったスペサポさん、作成を引き受けてくれたフローレンスをはじめ、医療的ケア児やその家族の問題を知っている支援者さん。
実際に医療的ケア児を育ててきて、壁にぶつかり乗り越えてきた親御さん。
現状を知らなかった人でも、伝えることで、「それはなんとかしなくては」と心を寄せてくださる方もいました。
みんな、これからは医療的ケア児の親御さんが孤立しないように、そして、頑張らなくても情報にたどり着けるようにしたい、という思いで、作成に力を貸してくれたんです。
たくさんの方の協力を得て、関わったすべての方が「医療的ケア児の親御さんが楽になるように」と仰っているのを聞いているうちに、私が気づかなかっただけで実は多くの「応援団」がいることに気づきました。
そう気づいた時、私はものすごく心強く思いましたし、安心しました。
ずっと一人で戦ってきたと思っていたけど、そうじゃなかったんだ、と。
だからこそ、同じように一人で戦っている人に、「一人じゃない」と伝えたくなりました。
実際に暮らしている中では出会いにくいし、知る機会も少ないけれど、
あなたの周りには、支えてくれる人が確実にいます。
もちろん、私もそうでありたいと思っています。
だから一人じゃありません。
それを伝えたくて、このnoteを書きました。
作成に関わった多くの方の、そして私の、熱い想いが詰まった支援ガイド、ぜひ手にとってみて、「情報の糸口」として、そして「応援メッセージ」として、必要な方に届いてくれたら嬉しいです。
支援ガイドはこちらのページからダウンロードできます。
さいごに。
支援ガイドの原案を快くかつ無償で提供してくださり、作成の過程についてもたくさん相談に乗ってくださったスペサポの鈴木さん、
「医ケア児の家族のために絶対にあったほうがいい」と支援ガイドの作成を即決してくれたフローレンスのKさん、
支援ガイドの作成に携わってくれた医ケア児親のKさん、ナースのSさん、
私の雑な原案を綺麗にまとめてくれた札幌の印刷会社さん、
作成まではできたものの息子の就学と重なり校正などのやりとりが全くできなかった私に代わり、発行までのすべての工程を巻き取ってくれたフローレンスのFさん、
内容チェックや各所への配布などを前のめりでやってくださっているフローレンス仙台支社のみなさん、
プレスリリース作成やサイト構築を担当してくれたフローレンス本社の方々、
ほか支援ガイドの作成に関わってくださったすべての方に、
とびきりの、最大級の、感謝を。
(ほらね、ざっとあげただけでもこんなにいるんです、応援団。一人じゃないよ。)
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