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雪国の春

4月半ばというのに
夏日になる予報が出た。

確かに今日は
朝からストーブなしで
過ごせる気温だ。

窓を開け網戸にすると、
どこからともなく
祭囃子まつりばやしが聞こえてくる。

太鼓と笛の
わっしょいの掛け声。

その賑やかな音が近づき
ぼんやり外を眺めていると、
屋台囃子の一行が通り過ぎていく。

近所にある小さな八幡宮の
春の例祭だろう。

子供から大人までが参加し、
地域を練り歩くらしい。

長い冬が終わり、
田畑では農作業が始まった。

豊作を祈る春祭りは、
室内に篭っている私のような人間をも
外に引っ張り出した。

八幡宮の境内では
子供達による剣道の奉納試合が
行われていた。

熱心に声援を贈る保護者達に紛れ、
私も拍手をしたりして、
知識もないくせに「おぉ〜」などと
言ったりした。

せっかく外に出たのだからと、
頭を空っぽにして
流れの速い川端に出た。

風は心地よいが日差しが強く、
日陰を求め
桜並木の歩道に逃げる。

そこではまだ
花見をしている人達がいる。

そう言えば先日、
犬を連れて花見をしながら
1人でケンタッキーを食べている人がいた。
それを思い出し、
無性に食べたくなった。

屋外での食事は
どうしてあんなに美味しいと
感じるのだろう。

桜の木にはもう
葉が茂り始めている。

ヒヨドリと思われる鳥達が
残りの貴重な花を突き花びらが舞う。
クマバチも負けずに飛び交う。

雪山を背景に
桜散りゆくこの山里で、
夏の気配を感じる。

春は夏よりも短い。
だからこそ人も動植物も
全力でこの季節を謳歌おうかする。

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