夜の海

くらげちゃん

長尾早苗
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初潮を迎えた夜だった
くらげちゃんと美しい砂浜で話し合ったのだ
「わたしの名前ね、さんずいがないの
くらげちゃんはいいなあ
海だよ、うみ!」
そういうと
くらげちゃんはふふふと笑って
「海になる方法を教えてあげよっか」
と言った
わたしが頷くと
耳元で
「家の鍵を捨てちゃえばいいんだよ」

ひそひそ言う
わたしが驚くと
くらげちゃんは
「くくく」
と笑って
いつものように
わたしの心臓を毒針で
ぐさっ、と刺した


今だってどこかで誰かが死んでいて
どこかで誰かがひとを殺して/
くらげちゃん、
わたしを、やって。


ななめになってかしいでいた
わたしは波になったんだわ
くらげちゃんはゆらり光ってほどけていった
ゆらり光ってほどけていった

わたしはくらげちゃんに
ぐちゃぐちゃにされたくて
わたしの人生を
めちゃくちゃにされたくて
おとこになんか
ならなくてよかった、と息をついた
あのひとの腕の上で

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