はにかみ屋

映画「ミスミソウ」を見てきた。戸田真琴さんの映画コラムを読んで気になっていた作品だった。近所の映画館に監督とプロデューサーが来てくれてトークイベントが開催される。絶好のチャンスだと思い、久しぶりに映画館へ。

中毒性のある映画の予告編は何度も見ていた。可憐な少女が華麗に刺す刺す刺す刺す刺す、真っ白な雪国に真っ赤な血が残酷に映えていたのが印象的だった。タテタカコさんの愉快なピアノの音と赤と白の狂気的なコントラストを見て聞いて、あぁ、愉快な音楽に乗せて狂気が楽しくなる、どこかで見たことあるサイコホラーなのかな。って。いじめとか弱い者が淘汰される事、俯瞰して怖いの楽しんでるだけじゃん自傷かよ!やっぱり怖いよ!!でも、純粋で芯が強くて誰にも屈しない可愛い少女だけは魅力的で、騙された。観てしまう。

映画を観に行く当日も、行くか迷っていた。どうしようもなく迫る時間に押しつぶされて、重たい身体をを引きずりながら映画館へ行った。

横川シネマの真っ赤なふかふかのソファに座って。このまま寝てしまいたいと思いながらも。目が離せなかった。小さな学校で起きるいじめ。復讐、それに怯え慄き、復讐復讐復讐復習。次々と血を撒き散らす。これでもかってくらい死んでいた。どこまでいっても終わらない、小さなボタンのかけ違いで起きる残酷な悲劇だった。誰も報われたり救われたりしない。それでも画面の向こうは綺麗だった。

幼い中学生にしかない少女の美しさみたいなのがひしひし。山田杏奈さん。彼女の笑顔は、作中ほんの3分くらいだったのではないだろうか。貫かれるくらい鋭い視線は、真っ直ぐに画面を超えて、貫かれた。ホラーじゃなかった。色がすごく綺麗でこだわってるんだろなって。真っ白な雪国に散った紅い紅い血はとても鮮やかだった。狂気に支配された中学生。我々と変わらない人間だった。ヒリヒリした、傷。日常に関与しない学校のリアル。何をどう思うのか、身に覚えはある。思い出したり、共感する部分はある。

こういう映画体験って久しぶり。R15。だけれど中学高校高校生に見て欲しい。他人事でもない。聞きたくないニュースが流れるTV。現代とつながっている映画。サイコホラーやら血が出る人が死ぬ。これだけ聞くと、うわー苦手って、拒否しちゃうこともあるだろうけれど、その感覚こそが救いだった。