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レアル・マドリードのダイヤモンド/ベリンガムシステムとアンチェロッティの傑作「ミランのクリスマスツリー」
金剛
不思議なクラブですよね。
極端に落ちることもなく、タイトルから離れていた時期もなぜかチームには華がある。常に輝いているチーム、レアル・マドリード。チャンピオンズリーグも名称が変わってからは唯一の皆勤賞だっけ。
ニュージェネレーション
■ベンゼマout、ベリンガムin
今シーズンのレアルの移籍市場の動きでは、ビックリ仰天カリム・ベンゼマのサウジへの移籍。
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年齢的なことも含め、いずれ近い未来の退団はあるだろうなと思いつつもまさかの今夏退団になるとはほとんどの人は思わなかったでしょう。
加入は、まずは今夏最大のターゲット、ジュード・ベリンガム。
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久しぶりの大型補強でドルトムントからやって来た新エース候補がチームの核となります。
本当はね、ベンゼマとベリンガムを組み合わせたかったんでしょうけど、予想外のベンゼマ退団でその願いは叶わず。
その後釜として獲得したのがスペイン代表のホセル。
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ただホセルはローンだし、ベンゼマの後釜として考えるのもスペイン代表とはいえ微妙過ぎる。
当初はハリー・ケインでしたが折り合いつかず、キリアン・エムバペに再アタックも、パリとエムバペの間でもつれた感あってマドリードに引っ越すことはなくシーズンインしました。
■アンチェロッティの出した解答
2年ほど前から徐々に世代交代を図っているレアル。ロナウド後のエースにヴィニシウス、トップにはロドリゴが台頭し、DFもラモス&ヴァランが同時に抜けながらもミリトンが頑張ってくれた。中盤もクロースとモドリッチが健在でも、バルベルデにカマヴィンガ、そして昨年獲得したチュアメニと新世代が主力級になってきています。
問題が、ストライカーはどうすんの?で、ペレスはベンゼマの後継者はエムバペしかいないと思っているでしょうね。エムバペとパリは来夏までの契約なので、来年が実質のラストチャンス。できたらベンゼマを引っ張りたかったんだけどが1年前倒しとなってしまい、ケインにそこまで本気になれなかったのも、ケイン来ちゃったらエムバペ獲れないし、あとハーランド。本当なの?と思っているんですけど、シティとの契約事項に「レアルへの移籍なら優先的に許可する」があるらしいですけど、マジ?
3,4年やってレアルへ移籍するかもですけど、それ考えたらケインは獲りに行かんわな。
レアルにとってストライカー問題は大切で、今年は空白の1年になりそうな感じなんですけどそれに対するアンチェロッティの解答が、
システムを変更する
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ベリンガムをトップ下に配置したダイヤモンド型の採用。ウイングが存在しないので攻撃の形は再設計しなくてはならないのですが、そこは果たしてどうなったのか。
■ハイプレス&中央破壊
レアルというと、ロナウドの頃から、もっとはギャラクティコスの頃からか、前線の選手がそんなに守備に熱心ではないので、守るときはラインを下げて必殺のカウンターで刺す。ポゼッションもできますけど、守備考えたらリトリートにせざるを得なかったわけです。
現在のチーム状況ですが、前線の選手がプレスをやることが当たり前な時代になりましたので、若い選手が増えたということも相まってハイプレス志向に。
ポジトラにおいては、ウイングがいないからこそどのような変化が生まれるのか。見てみましょう。
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開幕戦からですけど、詳しく見てみますと
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ベリンガムが中央、2トップは基本ハーフスペース。ヴィニシウスに関しては左大外に出ますけど、陣形はこれがベース。大外で幅取るはSB。カルバハルにフランと攻撃力あるタイプを置く。3センターにビルドアップを任せるこのやり方は10年前を思い出しますね。
現在のダイヤモンド型は10年前のレアル、もしくはクリスマスツリーのミランの頃を彷彿させるかのようなビルドアップです。どっちかと言えばミランの頃ですかね。
■ミランのクリスマスツリーとベリンガム
カカが加入した03-04シーズンから、ミランのシステムは4-3-1-2に変わった。この傑出したタレントから最大限の持ち味を引き出すのがこのシステムだったからだ。
(中略)
ところがカカは、それまでミランが基本としていたシステムを揺さぶり吹き飛ばす竜巻のような存在であり、私は彼の存在を前提にしてミランの中盤を再構築せざるを得なかった。
カカはスペースの中を動き、裏のスペースをアタックし、2トップにスルーパスを送り込むよりも彼らとのコンビネーションによって危険な状況を作り出すというプレースタイルの持ち主だ。4-3-1-2は、現代サッカーにおけるトレクァルティスタ(トップ下の攻撃的ミッドフィルダー)の象徴ともいうべきこの偉大なプレーヤーの力を最大限に引き出すシステムだった。
著者カルロ・アンチェロッティ、ジョルジョ・チャスキーニ
訳片野道郎
発行 河出書房新社
133項より引用
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今のレアルにおけるベリンガムは、ミランのカカと違ってBOX to BOX寄りなタイプですが、開幕4試合連続ゴールで5得点と攻撃面で大爆発しています。カカは戦術兵器だったのでベリンガムとは全く異なってますが、10年前のBBCを活かすビルドアップのモデルもミランのクリスマスツリーです。
アンチェロッティの作るチームにおいて大切な事項は、サイドにトライアングルを作れるかです。
私がミランの監督を務めている間、起用する選手によっていくつかタイプの異なるクリスマスツリーを見ることができた。例えば、最初に4-3-2-1を導入したときのトップ下はリバウドとマヌエル・ルイ・コスタだったが、カカが来た後は、このポジションで彼とセードルフがプレーした。それらWの詳細は第10章で取り上げることにして、ココではこのシステムの長所を見ることにしよう。
(中略)
サイドにトライアングルを作り出すことができる。
サイドバック、インサイドハーフ、トップ下の3人が構成するトライアングルを使ったパス交換は、とりわけポジションチェンジを伴ったときには、意外性を含んだ質の高いコンビネーションを生み出す。
著者カルロ・アンチェロッティ、ジョルジョ・チャスキーニ
訳片野道郎
発行 河出書房新社
138項より引用
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ミラン時代のクリスマスツリーと照らし合わせて、この時はSBのフラン、インサイドハーフのカマヴィンガ、トップのヴィニシウスでサイドのトライアングルを作った。ここからサイドチェンジして
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逆サイドでも同様のトライアングルができる。
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ここでベリンガムが下りてくる。
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ベリンガム、ロドリゴ、カルバハルのトライアングルが新たにできる。
インサイドハーフが余るのでサイドに顔を出しやすく、それが流動性をもたらしているということですね。そして、特に両ワイドのSBに対しては攻撃的なタスクを求められます。
サイドアタックはほとんどすべて、サイドバックの攻め上がりに依存する。したがってこのポジションには運動量が豊富で攻撃的なプレーヤーを置く必要がある。
著者カルロ・アンチェロッティ、ジョルジョ・チャスキーニ
訳片野道郎
発行 河出書房新社
140項より引用
■カギを握るは大外のSB
アンチェロッティ本人が認めているように、システムの関係性上大外にはSBしかいないわけです。ヴィニシウスは自由に左に出ますけど、この性質上なってしまうんです。
10年前のレアルもシステムこそ4-3-3でしたけど、ミランにおける2シャドーをウイングとして配置転換しただけで、仕組み時代はほとんど変わっていないんですよね。
前の3人に関しては、10年前もミランの時も今も基本フリーダムにやらせる。大外はSBに任せ、つまり運動量と攻撃性能ですね。このSBでイニシアチブを握れるかが大切です。
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攻撃においては、バランスの取れた布陣を取ることが重要だ。具体的には
・両センターバックがワイドに開く
・両サイドバックはポジションを上げる
・インサイドハーフは敵ミッドフィルダーの外側、味方サイドバックよりもやや低めにポジションを取る
・セントラルミッドフィルダーはサイドチェンジを意識する
著者カルロ・アンチェロッティ、ジョルジョ・チャスキーニ
訳片野道郎
発行 河出書房新社
146項より引用
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ポゼッションしている時のSBの立ち位置はほぼウイングです。アンチェロッティの言う立ち位置は、ウイングの位置までSBを押し上げ、インサイドハーフを背後に構えさせることで、同サイドで崩せなくなった時のための迂回経路を作る。
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この画像においては、カマヴィンガをフランの後方に配置することで、ビルドアップの陣形を築き、逆サイドで上がっているSBへのサイドチェンジに備える。IHのSB落ちはアンチェロッティのビルドアップにおいて重要なキーパーソンです。
■ダイヤモンドは砕けない
システムこそウイングが無くなり、前線にはベンゼマが抜けてバリンガムが入った。ですけど、原則は変わっていません。意外と戦術的には不変。変わらないからこそ強さが増していく。アンチェロッティとレアルの新たな冒険が始まります。
次回予告
ジョアン・フェリックス取扱説明書
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