アイドル戦国時代にみる、「8・8」

よく「アイドル戦国時代」という表現を聞くが、ジャニーズJr 8・8祭り(通称「8・8」)を見たときに、なるほど、戦国時代とは本当によく言ったものだ、と感じた。

中学生からジャニオタを細々と極め、Nizi Projectにハマった私。K-popはまだまだにわかだが、虹プロのオーディション番組と、少し前のジャニーズJr.の状況をみて、アイドルのバズりの法則を見たような気がした。

人気グループになるために、ダンス、歌、ビジュアルが良いのは当たり前。日韓いろんなグループが誕生している中、それだけが良くても埋もれてしまう世界である。人気への鍵は、「エモさ」である。

アイドルのエモさは、「グループがデビューするまでのストーリー性」、と言い換えることができると思う。それをどうやって作り出すのか。

オーディション番組がその典型的な例だ。全くの無名な子に手っ取り早くストーリー性を作り出し、共感を産み、デビュー後も成長を見守りたい、応援したい!と思わせる手法として、とても有効だ。K-POPでは流行りの手法で、日本人も参加したり、それこそNiziUが生まれたり、日本にも逆輸入されつつある。

言わずもがな、ジャニーズ事務所はオーディション番組を利用していない。でも、それに負けず劣らず、というかオーディション番組の何十倍のスケール感で、「ストーリー性」の構築を成し遂げている。だからこそ、嵐、関ジャニ、タキツバが築いたジャニーズJr黄金期から20年ほどの年月を経て、「第二のJr黄金期」を作り上げることができたのだ。

歴史オタクではないが、戦国時代の魅力、エモさはきっと2点に集約される。

① 登場人物が多様であること
② 一つのイベントを色んな視点から分析できること

この二つにより、一つの時代を色んな楽しみ方ができる。信長などの圧倒的センターとも言える勝者と彼らの転落、黒田官兵衛などの、センターとは言えないが脇を固めるポジション。色んな角度から楽しめるからこそ、何個も何個も大河ドラマが作れるのである。

ジャニーズJr黄金期は、この2点の魅力をしっかり抑えている。特に、「8・8」をどう捉えるかは、ざっと4通りあると言え、そのどれもがえもえものえもである。

そのエモさを、因数分解していこう。

4通りの捉え方は「関西ジャニーズJr.(関ジュ)」、「SnowMan」「SixTONES」「TravisJapan(トラジャ)」の四つだ。もちろん、それ以外のグループも、この4グループとは別の感情で8・8を迎えたと思う。ただ、エモさの強さで言えば、この4グループが際立つし、それを理解してDVDのドキュメントムービーやRIDE ON TIME(ジャニーズのドキュメンタリー番組)も特集されていたと思うので、あえてこの4通りの視点に焦点を当てる。というか私が単純に勉強不足で、他グループの当時の状況をあまり知らないので、言及しない。

① 関ジュと8・8

関ジュと8・8を語る上で、その年の年始に発表された、向井康二と室龍太の卒業と、そこに到るまでの経緯に触れざるを得ない。どうしても言葉足らずになるので、もっとエモく詳しく彼らの変遷を感じたい人は是非RIDE ON TIMEをNetflixで見て欲しい。

ジャニーズWESTとキンプリ平野紫耀、永瀬廉がデビューした後、関ジュは苦しい時代が続いた(通称:関ジュの焼け野原)。人気だったジュニアが辞めることも相次いだ。年代で言えばジャニーズWESTと同期の向井康二、室龍太が、関ジュのお兄さん的ポジションとして、関ジュを支えた。

もともと関ジュは東京のジュニアと比べて、活躍の場も圧倒的に少なく、不遇な環境とも言える。(よって、努力しか勝たん、という文脈が強まり、エモさが増す。)向井、室の活躍に支えられ、どんどん人気が出て行く関ジュ。

なにわ男子というグループができる。関西のグループとしては珍しく、コメディ系ではなく、王道アイドル系のグループ。しかし、向井と室の名前はない。(はい、エモい。)どんどん人気が出て、関西ローカルだけじゃなく全国放送でもメディア露出も増え、コンサートの倍率がえぐいという噂も。

1月の、関ジュの大阪城ホールでのコンサート。向井と室の卒業が発表される。関ジュのお兄さんである二人は、誰もが、関ジュのグループとしてデビューすると思っていた。全員で号泣しながらMy Dreamsを歌う姿は、歌詞ともリンクする姿と、彼らがいかに愛されているかを目の当たりにされ、泣かずにはいられない。(歴史に残るエモさのピーク)

向井は、東京のSnowManというグループに加入。最初の頃の、敬語を使っていて少しぎこちない関係性から、どんどんグループのムードメーカーになっていく姿は、彼の愛される人柄を際立たせる。(Snow ManのYouTubeを見るとよくわかる)

少し前置きが長くなったが、そこで迎える、8・8。超異例の、ジュニアだけでの東京ドーム公演である。関西からの参加、東京のジュニアには負けないぞという気持ち。

そこで発表される、SixTONES、SnowManのデビュー。2グループ以外は知らされていなかったらしく、もちろん関ジュのみんなは知らない。愛する向井康二のデビュー決定はきっと嬉しいものだったけれど、デビューを一度逃すと、これから一年以上はデビューできないと概ね予想がつく。嬉しさ、悔しさ、これからやってやるぞという気持ち。そんな、いろんな感情がごちゃ混ぜになっている光景に、とりあえず、エモエモのエモ。

参考:

② SixTONESと8・8

私がそこまでSixTONESに詳しくないということもあるが、割とSixTONESと8・8はシンプルな話ではある。

あまりジャニーズっぽくなく、デビュー当時のKAT-TUNやEXILE系のグループも彷彿とさせる、男らしい?少し悪ガキっぽい?けれど、大人の魅力やセクシーさを兼ね備えるSixTONES。ダンスや歌、ラップの完成度も高く、バラエティも圧倒的に面白い(YouTube参照)。

同期はKis-My-Ft2やHey!Say!JUMPと、年齢層は高め。同期がどんどん辞めたり、デビューしていく中、頑張って踏ん張ってきた彼ら。ワイルドな風貌とは打って変わって、超苦労人で、後輩からも慕われる、しっかりしたお兄さんたち。人気がどんどん高まってきて、デビュー前としては異例の、グループ単独公演もやってのけたり。この、苦しい環境での長年の努力が報われる、というシナリオに、とりあえず大衆は弱い。そこに弱いと、本当にジャニーズJr.は沼だ。努力しか勝たん。

8・8、何年も夢に見ていた、デビューが決定。いつもはおちゃらけている慎太郎やジェシーの、真面目でまっすぐな瞳には、グッとくるものがある。

特に、私のエモポイントは、RIDE ON TIMEで特集されていた、デビュー発表直後の彼らの姿だ。ステージ裏に移動したあと、他のジュニアが駆け寄り、おめでとうと伝える。普通なら、アドレナリンで高ぶりまくっているだろうし、笑顔でありがとう、とみんなをハグしまくるぐらい、嬉しくてたまらないだろう、と思うかもしれない。

でも、彼らは、ポーカーフェイスで、笑みはなく、口数も少なく、「おう、伝えられなくてごめんな」と言うのだ。

デビューを逃す気持ちをなんども味わった彼ら。デビューする人がいるということは、同時に、とてつもなく悔しい思いをする人が、何倍もいるということ。それを痛いほどわかっているからこそ、そんな反応だったんだろうな、と思いを馳せざるを得ない。

ポーカーフェイスにみる感情の高ぶりと、ジュニアの友情に、乾杯。

参考:

③ SnowManと8・8

少しネタバレしたが、SnowManは8.8の数ヶ月前に、人数を増やした。6人でずっと頑張ってきたが、そこに関西で圧倒的人気の向井康二、宇宙Sixの目黒連、中学生のラウールを加入させる。

よって、「向井康二視点」「既存の6人視点」「ラウール視点」「目黒視点」の4通りの視点から、8・8を分析できる。そこがSnowManの奥深さ、つまりはエモさに繋がっている。

まずは、「6人視点」

アクロバットが魅力のグループとして売り出されているSnowMan。身体能力は圧倒的だが、SixTONESやキンプリと比べて華があるかと言われると、確かにうーんとも思う。(決してアンチとかではなく、一般受けしやすいかどうかという目線から)SnowManは、SixTONESからもマンズ兄さんと呼ばれており、圧倒的にお兄さんだ。(ボキャ貧)逆に言えば、後が無い。

そこで提案される、3人の加入。3人とも、従来のメンバーとはかなり毛色が違う。漫才もできるコメディ担当の向井、モデルを彷彿とさせるシュッとしたビジュアルの目黒、圧倒的年齢差のラウール。しかも、向井康二は関西でレギュラー番組を持つほど人気のあるメンバーだが、他の二人は割と無名で、それまでのテレビ露出もほぼなかったような気がする。そんな3人の加入を受け入れるか否かは、彼らに委ねられる。

結局彼らは、それを受け入れる。6人で頑張ってきたんだから6人で、という気持ちもあっただろうけど、それよりも、SnowManという看板を守ることにこだわった彼ら。きっと私なら、後輩のくせにポッと加入してデビューが決まるなんて、と、少しネガティブな感情も芽生えるだろう。ビジュアルも良く、人気のある加入組に、自分が埋もれてしまったらどうしよう、きっとそんな気持ちもあったかもしれない。私には想像できない、いろんな感情があっただろう。YouTubeも最初は加入組との距離が見えるが、すぐに打ち解け、年齢差すら感じさせない。

それを乗り越えて、8・8で迎える、デビュー決定。いろんな苦労を強いられても、最後にはデビューという勝利にこぎつける姿は、泣けてくる。

「目黒視点」「ラウール視点」は少し似ているのと、それまで割と無名だったゆえにあまりバックストーリーがないので、まとめさせていただく。

かなり年齢差のある(ラウールで最年長と11歳差、目黒でも5歳差)、大先輩のSnowMan加入を告げられる二人。スノストトラジャが圧倒的に人気を誇り、単独公演を行う中、3グループと比べれば圧倒的にメディア露出もなかった二人が抜擢されるなんて、度肝を抜かれただろう。

中学生から見た11歳上の人なんて、異文化交流でしかないだろう。5歳差でも、かなり目上の人のように感じるだろう。既存のファンからも叩かれるんじゃないかという不安もあっただろう。でも、それを受け入れ、乗り越え、綺麗に馴染んで、どんどん仲良くなっていく姿に、親のような気持ちになる。

しかも、無名だった原石が発見されて、爆速でデビューが決まっていく姿も、エモい。というかすごい。

これは最近になって知った事だが、目黒の同期は超豪華。早急にSexy Zoneのセンターとしてデビューした佐藤勝利、ジュニア時代から圧倒的人気のキンプリ神宮寺と岩橋、早くからグループに所属していた、Travis Japanの圧倒的センターの宮近とリアコ中村海人、無所属時代からEndless SHOCKにも出演する実力派で、今ではTravis Japanの松倉、などである。そんな中、ずっと無所属で、あまり目立った仕事もなく、少クラでもバックの端っこの方に少し映る程度だっためめ。同期かつシンメの原と、宇宙Sixに所属することが決まる。舞台中心に活躍する、あまりアイドル感のないグループだったが、ある年から滝沢歌舞伎に出演が決まり、実力を認められてSnowMan加入に至る。漫画のようなシンデレラストーリーすぎる。それを知っての上での采配なら滝沢はどんだけ天才なのか。

しかし、彼がSnowManとしてデビューするということは、同時に宇宙Sixを脱退するということ。無所属時代からのシンメ・原と抱き合う、宇宙Sixの目黒蓮としての最後の姿は、あまりスポットライトを浴びていないが、超絶のエモさがある。

時折、YouTubeやISLAND TVで、二人がもともといたグループ(少年忍者・宇宙Six)の人と共演しているのを見ると、エモい。

爆推し、「向井康二視点」。総じてエモい、考えだすと5秒で泣ける。

同期がデビューしたり、相方が事務所を辞めたりしても、焼け野原となった関ジュを第一線で引っ張ってきた向井康二。どんどん低年齢化する関ジュの中、お兄さんとして引っ張っていくのもきっとしんどい時もあっただろう。なのに、なにわ男子ができたときに、自分の名前がなかったこと、本当に、悲しいどころではなかっただろう。

そこで、告げられるSnowMan加入と、それに伴う関ジュ卒業。当たり前に、関西のグループとしてデビューすると思っていたのに。関ジュのところでも言ったが、本当に泣ける。

8・8の、悲願のデビュー。理想としてたデビューの姿ではないかもしれないし、関ジュ、SnowManの双方のファンからどう思われるのだろう。そんな不安もあっただあろう。いろんな感情が乱れる様、それこそ、エモである。

今ではSnowManに必要不可欠な存在で、言葉通り、関西関東問わず誰からも愛され、馴染むことのできる「万能調味料」こと、向井康二。8・8を語る上で、エモさを最大限引き出し、西と東の架け橋ともなった、キーマンと言えるのはやはり向井康二だ。

プロデューサー的な視点からみると、向井康二がいるといないでグループとしてのエモさのレベルが圧倒的に違う。デビュー後も関ジュや室龍太と仲良い姿を見るだけで泣きそうになる。きっと最初は批判も多かっただろうけど、エモさを増やすという意味で、神的な采配だったように思う。

参考:

④ トラジャと8・8

実は一番エモい存在かもしれないと思うのが、トラジャと8・8。SnowMan、SixTONESと比べると比較的若く、20代前半の彼らは、永遠の高校生?幼稚園児?のようにも見え、母性をくすぐる。なのに、ダンスはジャニーズでぶっちぎりのトップだ。Austin Mahoneのバックを務めていたのも記憶に新しい。デビュー組でダンスが上手いと言われる人も、足元に及ばないんじゃないかと思わせる、宮近海斗。彼が抜きん出て上手い圧倒的センターなのは確かだが、全員が抜群にダンスが上手く、パフォーマンスで魅せるタイプの珍しいジャニーズ。KinKi Kidsのような職人風がある。

彼らは、いつもスノストと一緒に3組まとめていろんなことをやってきた。横浜アリーナ公演も、この3組のみ行っているし、人気は同等だろう。

そこで迎えた8・8。2組はデビューし、トラジャだけは残された。ファンも、本人も、なんで?という気持ちがあっただろう。何が足りないの?その悔しさは計り知れない。デビュー発表の際に涙する、最年長の川島如恵留と最年少の松田元太の姿には、いろんな思いが垣間見える。

参考:

この動画を見るだけでも、エモさが込み上げてくるし、これからの彼らの動向に目が離せなくなってくる。

8・8後のジャニーズ戦国時代

次デビューするグループはどれだろう。西の勢いは強く、なにわ男子はデビュー確定と言われている。ジャニーズWESTのデビューから6年近く経っているし、機は熟している。海外アーティストとコラボまでしたトラジャも、このまま解散するなんて勿体無さすぎるので、きっと、というか確実に、なんらかの形で日の目を見ることができるはず。

彼らが卒業するには、後輩がもっと育つ必要もある。コンサートだけでもこんなに収益が望めるのだから、スノストとトラジャを全て卒業させてしまうと、ジュニアがもぬけの殻となり、焼け野原時代の関ジュのようになってしまうから、きっとデビューできなかったんだろう。どんどん後輩が育ってきているようにも思うが、デビュー前のスノストのポジションがなにわ男子・トラジャとなった今、彼らに続くグループはどれだろう。

ここには言及されていないが、HiHi Jets, 美 少年, Aぇ!  group, Lil かんさい, 少年忍者, 7MEN侍などなど、それぞれがテレビの露出を増やしたり、舞台や単独公演を行ったり、スノストのデビュー前よりもさらに競争の勢いが増しているように感じる。

他の記事でも言及したが、少年ジャンプの「友情・努力・勝利」の法則はやっぱりエモの観点から大正解で、これはジュニアにも当てはまる。人によっては10年以上の努力で今の地位にいることができ、さらに高みを目指して日々努力しながら、それぞれのグループがデビューという勝利を目指す。そこには、悔しさやいろんな葛藤があるけれど、グループ内外の友情で乗り越えていく。その姿にとりあえず、人は引き込まれるのだ。

8・8はかなり歴史的なイベントだったが、これを再生産するにも、コロナ禍の今はまだまだコンサートに参加する心理的ハードルも高い。どのように、これからトラジャ、なにわ男子、またそれ以外のジュニアがデビューまでの道のりを描くのか。目が離せない。



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