銀さんになりたい。

21才、女、大学生。これまで、あまりアニメにハマったことがない。時にアクション系は映画もアニメも漫画も食わず嫌いで、見たことあるアニメといえばポプテピピックとか日常とか、ギャグアニメ系のみ。そんな私は、銀魂にハマり、物語の主人公、銀さん(本名:坂田銀時)になりたい。

銀魂にハマるまで

実は、小中高と、アニメ・漫画をほぼ読んだことがない。銀魂という名前はもちろん知っていたが、ちゃんと見たことはなかった。

見始めたきっかけは、実写版の映画だ。キャストがとてつもなく豪華、かつ(ジャニオタな私の推しである)堂本剛も出ている(とてつもなく希有な映画)、そしてコロナの影響で大学の授業もオンライン、やることがない、とてつもなく暇、ということで、実写版銀魂を見た。 

とてつもなく、面白いではないか

全力の変顔で下ネタを吐き、鼻くそをほじくる、1000年に一度の逸材:橋本環奈に圧倒される。菜々緒に「染み付きパンツ〜」と言ってる橋本環奈のシーン、気づいたらもう一回見ている。あんなに可愛くて、あんなことができるの、そりゃ1000年に1人ぐらいだわ。

他のキャストも、小栗旬、菅田将暉、吉沢亮、旬なイケメンばかり。もちろん推しもかっこいい。ムロツヨシ、佐藤二朗など、ギャグドラマに不可欠なキャスト。そしてストーリーも面白い。こんなに振り切ったギャグ映画、久しぶりに見た。

もっと見たい。

実写版 銀魂2を見た。

ギャグ要素、とてつもなく面白い。岡田将生のカツラップは無意識にユーチューブでもう一度聴きたくなる。

なのに、メインストーリーである真選組動乱篇を前に、気づいたら泣いていた。規律に厳格な副長となよなよヘタレオタクの多重人格を演じ分ける土方役・柳楽くんの演技は圧巻。三浦春馬演じる伊東の、どんなに勉強しても、どんなに偉くなっても、誰にも理解されないと思ってしまう孤独に、自分が重なった。1作目はキャストのために見ていたかもしれないが、2作目は後半のストーリーの良さに全てを持って行かれた。

原作のアニメを見なければ、という意識が芽生えた。

そもそも設定をいまいち理解していないので、ちゃんと理解したい。キャラの関係性をもっとよく知りたい。その上で、もう一度あの映画を見たい。 そうして、ネットフリックスで毎日数十話みる生活が始まった。

銀さんになりたい。

 今日、アニメ3年目のはじめぐらいまで見終えた。やっぱり動乱篇が一番好きかもしれない。ミツバ篇も泣けるなあ。ギャグ回もとても面白い。制作費おりねえだのレイヤー消えてただの、あえてアニメの裏側を見せる総集編も、ああアニメって人が作ってるんだ、と思えてとても好きだ。

そして思う。 私は、銀さんになりたい。 (ここからが本題、前置きが長すぎた。) 

銀魂とは

銀魂は、基本的に攘夷派vs真撰組という、幕末の日本の勢力闘争を題材としている。(9割は歴史とは全く関係のないギャグアニメ、歴史なんか知らなくてももちろん楽しめる。)基本的に出てくるキャラは歴史上の人物になぞらえてある。(内容は9割9分史実とは関係ない。)

 設定として、天人(=外来勢力)の台頭により虐げられた武士たちが活躍する。だが、スポットライトが当てられているのは、攘夷派でも真撰組でもない。革命の武勇伝でも、ナショナリズムの美学でもない。ただの、何者でもない武士の日常である。 

詳しくいうと、主人公である銀さんは、万事屋、つまり何でも屋を営んでいる。しかし毎月家賃を払えるか否か、という経営状況から分かるように、大金のために動く、というようなロジックでは動かない。糖分とジャンプを楽しみに生きる、ギリギリニートじゃないけどぱっと見ダメなフリーターのような生活である。 

だけと、私は、銀さんになりたい。 

まず、彼は、めちゃめちゃ強い。攘夷戦争の時には白夜叉として名を轟かした、とりまめちゃくちゃに強い人である。今は法律で帯刀が禁じられており、木刀で戦うわけだが、え、木刀?木刀って木ってことだよね?え?って毎週ツッコミ入れたくなるぐらいには強い。真剣を振るう相手はもちろん、もはや何それ?人間勝ち目ある?みたいなエイリアンすら、木刀でボッコボコにする。 

私も、そんだけのスペック、欲しい

でも、私も木刀振り回したいとか、剣道始めたいとか、そういう話ではない。彼のように、自分の専門とする分野をめちゃくちゃに極めて、認められるぐらいになりたい、というのは前提としてあるだろう。

それだけではない。

彼と同じぐらい強い人たちが、攘夷志士や真撰組である。この辺りがアニメのメインキャラであり、銀さんの好敵手、または昔の仲間だ。でも銀さんの方が彼らよりちょっと強い。 (と、個人的に思っている)。

ではなぜ、攘夷志士でもなく真選組でもなく、銀さんになりたいのか。

攘夷志士は、国を良くするために戦う、革命家たちである。理想を掲げ、今の現状に異を唱え、法律に背いてまで戦う、キラキラしたファイターだ。(アニメ自体はそのキラキラには触れないが)

 一方真撰組は、攘夷志士の敵。国を守る、という理想を掲げ、厳しい戒律を遵守しながら国民に心身を捧げる、キラキラしたヒーローだ。(アニメ自体はそのキラキラには触れないが) 

銀さんはもともと攘夷派の武士として名を馳せ、彼の同胞である桂や高杉は今も攘夷を目指している。 同じ(もしくは自分より低い)スペック、かつ銀さんと親しい真選組も攘夷志士も、キラキラした大義の元に行動して、その見返りに金銭も名誉も社会的地位も手に入れている。

銀さんも容易にそれができたはず。でも、彼はそこから離脱した。

そこが私には理解ができないし、彼の凄さである。何年も訓練をして強くなって、攘夷のために身を捧げて、実力と名誉と肩書きを築いてきたはず。どうやったらある日突然全てを捨てることができるんだ。白夜叉という肩書きを捨て、ただのジリ貧な何でも屋になる、その決断をどうやったらできたのだろう。

私なら、報われたい、と思うだろう。

周りから負け犬だと思われることを、どうにかして避けるだろう。きっと私は弱いから、革命家として生きることはできない。せめて幕府の犬になって、お金と地位と安定を手に入れようとするだろう。私よりもう少し強い人なら、自分の初心を貫いて、自分の理想を掲げて、攘夷志士として生きるだろう。

でもそれは、生産性と他人の目にがんじがらめにされている私が思うことである

 銀さんは違う。 そんな器じゃない。そんなキラキラに、惑わされない。

同じ武士である真撰組や攘夷派のように、「国のため」に動くというわけでもない。あくまで困っている個人を助ける、そこに、かっこいい「大義」や、資本主義や、名誉や、肩書きへの執着や、他人の目を気にする素振りは、全くない。 これまでの辛い鍛錬に見返りを求めない。

それでいて、銀さんは、彼の武士道を全うする。

どんな意味のわからない依頼でも、依頼主がヤクザでも、恋い焦がれたオカマバーのお姉ちゃんでも、お金をくれる見込みがない壊れかけのロボットでも、彼は必ず目の前に現れる弱者を助ける。正しい道へ導く。

 彼は、自分の武士道が正しい、という圧倒的な自信で、飯を食っている。

 人間は弱い、だからこそ、自分以外の何かに頼りたい。少なくとも私はそうだ。大学だって、偏差値やら学歴やらの恩恵を受けたいから所属することを選んでいる。肩書きが何かの担保になる気がするから、大企業の選考にエントリーする。自分がemployableになれそうなインターンとかやってみるし、資格なんかを取ろうとする。お金が生活を保証すると思うから、お金を稼ぐし、金銭的見返りのない、履歴書にかけそうにない、自分の成長に繋がらなさそうなことは、避けてしまう。 

でも銀さんは違う。自分のやり方、自分の武士道、自分の正義、それらを貫ければ、金も肩書きも自己の成長も、どうでもいい。目の前の人を助けることが最優先である。時には命を犠牲にしてだってそれを貫く。 見返りと自分の武士道を、天秤にかけることはない。

銀さんは、名声や資本主義の論理や政治的ロマンチズムに支配されない。他人に「落ちぶれた」と言われようがどうでもいい。自分のやりたいように、目の前の人を助けたい、という信念を貫くのだ。家賃ギリギリ払えるかどうかしか稼げなくても、よろず屋を続けるのだ。

そこには、自分なりの武士道と、自分なりの正義感を貫くという、強い自信と信念がある。

 私は自分に自信がない。

だから自分の得たステータス、お金を通じてしか、自分に自信を持てない。 だからやりたくなくても、自分のよわっちい信念に反していても、社会でいい顔できるような肩書き、お金、「すごい」と思われること、そんなものから派生する、脆い強さを求める。

でも、銀さんになりたい。他人の目やお金や競争社会から離脱して、自分の信念を貫いて生きたい。目の前の困っている人のために力を尽くして、感謝されて、しがらみに縛り付けられず自由に生きて、それ以上の幸せはないだろう。そもそも家族を養いたいなんていう思いも全くなく、小食な私に、贅沢など必要ないのだ。

彼のように、でかい犬と、大切な仲間と、強さと、自分なりの正義。それをただひたすらに信じて、他者を受け入れ、手を差し伸べる。それだけで生きれるぐらいの強さが、私にも欲しい。

P.S. 銀さんのそんなかっこよさが見れるのは、30分のアニメのうちほんの5分程度、それ以外は下ネタ連発クソニートである。そんなギャップも、また良い。


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