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空想物語・『大雨の夜のこと』第1章

もう何十年も前の事です。
わたしが7才か8才くらいの子供の頃の話です。

雨のザンザン降る夜でした。
ただただ沢山の雨が降ってくるのです。


雨に打たれるその背中はツヤツヤに輝いて

時間は分かりませんが町中が眠っているほどの
真夜中だったと思います。

わたしは、なかなか寝つけずに
降りしきる雨音を布団にもぐって
じっと聞いているばかりでした。

そうしているうちにだんだんと、
どんなに雨が降っているのか見たくなって
窓を少し開け外の様子を見てみました。

家の前は道路で、わたしの居る2階の部屋からは横断歩道が見えます。
道路には車は無く信号は青でした。

と、その時です。
何やら深緑色をした“生き物らしきもの”が
のっそりのっそりとゆっくりゆっくりと横断歩道を渡っているようなのです。

わたしはハッとして目を擦り、
目を凝らしてもう一度よ〜ぉく見てみると
確かに何かが向こう側へと進んで行くのが見えました。

信号が赤に変わった時、それはちょうど渡り切り動きを止めたのです。

わたしは家族に気づかれないように
そぉっと階段をおり玄関で急いで長靴を履き傘を差しておもてへ出ました。

その深緑色をした何かはまだ、
横断歩道を渡ったところでじっとしています。

最初はカメかと思いましたが、
もう一度よくよく見てみるとそれは大きなカエルであることが分かりました。
雨に打たれるカエルの背中はツヤツヤと潤って光っていました。

わたしは思わず『カエルさん!カエルさん!こんな夜中に何をしているの?』
と信号を渡り切ったカエルに声をしぼって小さく呼びかけました。
雨音でカエルには届かないのではないかと思いつつも。

お話しの続きは第2章で。

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