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チバユウスケとthe birthdayの記憶

noteって、読むばっかりで何を書いたらいいのやら…と思ってアカウントだけ持っていたけど、
何となく、チバユウスケが亡くなってから、宙に浮いたままみたいな気持ちをメモしておきたくて。

2000年前後に大学生で、がっつりミッシェル世代のはずなのに、ミッシェル・ガン・エレファントは全く追っていなかった。
その当時、聴いてたのはほとんど洋楽で行くのはライブハウスじゃなくクラブで、唯一聞いてた日本のロックバンドはブランキーだった。
ミッシェルファンの大学の友達がいて、その子は髪がピンクで体のあちこちにピアスを開けた繊細なパンクスでとても可愛かったけど、自分とは人種が違う、と思っていた。そんな距離感。豊洲のフジロックですら、ミッシェル見てないくらいの。
あまり当時の記憶がないけど、ギターや日本語の歌で感情を揺さぶられるよりも、ミニマルな音で低音とリズムだけで朝まで酔って踊っていたい年頃だったんだと思う。

2011年に、震災があった。
被災地ではないけれど、計画停電があり、毎日ニュースもSNSも震災と原発だらけになって。
個人的にも、その前後でなんとなく辛いことやショックなことが続いていたのに、自分の問題からも、不安な世界からも逃げるように仕事に打ち込んだ。仕事はどんどん忙しくなり、それはそれで気が紛れたけど、酒量は増えて、理由なく涙が出る夜が続いた。一人暮らしで、話せる人もいないままで、あぁ、自分にしては珍しく精神的にこれはヤバいかも…と思っていた。

その時期、何かに助けを求めるように急に日本語の、なんか熱い音楽が聴きたくなって。
最後に記憶にある好きなバンドがブランキーだったので、YouTubeにライブ動画がないかな?と思って検索した。

その時に関連動画のサムネイルに出てきたのが、the birthdayの「なぜか今日は」のPVだった。
今思うと、ありがとうYouTubeさん、っていう偶然の出会い。

ちょうどリリース前の新曲で、the birthdayにとってはギターがフジイケンジさんに変わってはじめての曲。
でも最初に聴いたときは、the birthdayというバンドのこともミッシェル以降のチバさんの曲も何も知らなかった。ただこの曲のかっこよさと、バンドの音の良さと、何より歌詞の凄さに衝撃をうけた。こういう複雑な感情や感覚を、歌える人が日本にいるんだ、と思ったし、何で今まで私知らなかったのかな?と。

「なぜか今日は」は、2011年の4月の発売だから、もちろん震災より前に作られた曲なんだけど、その震災後の急に変わってしまった日常の空気の中で、ヒリヒリと響くようにリアルに感じた。繰り返し聴くうちに、少しずつ体があたたまってくるような感触があった。
優れたアーティストはいつもそうだ、と言われるようなことだけど、未来を先につかんで曲にしてしまうようなところが、チバさんにはあると思う。

その衝撃から、がっつりとはまって、the birthdayを全部聴き、ミッシェルもrossoも全部聴き…
I'm just a dogという超名盤が出たので、初めてツアーのライブに、名古屋まで遠征した。
クラブやフェスはいっぱい行ってたけど、ほとんど縁がなかったライブハウスに初めて足を踏み入れて。いい歳で行っていいものなのか?とかちょっと緊張したけど、そこは流石に大人のバンドなわけで、お客さんもいろんな年代がいて主に大人の皆さんで、いい感じにバラバラの客層でよい雰囲気で。
Zepp名古屋で、最初にライブを見た日。バンドの集中力、演奏と歌の凄みに圧倒された。ライブのチバの声と美しさは、動画どころじゃない迫力で、目も耳も全部全開で見ていたいと思った。
「シルエット」という曲で、左右の壁に大きく演奏するメンバーの影が映る演出があって、その揺れる影にのまれながら、あぁ、これは沼に落ちたぞ、、、という感じがしたのを覚えている。

そこから、全部のツアーに行って。何なら近くだけじゃなく、松江とか佐賀とか遠くても面白そうな地方のライブハウスにも追っかけ遠征をかねて旅をしたり。
どれだけライブに行っても、一度も凄くない日がなかった。チバさんは、あの勢いで、20曲とかほぼMCなしでやるのに、最後まであの声で汗だくでトリプルアンコールとかやってくれたり。っていうのが普通で、ちょっと調子悪いのかな…?みたいなことすら記憶にない。
逆に、いつも凄いけど今日のあの瞬間は美し過ぎたな…というような景色を何度か見た。

チバさんの喉の強さとおばけ体力なんなんだろう?と思ったし、バンドのメンバーも全員、ずーっと最高に良い楽器の音を鳴らしていて、ツアー後半に演奏の凄みが増していくのが怖いくらいだった。
visionとか、blood and love circusのツアーのときは、いっぱい踊ってライブハウスの楽しみ方を今更知ってしまったな、とか思っていた。

ダイブとかモッシュとかはさすがに怖いので、だいたい、ギター側の少し後ろでゆるゆる踊れるくらいの場所にいたけど、たまに小さいライブハウスで前の方に行くと、チバさんが見え過ぎて顔は直視できん…みたいになってしまい、、ギターの手元やブーツの足元をずっと見ていた。あの細い体のどこからあの声が?と思っていたけど、近くで見ると全身を、つま先まで震わせて歌っているのが分かって。
ビブラートのたびに震える後頭部やら、足とブーツを見ながら、「なるほど、人って全身で骨とかも揺れて声が出るんだ…」と謎の納得をしたりした。

ライブのたびに、バンドが変化していくのも楽しかった。最初の頃は行く度にフジイさんのギターの音に夢中になったり、今日キュウちゃん凄くない??って日があったり。アルバムごとに、チバさんのモードの違いが結構曲に出ていて、ツアーで感じる色合いみたいなものも違っていた。サンバーストのツアーのときは、今はハルキくんが引っぱるバンドなんだな、、かっこいいな、と思ったり。
毎回、感じることが違って新鮮だった。
毎回、鉄壁のバンドの音に包まれると、生きる力が湧いた。あと、なんの力か謎だけど、ライブ翌日は肌つやまで良くなった。

2020年はコロナでライブに行けなくなって、、だけど早い時期に客数半分で声出しなしのホールツアーもやってくれて、名古屋公会堂に行った。いつものライブとは違ったけど、その独特の緊張感も良かった。久しぶりに生で聴ける喜びと、「春雷」とか大好きな曲が多いセットリスト。美しい照明と演奏の迫力がホールを満たして、やっぱりライブっていいな、と思った。
チバさんちょっと痩せたなぁと思ったけど、歌声はいつもの迫力だった。

その後ソロも含めて、怒涛のリリースがあって、写真展とかもあって、サンバーストのツアーも最高にかっこよくて。
それまでも、これだけ長いキャリアなのに全く長期の休みをとってた時期がないみたいだし、レコード出したらツアーを何十本もやる、っていう繰り返しのペースが落ちないのは凄いと思っていた。コロナ禍ですらも、創作がどんどんできるって、笑っちゃうくらい特別な人だな、と。


最後に行けたのは、2022年11月の、go west young manツアーの埼玉。
新曲も何曲かお披露目があって、どれかがスラムダンクの主題歌らしいよ、ってことでファンが予想しあったりしてたライブ。
コロナ明けで、ようやく人数制限とか声出しとかも緩和されて、最後のダブルアンコールが「ローリン」だった。チバさんは、Tシャツとハンドマイクで…イントロでローリンだ!やった!ぐわっ!!!って飛び跳ねた客を見ながら、くしゃくしゃの笑顔で、「いつぶりだよ??」って言ってから、オーライっ!って叫んでハープを吹いて。
その瞬間の、あまりにも嬉しそうなチバさんの顔を見たら、どれほどライブの場とそこに来た人達を愛してくれているか、ぐわっと感じてしまって涙が出た。

久しぶりに、コロナ前みたいなライブで良かった〜と思ったし、その後スラムダンクで曲を聴いたら素晴らしくて、こりゃ若い子に人気出ちゃったら更にチケット取れないかもだな〜、けど若者に見てほしいから、次のツアーは辺鄙なとこ狙ってチケット取れたら1箇所見に行くくらいでいいかな…とか呑気なことを考えていた。

このツアーの札幌を、コロナにかかって飛ばしてしまったことを、「本当に申し訳なくて泣いた…」みたいにチバさんが言ってるインタビューをみた。
これだけキャリアがあれば風邪で飛ばすとか普通にあると思うのに、、確かにバースデーは、メンバーも含めて1回もそういうの聞いたことないな…と。
あんなに奇跡のロックスターみたいな人なのに、休まず働くプロフェッショナル過ぎて、ファンというか聴く人、ライブに来る人への思いやりが深すぎて、なんてチバがチバなんだ…と思った。

まさか、それから約1年で、チバさんがいなくなってしまうなんて考えもしなかった。
サンバーストの曲は、研ぎ澄まされていて、世界が壊れそうな甘くて儚い予感を感じていたし、CORE4は、よい曲の密度が高い上に、ブラックバードカタルシスで、「燃やし尽くしたよ」なんて言われたらドキッとしたけど。それは世界のことでチバのことじゃない、って思っていて。
チバさんの強さを信じていた。
病気の発表があってすらも。


もうそろそろ半年が経つ。
訃報を聞いた直後は、頭では理解しても感情が追いつかずにいて、献花の会も、何となくチケットを取る気持ちになれなくて。
最近ようやく、曲を聴きながら、the birthdayに、チバさんの音楽に出会えて本当に幸せだったな、と思って泣けるようになってきた。

世界のいろいろを真っ直ぐに深いところまで感じてしまう人にとっては、ビールやタバコが必要だったろうと何となく思うし、一番強い人が一番弱い人であることもあるよな、とか。。そういう、人間の可能性のギリギリの魅力みたいなものを、チバユウスケという人から感じていた。最高にかっこいいロックスターだし、最高にかわいい天使だけど、同じ地べたで酔っ払ったりめそめそしたりする人間として、全身を震わせて歌ってくれていた。今この瞬間に生きているって音楽を、ライブを、何度も経験させてくれて。
私はチバさんに何にも返せないけど、あんなふうに真っ直ぐ、強く、そして優しく生きたいっていう、その気持ちを、持ち続けるしかないのかな。
どうしたって、チバさんがこの世界で歌ってくれてないってのはとても寂しいけど。なんか心細いけど。


うだうだ書いちゃったな…
まだまだ、チバさんの音楽で、歌詞でいいよなぁぁ〜と思うこととか、救われた記憶とか、ライブの素晴らしい思い出もたくさんあるので、またちょっとずつ書いてみたい。

空を見上げるたびに、
鳥がいたり、薄い月があったりするたびに、
ずっとチバのことを想うよ。

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