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高血圧は最も危険な病気です

高血圧、それは最も死に近づく疾患!

サマリー
高血圧により心血管障害(脳梗塞、心筋梗塞など)、認知症、腎障害などの重篤な疾患を合併する確率は3倍以上に跳ね上がります。(特に40―74歳までの働き盛りの方に顕著な傾向です。ある日突然発症してしまうことが)
それにより年間10万人以上の方が亡くなっており、それは喫煙に次いで第二位の死亡原因になります。
血圧をコントロールすることにより、生命予後や健康寿命を延長することができます。

当記事は米国心臓病学会、日本高血圧学会のガイドラインに準拠しています。

日本高血圧学会https://www.jpnsh.jp/general_ind.php
日本心臓病学会http://www.jcc.gr.jp/info-congress/list/data/ACC19.html
米国心臓協会https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000000678
米国心臓病学会https://www.acc.org/#sort=%40fcommonsortdate90022%20descending

自覚症状がないのに治療しないといけないの??

ーそれはある日突然やってくる

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血圧が140mmHg代でも脳梗塞、心筋梗塞のリスクは三倍に上昇!

糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病は、自覚症状がないまま経過し、ある日突然脳梗塞、心筋梗塞などの心血管病変が発症し、四肢麻痺により今までのように仕事ができなくなったり、最悪命を落としてしまいます。

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上図は高血圧学会が発表している、血圧と心血管病変発症(脳梗塞、心筋梗塞など)のリスク相関図ですが、40-64歳の壮年層において、至適血圧(<120、<80)の方と比較し、Ⅰ度高血圧(140-159、90-99)では約3倍、Ⅱ度高血圧(160-179、100-109)で約6倍、Ⅲ度高血圧(180以上)になるとなんと9倍にまで上昇してしまいます。(反対に75歳以上の高血圧患者様では高血圧の心血管イベントのリスクはかなり限局的になります)

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また上図は2007年と少し前のデータですが、高血圧に由来する死亡数は年間約10万人にものぼり、これは疾患別で行くと第一位となります。


血圧はどれくらいが一番健康を享受できるの?

→最も健康を享受できる血圧は<120、<80です

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血圧が正常高値血圧(130-140、85-90)であっても、正常血圧(<120、<80)と比較し心血管病のリスクが約1.5倍~2倍に高まってしまいます。


心血管病変以外には腎障害、認知症のリスクが上昇してしまいます。


沖縄におけるコホー ト研究では,収縮期血圧10mmHg上昇あたり,将来 の末期腎障害リスクが30%前後上昇することが明ら かになっています。
また,久山町研究では,高血圧,特に中年期の高血圧が,高年齢期の血管性認知症発症 リスクを上昇させることが明らかになっています。
中 年期の高血圧は将来の日常生活動作(ADL)低下リス クを上昇させることも報告されています。

→つまり最も健康を享受できる血圧は<120、<80です



以上の疫学的調査を踏まえて、高血圧学会では下図のような治療指針を定めています。

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血圧は120/80mmHg以下を妥当としているのがよくわかります。

血圧、収縮期血圧を10mmHg低下させることにより、心血管病リスクは、脳卒中で約40%、心疾患で約20%低下することがわかっています。


高血圧の内服治療はどのような種類があるの?→個人の状態に合わせた薬剤の選択が重要


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高血圧治療の真の目的は『心血管病変発症の抑制』にあります。

至適血圧に下げる最も効果のある方法は降圧剤になります。

降圧薬には複数の種類があり、上記表のようにまとめられます。

薬剤の大規模臨床試験の成績を基としたエビデンスを基礎とし、患者さんの状況に合わせて、積極的適応、不適応となる病態を吟味し、禁忌や慎重適応を考慮した上で薬剤を最終的に決定します。

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また3-6カ月ごとに定期的に治療を再評価・修正を行います。

内科外来ではよく漫然と薬剤のみが処方され続けているところが多いようですが、診療の惰性は、日本では認知度がまだ低い概念ですが、疾患のマンネリ化に繋がってしまうために必ず避けなければなりません。


降圧目標
降圧目標値としては、下記表の如くであり、2019年の高血圧ガイドラインでは前回設定された2014年度のガイドラインよりも大幅に厳格化されました。

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高血圧Q&A

① Q下の血圧が高いのですが。。。。
A 下の血圧、つまり拡張期血圧が85mmHg(家庭血圧)
以上の場合も高血圧と診断されます。拡張期血圧が高い場合の原因としては末梢血管の抵抗性が上昇しているまたは大血管の弾力性がまだ保たれていることが多いことがわかっています。
その様な病態の方は、運動不足、肥満、喫煙者、大酒家、質の悪い睡眠に特に多くなっています。

それらに当てはまる方は、まずは上述の生活習慣の改善が最善の対処法となります。

特に運動は血管の柔軟性を高めるために特に重要です!

また家庭血圧では、所謂上の血圧(収縮期血圧)が低く、拡張期血圧が高く測定されてしまう傾向があるために、かかりつけの医師に聴診法でも確認してもらいましょう。


② Q 自宅で血圧計はどのタイプがいいですか?またどのように測定すればいいですか?
A手首型は残念ながら不正確ですので、上腕式で測定するようにしましょう


測定方法はオムロン株式会社のサイトをご参照ください
https://www.healthcare.omron.co.jp/zeroevents/bloodpressuremonitor/howtouse.html

③ Q病院で測定すると高いですが、自宅では正常値となります。どちらを信頼したらいいですか?
A病院で血圧を測定すると、どうしても緊張してしまうために血圧は普段よりも高くなってしまいます。そのことを白衣性高血圧といいます。白衣性高血圧は、高血圧患者さんの15-30%でみられ、高齢者でさらにその頻度は増加します。
その頻度が少ないのでれば、特に問題ありません。

しかし診察時で毎回高血圧となるのでれば、長期的に心血管リスクが上昇することや、腎障害にもつながるために、投薬治療の変更を考慮します。


④ Q自宅で同じタイミングで測定するのですが、ばらつきます。どうのように判断すればよいでしょうか?
A体調の変動で血圧はどうしても変動してしまいます。変動がある場合は一週間の平均値を自宅血圧として判断します。


⑤ Q生活習慣を頑張って改善すれば、降圧薬はやめれますか?
A患者様に努力して頂いて、生活習慣を改善しても高血圧の改善は中々奏功しないのが事実で、Ⅰ度の高血圧の患者様で、1薬剤で低用量の場合、20 ~30%の患者様でのみしかお薬を離脱できません。しかし辞めてしまうと確実に再上昇してしまうために基本的には飲み続けなければなりません。

⑥ Q降圧薬は癖になりませんか?
A依存性はないために、癖になることはありません。

⑦ Q降圧薬を飲んでいますが、急に血圧が上がりました。緊急に受診する必要がありますか?
A高血圧の患者さんは往々にして血圧が180mmHgにまで上昇することがあります。
特に頭痛、四肢のしびれ、呂律困難等がなければリラックスして自宅で様子を見て頂ければ問題ありません。しかしそれが連日続くのであれば、主治医と相談ください。



以上血圧についてお話させて頂きました。

最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。

次回は高血圧を改善できる習慣についてお話させて頂きます。

Purevidence株式会社CEO 消化器内科専門医
井上浩一 拝




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