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肉体と意識

「自然を愛するのは腐敗した人間の趣味で」

三島由紀夫の『スタア』の中で書かれている一文である。屈辱感と焦燥感、又其れらが一周回って僕に人間的なものの美点をも教えてくれる。

この短編小説は、主人公の俳優《スター》の俳優としての生き方(仮面を被った)と、現実に生きる主人公の生活形態との二重性について、「虚偽」をテーマの元に描かれている。
僕には、読んだ小説の中の印象に残った一文をノートに記す癖があり、それらの中でも特に好きなものが此れにあたる。

一読すると、現代社会に生きる我々が日常的な生活における疲労とやり切れない思いに駆られた時の自然に対するアンチエージング的期待や、インスタグラムで映えを狙う自己承認欲求の為の自然等が、彼のこの一文によって徹底的に否定されている感覚を覚えるのではないだろうか。私もその感覚はある。

然しながら、此処には三島の我々に対する侮辱はまるで無いように思われる。あるのは三島の、「精神と肉体」「肉体による存在意義」的な思想が隠されているのである。『仮面の告白』や『太陽と鉄』を読めば良い。

精神は肉体から飛び出すことはできない(※ハイデッガー:外に出ている...)。然るに、「肉体的勇気というものの中に、意識と肉体との深い相剋が隠されている」(太陽と鉄)と三島は解く。文武両道的で、それで持って認識と意識の諧和が存在可能となり、私が私であることが出来るのだ。

「自然を愛するのは腐敗した人間の趣味」、此処には三島の人間存在の武の必要性が説かれている。



書き初めは三島の思想について十二分にここで喋り散らかしたいと思っていたが、なんだか面倒になったので僕の好きな小説の一文を挙げていき、自己満足に溺れようと思う。

「若さが幸福を求めるなどというものは衰退である」 『絹と明察』三島由紀夫
(若者は苦悩や失敗の日々が当然でただ我武者羅にに生きろ的な?)

「美がたしかに存在しているならば、私という存在は美から疎外されているのだ」 『金閣寺』 三島由紀夫
(わかるわかる、美しい賀茂川を見に赴いても人だらけ糞まみれで美の理想を裏切られるよねー)

「幸福なんて男の持つべき考えじゃない」 『剣』 三島由紀夫
(うるせぇわぼけぇ!)

「諧和と平穏と統一感に充ちていた世界」 『美しい星』 三島由紀夫
(肉体と汗と愛に充ちていた世界...卑猥ぃ〜)

「頭がいいということは、つまり、母親を気持ちよく泣かすことができるということなのである」 『潮騒』 三島由紀夫
(絶句。)

「生きる意思の欠如と楽天主義との、世にも怠惰な結びつきが人間というものだ」 『美しい星』 三島由紀夫
(その矛盾が人間の汚点的美点やと思うで)

「はっきりものを云う頭のわるくない女だと思った」 『友情』 武者小路実篤
(ほんならわしはアホなんか!はっきりもの言えん男はなんや!!)

「大人とは、裏切られた青年の姿である」 『津軽』 太宰治
(もっと言うてくれ太宰!)

「弱虫は、幸福さえも恐れるのです...云々」 『人間失格』 太宰治
(太宰お前は言うても幸福もんやないか!)

「踏むことのなかった犬のクソみたいな人生」 『人間』 又吉直樹
(踏める筈の馬糞を躱わしたクソみたいな貞淑!)



お腹いっぱいですか?「人間大好き」を聴きながら寝て下さい。お休みなさい


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