〔雑記帳〕虫さんごめんなさい
子どもとは、好奇心の塊だ。その好奇心ゆえに、私は虫たちにひどいことをしたという自覚がある。
最も悪いことをしたと思うのは、蓑虫だ。木の枝にぶら下がって揺れている、あの蓑虫。ある時、ちょこんと黒い頭が見えている蓑虫を見付けた。おお!これが中にいる虫なんだ!と、感動して終われば良かった。が、そこは好奇心の塊。虫の全体像が見たくなってしまった。
で、蓑の入り口(?)を少し広げて、蓑の後ろからそっと押し出してみた。いかにもイヤイヤという感じで、黒い小さい虫が蓑から少し出た。なるほど、こうやればいいのか!で、またそっと押す。また少し出る。これを繰り返し、やっと全体像がわかった。やったー!初めまして、蓑虫の中の虫さん!わあ、こんなに黒くて小さいんだ~。そうか~。では、どうぞお戻りくださいな。…あれ?逆向きに入れない?
今おもえば、あんなジャストサイズの蓑から出て、戻れるはずがなかった。が、幼い私は、自分がセーターをもごもごと頑張れば着られるように、蓑虫も頑張れば戻れると思っていた。ほら、何で戻らない?出られたんだから、戻れるでしょ?と、逆向きに戻そうとしたが、どうにも戻れない。
ああ無理なのね、と悟り、蓑虫を見付けた木の根元に、蓑と虫をそっと戻した。いや、正確に言えば捨てたのか。「また作るよね、蓑」なんて勝手なことを思いながら。本当に勝手で残酷だった私。
もう、蓑虫を見ても中身を確認しようとは思わない。心の中でそっと謝りながら、通り過ぎている。
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